自分のことばかり我を通して相手のことを考えない利己主義。人は大なり小なりそのような傾向はあるものですが、当然そのような人格は歓迎されません。今回は結婚相手が自分の気持ちばかりを優先させて、その行動に愛想をつかした妻のエピソードを聞きしました。


◆多くの人に祝福され結婚



写真はイメージです。(以下同じ)



 妻の彩子さん(28歳・仮名)は大手広告代理店に勤め、夫の康太さん(仮名・32歳)はとある化学物質製造メーカーの研究所に勤務。彩子さんが康太さんの研究機関に仕事の打ち合わせで訪れた時に名刺交換をしたのが始まりだったそう。


「あの頃私は化学メーカーの広告戦略チームに所属していて、ちょうど夫の会社の広報から一度見に来てほしいという連絡を受けて、人里離れた研究所に足を運んだんです。そこで現場の様子を案内されて、そこにいたのが夫でした。第一印象は背が高くて、少し大人しそうでしたが、清潔感はありましたね」


 その後何度か研究所を訪れるようになった彩子さんは、研究所の新人研修会の打ち上げパーティーに招待され、それがきっかけで二人は急接近し付き合い出したそう。それから周りには内緒で付き合いを始め、翌年にはプロポーズを受け都内のホテルで盛大な披露宴を挙げて結ばれたそうです。


「あの頃は、友達とか親戚にもいい縁談だと言われてましたね。あの頃までは」


◆仕事が忙しくてすれ違い



 新婚旅行から帰って二人は普段の生活に戻り、二人共働きの日常が始まりました。康太さんは概ね決まった時間に出社して、帰宅もいつも大体同じ。それに対して、彩子さんは仕事柄付き合いなどで帰宅時間もまちまちだったとのこと。


「主人はほとんど時間通りの毎日を過ごしていましたね。ま、そういう職業ですから。でも、私はお客さんとの付き合いなので接待も多く、夜中にタクシーで帰る事もしばしばでした。私が帰宅した時には主人は寝ている事もありました」


 そんなある日、夫の康太さんから思いがけない言葉を耳にした彩子さん。


◆夫から思いがけない言葉が
「結構すれ違い夫婦っぽくなっていて、ある日の土曜日の昼ごろ、夫はリビングでテレビを見ている私に仕事を辞めて専業主婦になって欲しいと言い出したんです。一瞬耳を疑いましたが、夫の顔は真剣だったのを覚えています」



 夫の真意は、小さい時に母子家庭で育ち寂しい思いをしたから、家に帰った時には誰かにいて欲しいというものだったそう。


「そんな急に会社は辞められませんし、ましてや理由が単純すぎるんですよ。これから子育てとかも始まれば教育費用や、もっと大きな家に移り住んだりと、お金は必要だと思うんです。だから、目標の金額を決めて、それが貯まるまでは仕事を辞めないと言ったんです」


 康太さんは彩子さんの筋の通った考えに何も言い返せず、その話はしばらく夫婦の間には出なくなりました。


◆再び夫からの提案、バイトをすることに



 それからしばらくして、康太さんは自分が勤める研究所の関連施設で残業という名目でアルバイトをすると言い出したそう。一生懸命稼ぐから、彩子さんに退職してほしいと懇願してきたのでした。


「夫の気持ちも分からないではないのですが、そのアルバイトがどんなものなのか、いつまで続けるのか、いろいろ不確定要素もあったので、とりあえず半年間様子を見てから結論を出すって言ったんです」


 残業の場所は、研究所から徒歩で数分の場所にある研究者養成センターで、毎日2~3時間インターンの若者などにいろんな仕事のノウハウをレクチャーするとのことです。それ以降、康太さんの帰りも夜遅くになることがしばしば増えることになったそうです。


◆急に身だしなみを気にしだした夫



 康太さんがアルバイトをし始めてから、帰宅時間が遅くなったことに加えて、今までは気にしなかった身だしなみを気にするようになったそうです。


「全くって言っていいほど、夫は服装や身だしなみに興味がなかったのですが、最近では自分で着ていく洋服を買いに行ったり、髪の毛セットしたり、とにかく変わったんです」


もしかして浮気してる?問い詰めると…
 そんな中、ある日康太さんは職場の送別会があるといって、帰りが遅い時がありました。未明にタクシーで帰宅したと思ったら、リビングのテーブルにポケットの中身を全部出して、ソファーで寝てしまったそう。



浮気の証拠写真(彩子さん提供)



「私一人では寝室に運べないので、その夜はリビングで寝てもらおうと思って寝室から毛布を一枚とってきて夫に被せようとしたんです。そしたら、その時テーブルの上のスマホからメッセージの着信音が鳴り、ふと目をやると『今日は楽しかった。今度は泊まりが…』と書いてあったんです。それを見た時、一瞬冷や汗をかいたのを覚えています」


 彩子さんはそのロック画面をすかさずスマホで撮影し、翌日問い詰めたのです。最初はしらを切っていた康太さんでしたが、土下座をして弁解し始めたのでした。


◆言い訳する夫に完全に冷める



「そのロック画面を見た時から、だいたいの予測はついていたんですが、あらためて夫は私に力説したんです。専業主婦になってもらいたいから収入を上げようと思った、しかし、アルバイト先でのレクチャーで知り合った年下の女性と飲む機会があり、自分の胸の内を吐露したら同情してくれて、いつしか深い仲になってしまった、とか言うんです」


 彩子さんは、もうどうでもよくなってしまったそう。結局は自分の欲求を満たすために相手の負担など省みずに行動する、ただの利己主義野郎だということが、改めて分かったと語ります。


◆離婚してスッキリ
「まだ子供も産んでなくてよかったです。これからは自分の納得する人生を歩もうと思います」


 そう言って、康太さんとは半年の別居生活を経て、正式に離婚したそうです。側からは順風満帆な家庭に見えても、当事者の間にはいろんな問題があるんですね。


シリーズ「不倫する人の言い訳」―


<文/大杉沙樹>



浮気の証拠写真(彩子さん提供)