―[負け犬遠吠え]―


ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は76回目を迎えました。

 今回は年末までの仕事が無くなってパチンコへ行ったお話です。


◆気づけば30歳を目前に控えて

 前回の記事が上がってから2ヶ月半が経過していた。年始に掲げていた目標

「毎週記事を書く」
「今年中に運転免許を取る」

 そのうち、記事を書き続けるという目標を達成できなかった。昨年も何だか色んな人に甘えて休み休み書いていたのだが、今回は2ヶ月半という最長記録だ。HUNTER×HUNTERを書いているわけでもなければ、期待の大型新人ですらない。なんならもうすぐ30歳になってしまう。日刊SPA!の居心地の良さに甘えて、いつまでも生意気な大学生のような意識で生活している。自分でも恐ろしい。

 体は確実に30代を迎えようとしていて、バイト先でもわからないフリが通用しなくなってきた。精神年齢だけが20代前半のまま、白髪を抜く本数が増え、ラーメン二郎コールから「アブラ」が消えた。

「年取ったら焼き肉とか食えなくなるから、今のうちに食っとけよ」

 とは言われていたものの、40代になってからの話だと思っていた。まさか30を手前にして苦しくなるとは思ってもみなかった。「勉強はしとけよ」という言葉を思い出した後悔の再来である。人は痛みなくして学習できるほど賢い生き物ではない。

◆消費者金融から金を借りられない

 さて、では甘ったれたこどもおじさんの僕が目標未達成に拗ねて何もしていなかったかというと、そうではない。どれだけ甘えん坊でも見た目と社会的立場はおじさんだ。家賃や携帯、支払いは毎月請求されるし、もうお金が無いと言って許されたりもしない。そういえば、僕が生きているだけで1ヶ月にかかる最低金額を計算してみると、12万7000円だった。

 タバコ代と食費を乗せると安く見積もって15万円。こう考えると、今までなぜ気軽にパチンコを打ったり海外に行けていたのか不思議でならない。

 いや、不思議ではない。借金をしてパチンコを打って、海外に行っていたのだ。難解に見える方程式は全てカードローンや消費者金融を介在すれば簡単に解ける。二つの解が使えなくなった今「気軽にパチンコを打ったり海外に行ける自分」は成り立たない。

 年始に友達に借りた15万円をまだ完済できずにいる。1月に借りた金は12月をギリギリ乗り切るための金だった。1月に必要になる金は1月のバイト代から出そうと思っていたのだが、1月は仕事が見つからなかった。追加で金を借りるのもバツが悪く、とりあえずメルペイの枠が10万円あったので、iTunesカードを購入して金券売買サイトで売った。5万円が4万5000円になったが、「マジで返す」と吐いた言葉を飲み込むために、自分の選択の愚かさには目を瞑った。無敵の人が最後に捨てるのは、金や社会性ではなくプライドだ。

◆どんなジョブにもなれる反面…

 2月はほどよく働いたが、そのうちの半分が翌月払いの仕事だった。2月中に手に入った金は13万円ほどで、メルペイに返す金を考えると、友達に返す金はまたしても間に合わなかった。なので家賃を1ヶ月遅らせて5万円を友達に返した。

「無理しなくていいから」と言う友達には「めっちゃ仕事があるから全然大丈夫!約束は守るタイプじゃん?」と返信をする。

 こういう見栄を張るための無意味な嘘は、自分の状況と周囲の認識との間に溝を作る。“アイツ”に金が無いのは承知だが、思っていたよりも金が無いのは、この嘘の積み重ねによるものだ。

 3月もよく働いた。この月の給料は半分が手渡しで、4分の1が翌月払い、残りが翌々月払いだった。翌々月払いとなるともう想像できないくらいの未来だったので、罰を受けているような気持ちになった。2月の分の給料を合わせて現金が25万ほど作れたが、友達には「もう2ヶ月待ってほしい」と言った。それで遅れていた家賃を支払った。

 4月は30日あるうちの29日が仕事だった。2022年の3ヶ月の間で気づいたことがある。

 それは、声をかければ仕事をもらえるような年齢ではなくなったということと、自分は社会の目線では全く成長をしていないということだ。僕はもう長い事、末端の労働者をやっている。ディーラーや黒服など、頭なんか使う必要のない仕事ばかりだったが、素人よりはマシだ。パソコンだってある程度触れるし、会社の決算書も読める。キャリアや資格を全く無視してあらゆる能力を身につけた。どんなゲームでも最初の敵を倒すことはできる。どんなジョブにだってなれるようになった。

 どんなジョブになれたとしても、倒せる相手はレベル1までだった。

◆4月の労働時間は月400時間超!

 4月の仕事を探した時、合計4つの職場を跨いだ。全て時給が1,200円前後の仕事だ。1日に15時間働いた。全てが翌々月払いだったので、働いた割に生活は厳しかった。

 給料計算アプリを見ると、400時間以上働いていて、給料は50万円を超えていた。翌々月なのでこの給料は6月に入ってくる。

 3月の翌月払いの分の給料だけでは足りなかったので、この月も家賃を滞納した。目が覚めている間は全て労働に身を捧げていたが、財布の中はずっと0円だった。

 もう日刊SPAどころではなかった。毎日毎日5時半に家を出て、都内に向かった。パチンコ屋が閉まる時間に家に帰り、眠った。いつの間にかエアコンの要らない季節になっていて、夜が静かになった。全ての職場を網羅できる一番効率の良い定期券を丸二日使って考え出したが、それでも3万円近くかかった。どうせ都内で働くなら3万円分高い家に住んだ方が良いのかもしれない。

◆「ちゃんと働く」は正しいのか?

 5月は仕事が2つ減った。空いた日を埋めるために仕事を探したが、もう週一回数時間だけでおじさんを雇ってくれるような職場は簡単に見つからなかった。2ヶ月連続で家賃を滞納するのは都合が悪くなるので、今月はまたメルペイiTunesカードを買って、売った。

 6月になったら50万円近い金が手に入る。4月に頑張ったご褒美だ。友達に10万円を返し、メルペイに5万円を返し、残った金が35万円。多少は余裕が出てくる。

 実家と縁が切れている僕にとって、僕の成長を見せて、見栄を張る相手は友達しかいない。

 30歳間近にとって15万円は大した金額ではなかったはずだが、レベル1のフリーターにとってはあまりにも重かった。半年もかかってしまった。そして借金を返済した後も、レベル1のこの人生は続く。何より、起きている間ずっと働いて50万円というのは、中々堪える事実だった。

 法も犯さず、人を騙さず、責任も負わない人間の限界は50万円で、果たして「ちゃんと働く」とは必ずしも正しいのかと悶々と考えてしまった。

 義理や筋を通すのに必要なのは気持ちよりも見積もりだったようだ。

<文/犬>

【犬】
フィリピンカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitternoteカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
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