公認会計士でYouTuberのくろい氏が会計についてわかりやすく解説し、実践的な会計の知識を伝授するニコニコチャンネル公認会計士くろい 楽しく学ぶ最強の会計講座」。第7回目は楽天グループ株式会社2021年12月通期について、前半では「楽天カードの変更点」や「決算サマリー」を、後半では「楽天カード成長率」「モバイル事業詳細」「楽天カード変更の狙い」について講義した。

【動画】公認会計士くろいが“楽天グループ”のカードやモバイルの仕組みに迫り、事業や決算を解明

「楽天はいろいろな事業をしているから難しい、この資料は1日かけて作りました」とくろい氏。まずは「楽天は楽天市場や楽天トラベルなどのインターネットサービス、楽天銀行楽天カード、楽天証券などのフィンテック事業、楽天モバイルのモバイル事業と3つの事業で成り立っています」と事業内容を説明。その上ではじめは昨今話題に上がっている楽天カードの変更について解説。

「2021年4月からゴールドカードのサービスが変更になりました。これまでは楽天市場で使用すると金額の5%のポイントが付与されましたが、4月1日からは3%に下がりました。また今までは楽天市場で4万4000円買えば年会費2200円の元は取れましたが、改定後は年間で7万3333円買わないと元が取れなくなったのです。しかもこれまでは税込価格にポイントがつきましたが、これが税抜価格になったので0.1%の改悪です。公共料金についても、これまでは100円につき1ポイントついていたのが、500円につき1ポイントになりました。楽天カードをメインにして支払うとあまりメリットがないかもしれません」と率直な感想を述べた。

次に、楽天グループの決算サマリーについて紐解いた。「2021年度の売上は1兆6817億円で、前期に比べて15.5%伸びていますが、営業利益は-1947億円で最終純利益は-1358億円。過去最大の赤字という説もあります。営業利益の内訳を見るとインターネットサービスは1075億円で黒字、フィンテック事業は891億円の黒字。対してモバイル事業は4211億円の赤字で、これが足を引っ張っている原因です」と解説。「楽天モバイルのサービス開始は2020年4月。契約者は2020年12月からの1年間で100万人増えています。1年間無料の駆け込み需要が増えたのですね。しかし他のキャリアに比べたらまだまだ少ないです」とくろい氏は説明。また楽天グループの3カ月ごとの財務推移のグラフを提示し、モバイルサービス開始前とサービス開始後の営業利益を比較。

「サービス開始前の準備期間は赤字になっているので、相当設備投資をしたということがわかります」とくろい氏。「2019年の有価証券報告書を見ると、楽天モバイルはネットワーク設備投資に8000億円投資するということが書かれています。またMD&Aで資金調達について見てみると、2026年までに最大8000億円程度の設備投資を行い、最大8400億円までは社債や増資で増加する見通しとあります。しかしグループ全体の社債は3兆円あり、その中の8000億円だから大したことないですね。社債が3兆円もあってこの会社大丈夫?といいたくなりますが、総資産が16兆円、そのうち現預金が4兆円もありますから普通に返済できます」と説明。

「設備投資で基地局も順調に増え、また無料キャンペーンが終了することで収益も上がり、2022年3月をピークに赤字は減少する見通しと予想されています。フィンテック事業は頭打ちなので、次の柱としてモバイル事業を考え、力を入れているようです」と話した。

くろい氏は楽天の経済圏についても講義。「もともと楽天カードは最初に還元率5%とサービスをしすぎた。そこで還元率を3%に引き下げましたが、楽天モバイル会員は楽天市場で買い物をすると還元率4%になります。つまり楽天モバイルを契約するとその料金は楽天カードで支払い、また楽天モバイル会員が楽天市場で買い物をするとユーザーは還元率が高くなり、楽天も儲かる、という楽天の経済圏を作ろうとしているというのが私見です」と説いた。最後にくろい氏は「楽天以外でも、カードは後から改悪されることがあるので、日頃からポイントはしっかり見ておきましょう、というのが今日の教訓です」とこの日の講座を締めくくった。

※なお、2022年5月13日の発表により楽天モバイルは2022年7月より従来1GBまで月額0円のところ、月額1078円となります。

なお、チャンネルは月額550円で、月2回の生配信を行う予定。チャンネル会員になると、会員限定パートを含む生放送全編を見ることができる。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

文=小山芳恵

楽天が儲かる「楽天の経済圏」の図