内部告発を理由に懲戒解雇されたのは不当だとして、「神社本庁」元総合研究部長の稲貴夫(いなたかお)氏(62)が処分無効を訴えていた裁判。最高裁4月21日神社本庁側の上告を退けた。

「稲氏は16年12月神社本庁が不動産を不当に安く売却していたことは背任行為にあたるなどとする文書を配布。これに対し、神社本庁は17年8月、稲氏を懲戒解雇した。そこから4年半にわたり裁判が続きましたが、先日、判決が確定し、晴れて稲氏の“職場復帰”が決まったというわけです」(神社本庁関係者)

 判決確定から4日後の4月25日朝9時前、代々木にある神社本庁事務所に出勤したのだが――。

「業務命令として今日はお引取り下さい」

 待ち構えていた神社本庁の代理人弁護士から、立ち入りを拒まれてしまう。

「(復職の)挨拶だけでもさせて欲しい。難しければ(神社本庁の神殿に)お参りだけでもさせて欲しい」

 そうお願いする稲氏。だが、代理人弁護士は、

「業務命令として今日はお引取り下さい。ご苦労様でした!」

 と一歩も引かない。同行していた稲氏の友人が土下座をして頭を下げたものの、神社本庁側の対応は変わらなかった。結局、登庁どころか敷地内に立ち入ることも出来なかったという。その約4時間後、新たに〈自宅待機を命じます〉とのFAXが届いたのだった。

 稲氏本人が振り返る。

「今後は神社界の正常化に貢献したいと思っていたのですが……挨拶もお参りも認められないのか、と唖然としました」

神社本庁の対応は“パワハラ”といえるか

 稲氏の代理人が続ける。

「判決の翌22日、神社本庁代理人から〈当面のあいだ、出勤を免除いたします〉とFAXがありました。ただ復職自体は認められたわけですから、私から代理人に〈稲氏本人に登庁するよう伝えております〉とFAXした上で、稲氏は登庁した。にもかかわらず、挨拶や参拝すら拒むのは、最高裁の判断を蔑ろにしているようなものです」

 神社本庁側はどう答えるのか。代理人弁護士が主に以下のように回答した。

「〈当面のあいだ、出勤を免除〉とFAXしたにもかかわらず、出勤してきました。そのため、出勤に及ばず、と施設管理権を代理人として行使したものです」

 両者の主張について、労働裁判に詳しい佐々木弁護士が指摘する。

「原告に対し、挨拶どころか、建物の敷地内にすら入れないという対応は行き過ぎです。自宅待機が長期化すれば、厚労省が定義した『人間関係からの切り離し』というパワハラ行為に抵触する恐れが出て来る。最高裁の判断を軽んじているとみられても仕方がありません」

 最高裁をも恐れぬ神社本庁。その所業は復帰を願う稲氏にとって、仏はもちろん、神もないものだった。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年5月26日号)

神社本庁からの〈自宅待機命令〉