日常的に車を運転していれば、歩行者自転車による「危険な飛び出し」を目にすることもあるだろう。「危ないなぁ」と思いながらも、万が一衝突でもしようものなら、こっちが悪者になってしまう――こうした意識は、多くのドライバーに共通するものではないか。

 もちろん、車を運転する際には、それが「凶器」となりうる意識をつねに持っておく必要がある。一方で、脆弱な立場に置かれる歩行者自転車も、自らの身を守るうえでは交通ルールを遵守する意識が求められる。とりわけ自転車は、道路交通法において「軽車両」として扱われるため、一時停止や左側通行、夜間のライト点灯といったルールに従わなくてはならない。

 今年4月、信号機のない交差点で、優先道路側を走っていた車が、一時停止側から通行してきた自転車に衝突し、自転車に乗っていた小学生が死亡する事故が起きた。形態を同じくする死亡事故は5月にも起きており、異なる交通主体間の意識のギャップが危険な状況を引き起こすケースは後を絶たない。

 意識のギャップを埋めるうえでは、「自身の動きが相手からどう見えるのか」を知ることが重要だ。今回は自動車自転車の運転を業とする人々にインタビューを行い、区分の異なる交通主体に対して「危険に思う瞬間」を挙げてもらった。加えて、損害保険会社のスタッフから、事故が起きた場合の過失割合についても話を聞いた。

(※記事内に示される過失割合は一例であり、実際に算定される割合は事故状況により変動します)

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車と自転車の事故、半数が「交差点での出会い頭」

 区分の異なる交通主体間の事故において、大きな割合を占めるのが「自転車自動車」の事故である。

 警察庁の統計によれば、2021年中に発生した交通事故のうち、自転車が関与したものは約23%であり、うち約79%が自動車相手の事故である。

 事故の形態としては、自転車事故の約半数が「出会い頭」での衝突だ。主に交差点で、異なる方向から進行してきた車両同士が接触する形である。実際に、車・自転車を問わず、信号機のない交差点などでヒヤッとした経験のある人は多いだろう。

 交差点における自転車事故のリスクは、プロのドライバーにとっても悩みの種だ。タクシードライバー歴10年のTさんはこう語る。

「学校の近くとか、住宅街はやっぱり気を遣いますね。もちろん信号がない交差点は怖いですよ。自転車が一時停止側から減速せずに飛び出してくることもありますから、カーブミラーなんかも確認しつつ、止まれる準備をしとかなきゃいけないですよね。

 あと、飛び出すだけじゃなくて、怖い曲がり方をする自転車もいますよね。たとえば自転車で右に曲がるとき、たぶん免許を持っている人なら、一度道路の左側に寄って大きく曲がると思うんですよ。でも、中高生なんかは最短距離で曲がってくることもあるじゃないですか。曲がった先の道から車が来ていたら避けられないですよね」

 小さい子どもや中高生など、「優先道路がどちらか」を意識せずに交差点を通行しているケースは日常的に目にする。自動車教習所においては「かもしれない運転」の重要性を教わるが、ドライバーはつねに、交通ルールを把握していない幼児や児童の通行を念頭に置く必要がある。

交差点で一時停止無視の自転車と衝突、過失割合は

 上述のケースのように、信号機のない交差点において、一時停止側から飛び出してきた自転車と優先道路を通行していた車が衝突した場合、過失割合は基本的に車の方が大きくなる。損害保険会社のスタッフは以下のように語る。

信号機のない交差点で、自転車側に一時停止の標識があるにもかかわらず飛び出してしまい、車と衝突した場合、基本的には自転車自動車の過失割合は40:60になります。

 さらに、自転車側が児童や高齢者などの場合、過失割合が減算されるケースもあります。以前担当したケースでは、自転車側が70歳を超える男性で、過失割合が35:65に修正されました。

 事故が起きた十字路は、優先道路側からは家の塀で左側の道路が見通せないような形状でした。ドライバーの死角から、一時停止を怠った自転車が車の左前方側面に衝突するような形でしたね。

 ドライバーの方は法定速度を守っていたこともあり、『避けられるワケないだろ』と主張していましたが、交差点にはカーブミラーも設置されていました。対処の余地があったことから、基本の割合をベースに算定されたのだと考えられます」

 実際のところ、自転車が一時停止をせず高い速度で通過してきた場合など、避けることが難しい場面も考えられる。とはいえドライバー側としては、小さな接触でも自分の車が重大な被害を生じさせる可能性を念頭に置かなければならない。信号機のない交差点においてはとくに、「見通せない=陰に誰かがいる」という前提意識を持っておく必要があるのだろう。

自転車の「無灯火運転」は責任が大きい

 免許がいらず、幼い子どもでも乗れる自転車は、「道交法上は軽車両として扱われる」という意識が浸透していない傾向にある。結果として、「無灯火」や「逆走」といった危険な行為を自然にしてしまっている者も多い。

 無灯火自転車については、「ライトがなくても見えるし……」といった言い分もしばしば耳にする。「他人から認識してもらうためにライトを点ける」という意識が根付いていないことも多いのだ。

 無灯火自転車自動車と事故を起こした場合の過失割合について、損保会社のスタッフは次のように語る。

「夜間では自動車ヘッドライトが視認しやすいことから、基本的に自動車側の過失が5%減算されます。さらに自転車側が無灯火の場合、その過失割合は10%上乗せされます。

 私が最近担当したケースだと、コンビニ駐車場から出ようとした自動車が、右側から来た無灯火自転車と接触する事故がありました。基本的に、施設から出ようとする車と、直進自転車との接触事故は90:10で車側の過失が大きくなります。

