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 人類は今、もっとも重要な瞬間に直面している。地球から脱出し、宇宙に本格的に進出するためのエネルギーをどうにかして手にしなければならない。さもなければ、自滅の未来が待っているという。

 だが新しい研究によるならば、それさえできればほんの200年程度で、本当の意味での「宇宙文明」に到達することができるという。

 NASAジェット推進研究所のジョナサンジャン氏は、我々は限られた資源しかない宇宙の小さな岩石に囚われていると語る。

 「原子力」と「再生可能エネルギー」を増やし、化石燃料から脱却する。それが自滅を回避し、地球から脱出するための鍵であるそうだ。

【画像】 宇宙文明の発展度を三段階で示す「カルダシェフ・スケール」

 1964年、ソ連の天文学ニコライ・カルダシェフは、知的生命の発達レベルを3段階で示す指標を考案した。それが「カルダシェフ・スケール」だ(のちにカール・セーガンによって修正された)。

 カルダシェフ・スケールは、ある文明のエネルギー源の種類と、それをどの程度利用できているかを基準にしている。

 例えば、「タイプI文明(惑星文明)」は、惑星のエネルギーすべてを利用・制御できる。つまり、化石燃料やウランといった地下資源や、地上に降り注ぐ太陽エネルギーなどを余すことなく利用できる文明だ。

 「タイプII文明(恒星文明)」になると、恒星系にある全エネルギーを利用・制御することができ、タイプI文明の10の10乗倍のエネルギーを消費する。

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 さらにタイプIII文明(銀河文明)になれば、そのエネルギー源は銀河全体になる。

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カルダシェフ・スケール / image credit:Indif / WIKI commons

 言うまでもなく、我々人類はタイプI文明にすら達していないが、それでもエネルギー消費量は年々増加している。

 しかしその一方で、二酸化炭素などによる汚染や核兵器など、地球の生態系に負荷をかけ、自らの首を絞めつつある。

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立ちはだかる進化の壁「グレートフィルター」を越えられるか?

 こうしたリスクの増大は、これまで地球外に高度な知的文明が発見されていない理由かもしれない。

 仮に地球の環境や、そこに宿った生命や文明の進化が特殊なものでないとする(特殊であると考える理由はない)。

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 その場合、銀河は知的生命であふれているはずだ。銀河の視点で見れば、人類はひよっこかもしれない。だが天の川銀河は数十億年という時間が経過している。

 ならばタイプIII文明に到達して、銀河全体への進出を開始した知的文明があったに違いない。

 つまり人類が知性を手に入れた頃には、異星人が我々に会いに来たか、少なくとも贈り物を残してくれていたとしてもおかしくはない。

 なのにこれまでのところ、我々は宇宙で孤独なままだ。知的生命はおろか生命すら極めて稀な存在であるように思える。

 ならば、文明が高度な段階に発達する前に、何らかの原因によって知的生命は滅んでしまうのかもしれない。いわゆる進化の壁「グレートフィルター(難関)」は多くの場合、自滅である。

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photo by Pixabay

 我々自身とて、カルダシェフ・スケールの最初の段階にすら到達していないというのに、すでに自滅の手段を持っている。

 各国が所有する核兵器は、人類を一人残らず地球から消し去るには十分な量だ。

 「我々自身がグレートフィルターなのだ」と、ジャン氏は言う。

 彼によれば、エネルギー消費を増大させつつも自滅から逃れる方法は、複数の世界で生きていけるようにすることだ。

 たとえ太陽系の中だけだったとしても、複数の惑星に入植することができれば、自滅を防ぐ強力な防波堤となる。

 だが、そのためには本格的でしかも持続可能な宇宙都市を築き上げ、それを維持できるだけの膨大なエネルギーを利用できるようにならねばならない。

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太陽系外惑星TRAPPIST-1fのイメージ図 / image credit:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (IPAC)

2371年、人類は惑星文明に到達できる

 ジャン氏らは、『arXiv』(2022年5月24日投稿)で発表された査読前論文で、タイプI文明に到達するための最善の方法を探っている。

 それは国連気候変動枠組条約の推奨事項に沿ったものだ。なぜなら、人類が「原子力」と「再生可能エネルギー」へと迅速に方向転換しなければ、カルダシェフ・スケールを登ろうという試みが、生態系に大打撃を与えるだろうことは明白だからだ。

 だが彼らの結論は希望を抱かせるものだ。仮に原子力と再生可能エネルギーが毎年2.5%成長するとすると、あと2、30年で化石燃料に取って代わる。

 両エネルギーは、地球の生物圏にこれ以上負荷をかけることなく、増加するエネルギー需要を満たすことができる。

 そして現在の消費速度が続いたとすると、2371年に人類はタイプI文明、すなわち地球文明に到達する。

 この考察にはいくつもの仮定が含まれており、100年前後は誤差があるだろうという。

 また核廃棄物を安全に管理する方法が確立され、エネルギー利用能力の向上が大災害につながらないことを前提とする。

 だが人類は努力次第で、200年後には何世代にもわたって種を守れるステージに到達できる可能性があるということだ。

追記(2022/05/26)本文中の誤字を訂正して再送します。

References:Here's how we can escape planetary destruction, according to physicists | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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人類はあと200年で真の宇宙文明に到達できるとNASAの科学者