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2020年に息子を亡くして臓器を提供した母親が今月中旬、息子の心臓を受容した14歳の少年の鼓動を初めて聴いた。母親は「臓器移植は命を繋ぐもの。ドナーになることを躊躇せず、もっと多くの人にサポートしてもらえれば」と対面時の動画を公開、『Good Morning America』などのインタビューで胸のうちを明かした。

ルイジアナ州マディソンビルに住むマリア・クラークさん(Maria Clark)は2020年、当時25歳だった息子ニコラス・ピーターズさん(Nicholas Peters)を交通事故で亡くし、臓器提供を決意した。人を助けることに奔走し、ドナーになることを希望していた息子の意思を尊重してのことで、ニコラスさんの臓器や組織は国内の様々な場所へと運ばれて移植された。「命を繋ぐ臓器は魔法を与えてくれるもの。埋葬せずに共有すべきだ」というマリアさんの信念もあった。

そんなニコラスさんの心臓の受容者になったのは、マディソンビルから約210キロ離れたルイジアナ州ニューアイビーリアに住むジーン・ポール・マルソークス君(Jean Paul Marceaux、14)で、2度目の心臓移植の待機中だった2020年9月に「ドナーが見つかった」との連絡を受けた。

ジーン・ポール君は2歳の時、ウイルス感染が原因で心筋の機能が失われる重い心筋症を患い、人工呼吸器に6か月間繋がれた後で心臓移植手術を受けていた。しかし移植から10年が過ぎて心臓機能が低下し、2020年6月に入院を強いられた。

ジーン・ポール君の母キャンディスアームストロングさん(Candace Armstrong)は「最初の心臓移植手術を受けた後、高い確率で2度目の移植が必要であることは認識していました。そして2020年の夏を病院で過ごした後、心臓が見つかったのです」と語ると、複雑な心境をこのように明かした。

「電話を受けた時は様々な感情が一気に溢れ出し、心の葛藤に苦しみました。なぜなら息子の命を持続させるために心臓を望む一方で、心臓を受容することの重さを考えずにはいられなかったからです。ドナーが現れたということは、望まない死に直面し苦しんでいる母親がいるということですからね。」

こうしてジーン・ポール君が2度目の手術を受けてからしばらく経ったある日のこと、キャンディスさんはマリアさんからニコラスさんの名前や写真が入った手紙を受け取った。臓器移植のほとんどのケースでは、手術から1年経てばドナーから連絡することが可能だが、マリアさんは1年待つことができずに「息子が新しい命を与えた人たちのことを知りたい。そして亡き息子についても知ってもらいたい」とペンを執ったという。

キャンディスさんによると、ジーン・ポール君の最初のドナーからは1度も連絡がなかったそうで、一家は10年経った今でもドナーの名前や顔を知らないのだという。初めての家族からの手紙に驚きながらも、キャンディスさんはすぐに連絡を取り、2家族はSNSや電話で繋がった。そして手術から1年8か月経った今年5月14日、2家族はニューオーリンズで対面を果たした。

当時の様子はカメラが捉えており、キャンディスさんは聴診器を準備、ジーン・ポール君と初めてハグを交わしたマリアさんは、ニコラスさんの心臓の鼓動を聴いたのだった。

ジーン・ポールのハグはとても力強く、ニック(ニコラスさんのニックネーム)と一緒でした。心臓の鼓動も強く、たくましく、まるでドラムの音のように響いてきたのです。ジーン・ポールはまるで生きていた頃のニックそのままでした」と明かすマリアさん。続けて「ニックが自分の臓器や組織が新しい家族に命を与えていることを知ったらさぞ喜ぶことでしょう。ニックの心臓がジーン・ポールの中で動き続け、命やエネルギー、そして情熱を与えていることをとても嬉しく思います」と感慨深そうに語った。

一方のキャンディスさんは、ジーン・ポール君が中学校に通いプロムに参加するほど元気になったこと、マリアさん一家とは家族のような付き合いをしていることを明かし、「私たちにとってニックはもうドナーではありません。ニックはニック。私たちの家族の一員なのです」と述べると、移植された心臓がジーン・ポール君の命を繋いだことに感謝し、こう述べた。

「人が亡くなった時に臓器移植について話したい人はいないでしょうね…。ただこれはとても大切なことなのです。なぜならもしニックがいなかったら、息子は生きてはいなかったのですから。」

画像は『ABC News 2022年5月21日付「Mom hears late son’s heart beat in 14-year-old boy for 1st time」(Louisiana Organ Procurement Agency (LOPA))(Courtesy Candace Armstrong)(Maria Clark)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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