 ここでは夜間かつ自転車側が無灯火であったことから、過失修正がなされて75:25となりました。ただそれでも、自動車側はほとんど停止に近い状態だったとのことで、ドライバーの方は納得していない様子でした」

 施設の出入り口付近には見通しの悪い場所も多く、車両の形状や看板などの配置によっては「鼻先を出さないと状況がわからない」というシーンもある。そのなかで、無灯火自転車に気づくことが遅れることも考えられるだろう。自動車自転車双方が、自身の存在を相手の目につくようにする意識が求められる。

軽すぎる?「逆走自転車」の過失割合

 自転車乗りによる「自殺行為」としてしばしば槍玉にあがるのが、車道の右側を通行する「逆走」である。タクシードライバーを20年以上務めるM氏からは、次のようなケースも聞かれた。

「この前、ラウンドアバウト型の交差点に差し掛かったところで、反対側から自転車がかなりのスピードで逆走してきて……肝が冷えましたね。小学校高学年くらいの子が3人くらいで競走していたみたいなんですが、その一人がふざけて違うコースを走ろうとした感じに見えました。逆走はほんとに、『いつか事故るぞ……』とヒヤヒヤしますよ」

 ドライバーにとって「逆走自転車」の存在は脅威だが、実際に事故が起きた場合の過失割合はどうなるのか。先の損保会社スタッフに聞いた。

「最近目にした事例では、比較的車線の狭い二車線道路の左側を直進していた車が、逆走してきた自転車ミラーを接触してしまった事故がありました。割合としては、80:20で車側の過失が多い結果となりました。この割合は今回のケースに限らず、逆走自転車と直進車との事故において基本的となる過失割合です。

 ドライバーの方は自転車側がフラついていたと主張していましたが、ドライブレコーダーの映像ではそのような挙動は確認できなかったようです。仮に自転車側に著しい操作ミスなどが認められたとしても、過失割合は10%修正される程度かと思われます。

 たとえば仮に、自転車側が逆走しながらスマートフォンを操作していた、という状況で同様の事故が起きても、70:30程度の割合になるのではないでしょうか」

ながらスマホ」かつ「逆走」という危険極まる乗り方でも、自転車側の過失が3割というのは納得しがたいかもしれない。明らかにおかしな挙動の自転車を目にしたら、車側は減速して様子を見るといった措置を取らざるをえないだろう。

 なお当然、自転車であっても逆走や一時停止無視、ながらスマホといった行為は道交法違反にあたり、罰則の対象となる。これらはいずれも「5万円以下の罰金」が科されうる違反である。

 自転車による道交法違反に対する警察の措置は大きく2つに分けられ、軽微な違反に対しては「自転車イエローカード」などと呼ばれる「指導警告票」が発行される。これは罰則を伴わないが、危険性の大きい違反に対しては、罰則を伴う「検挙」の措置が取られることもある。

 近年の傾向として、自転車の道交法違反に対しても、「検挙」の形で取り締まるケースが増えている。罰則のない指導警告票の発行件数は、2011年には約220万件だったが、2021年に約131万件まで減少。対して罰則のある「検挙」の件数は、2011年の約4000件から2021年に約2万2000件まで増加した。

路駐の車を避けようとして……

 反対に、自転車側から見た「危険な車」にはどのようなものがあるだろうか。自転車での配送業務を請け負うY氏からは次のような意見が聞かれた。

「路上駐車が怖いですね。大きく車道に膨らまなければいけないですし、停車している車が合図なしに動き出すこともあります。一度、路駐の車のドアが急に開いたのを避けて転んだことがあって、それからは通るたび気をつけています」

 路駐車両を避けた自転車と後続車との事故について、損保会社スタッフは以下のように話す。

自転車が前方の路上駐車を避けようとして進路を変え、それにより後続する自動車と接触してしまった場合、基本の過失割合は90:10です。

『向こうが後ろを見ずに方向を変えてきた』と主張するドライバーの方もいますが、自動車側は状況を十分に把握できる位置にありますので、より大きな注意義務を負うことになります」

 しかし過失割合は小さいといっても、事故で大きな被害を受けるのは大抵自転車側である。進路変更の際には必ず後方を確認し、後続車と意思疎通を図ることが望ましい。

歩行者自転車も「加害者」に

 車やバイク相手の事故では「被害者」となりやすい自転車だが、歩行者や同じ自転車相手の事故では「加害者」となる可能性も大いに考えられる。

「一般社団法人 日本損害保険協会」の発行する自転車向けの安全啓発パンフレットには、自転車による加害事故の現状が紹介されている。掲載事例のうちには、小学生高校生の乗る自転車歩行者に重傷を負わせ、1億円近い賠償金支払いが命じられたケースもある。

 さらに「交通弱者」とされる歩行者も、必ずしも「被害者」の立場に置かれるわけではない。

 2019年には赤信号を無視した歩行者バイクが衝突し、バイク側の運転者が死亡した事故があった。歩行者は重過失致死の容疑で書類送検され、後に不起訴となっている。

 損保会社スタッフは、「歩行者自動車の事故でも、車側が青信号で、歩行者側が赤信号を無視した場合には70:30で歩行者側の過失が大きくなります」と話す。さらに、夜間や幹線道路など、自動車側の対処が困難な条件が重なれば、歩行者側の過失が加算されることも考えられるという。

 どの移動手段を利用していようと、誰もが事故の加害者になりうる。さらに今後、免許なしで運転可能な時速20km以下の電動キックボードが普及すれば、いっそう多様な交通主体が公道で交錯することになる。教育機関や家庭における交通教育の徹底とともに、個々の交通主体が「他の交通主体からどう映っているか」を意識していくことが肝要だ。

(鹿間 羊市)

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