インド北部ウッタルプラディシュ州の寺院から貴重な神像を盗んだ泥棒たちが、どういうわけかそれらを返してきた。
インドの警察の発表によると、チトラクート地区にある寺院からヒンドゥー教の神「ヴィシュヌ神」の化身である「バラジ神」の像16体が盗まれた。
しかし数日後、になると、ウッタル・プラデーシュ州のチトラクート地区にある寺院の住職の家の近くに、14体の像が置かれていたそうだ。
返還された盗品には手紙が添えられており、悪夢に悩まされ食事すらままならなくなったために返却すると書いてあった。
ヴィシュヌはヒンドゥー教の神で、ブラフマー、シヴァとともにトリムルティの1柱を成す重要な神格である。今回盗まれたのはその化身とされている「バラジ神」で、インドでは、とてもパワーがある神として知られている。
盗まれた16体のバラジ神像は、ほとんどが銅と銀でできていて、中にはヒンドゥー教寺院で金属製の偶像を鋳造するためによく使用される「金、鉄、銀、鉛、銅、亜鉛、錫、アンチモン、水銀」をミックスしたアシュタダトゥという合金からできているものもあった。
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悪夢に襲われた泥棒たちが神像を返却
だが、警察が動くまでもなく、盗品は告白と謝罪と共に戻ってきた。泥棒いわく、この像を持っていると不幸にみまわれることがわかったという。
これらを盗み出してからというもの、悪夢に苦しめられ、ろくに眠れないし、食べることもできず、平穏に暮らすことができなくなった
返還された盗品に添えられた手紙にはこうあったという。
我々は、怖ろしい悪夢をみるのに疲れ果てた。だから、これらの貴重品を返却する
とはいえ、戻って来たのは、16体のうち14体。2体分つまり8分の1の悪夢なら耐えられると判断したのかもしれない。
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呪いを信じて盗品を返す泥棒は意外と多い
呪われたと信じて、盗品を返却する泥棒は意外と多い。
西暦79年、イタリアでベスヴィオス火山が大噴火を起こし、古代ローマの町ポンペイやヘルクラネウムなど近隣の町が壊滅した。
おびただしい数の人間の遺体が火山灰に埋もれ、そのままの姿で保存されたポンペイからも、その後、たくさんの遺物が盗難にあっている。
だが、泥棒たちの多くは、盗んだものによって呪われたと信じ、相次いで盗品を返却している。ポンペイでは、こうしたアイテムを泥棒たちの後悔の念と共に常設展示している。
2020年にも、ある泥棒がポンペイの私邸跡から盗んだ小像を返却してきた。「その一族の邪眼を解き放ってしまった」と真剣に訴えたという。小像はレプリカで、泥棒はそれを知らなかっただけなのだが。
バラジ神の像を盗んだ泥棒たちが味わった恐怖と似たポンペイの呪いは、ナンセンスといえばナンセンスだ。
カナダ出身の女性、ニコールも、呪われたアイテムの返却をしたひとりだ。
2005年、彼女は21歳のとき、誰も持っていないようなユニークな記念品が欲しくて、ポンペイからモザイクのタイルや大理石のかけら、アンフォラの一部などをこっそり失敬した。
ニコールはこれらをカナダへ持ち帰ったが、それ以来、呪いが始まったという。
私は長い時間をかけて結晶化した歴史の一部を持ち帰りました。それには負のエネルギーがたくさん宿っていたのです。
あれだけたくさんの人たちが怖ろしい死に方をした、そんな破壊された土地に関わるものを、かけらとはいえ、持ち帰ってしまった
ニコールは告白の手紙に書いている。
それ以来、私と家族を悪運が襲いました。私は現在36歳ですが、2度も乳ガンを患い、結局、全摘する結果になりました。
私たち家族は経済的な問題も抱えていました。私たちは善良な人間なので、家族や子どもたちに呪いがかかるのはとても耐えられません
ニコールは手紙と共に、友人にあげてしまった一部を除くすべての盗品を返却した。いつかイタリアに行き、直接謝罪するつもりだという。
References:Thieves Return Stolen Treasure To Temple After Being Haunted By Nightmares | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
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