―[モラハラ夫の反省文]―


◆結婚当初は幸せだったのに、いつしか妻の攻撃的な言動が増え……

 こんにちは。DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。今回は、参加者の方から受けた相談について書きます。

 結婚した当初はとても幸せだったのに、今では妻の攻撃的な言動が増えていくばかりの日々。妻が何故変わってしまったのか見当もつかずに戸惑うばかりだったが、ある日突然離婚を要求されてしまった──。

 会社員の土井さん(仮名・40歳)は、激務の中でも家庭を守ろう、ふたりの子育てに関わろうと努力してきたのに、どうしてこの状況になってしまったのか……と頭を抱えている様子です。

「自分は夫としての役割を果たすために努力してきたつもりだったのですが、『あなたとは離婚する、子どもにも会わせたくない』と言われてしまって…さすがに納得できないので自分の両親も交えて話し合いをしたのですが、親に対してまで攻撃的な態度を取られてしまいました。結婚当初は『気立てが良くて優しい子ね』と妻を気に入っていた母親からも、『あっちのほうがモラハラじゃないの。あなたの方がかわいそう』とまで言われています。親が言う通りで、実は自分が本当に加害者なのかよくわからないんです」

 土井さんはとても疲弊した様子で、おっしゃる通りどちらが被害者なのかわからないようにも見えます。しかしこれまでの記事でも述べてきたように、こちらでは相談者の言動をそのまま受け取ることはありません。「加害者の認識は偏っている」という前提で、パートナーの「攻撃的な」言動の原因を探っていく必要があります。

◆「専業主婦なのに、僕に子育てに協力しろだなんて」

 相談にもあるように「優しかったパートナーが変わってしまった」「相手のほうがモラハラのような言動をするようになった」というのは非常に良くあるケースです。パートナーの「気遣いができる」「思いやりがある」といった良い部分をモラハラによって奪ってしまう人がたくさんいるからです。

「土井さんは『あなたにこう言われて傷ついた』『やめてほしいことがある』『子育てや家事に協力してほしい』などと言われていたことはありますか?」

「確かにそんなこともありましたが……妻の言うことは普通なら気にするようなことではありませんでした。大袈裟なんですよ。専業主婦で働いていないのに、当たり前のこともせずにもっと協力しろなんて言われても。僕は外で働いているのに、これ以上何をどうすればいいのかわかりません」

 ここで僕は土井さんがパートナーを傷つけ続けていたことを確信しましたが……皆さんにはどう見えるでしょう?

「あなたは『普通の人』『専業主婦』という概念と結婚したんですか?

「えっ、いや、もちろんそういうわけじゃないですけど……」

 彼は少し考えるようにして答えました。

 しかし、土井さんがしていることは、実はそういうことなのです。普通はこうだとか、専業主婦なら当たり前とか、そんなことは何の役にも立ちません。土井さんと、土井さんのパートナーという2人が、どう生きていきたいかだけが大事です。土井さんは、パートナー自分にとって都合の良い道具になって欲しかった。「普通は」、「当たり前」という言葉を使って。それは、人を深く傷つけることです。土井さんにとって、欲しいのは役割や機能であって、パートナー個人との人生ではなかったのですから。

 自分を否定され続けた結果、土井さんに攻撃的になったパートナーは「変わってしまった」のではなく、土井さんがその行動によって優しさを奪い「変えてしまった」というのが真相でした。

◆妻の訴えを適当にあしらっていたことが根本原因だった

「私のしたことが妻を傷つけたのが妻の攻撃の原因というのはなんとなくわかりましたが、私の親にまであんな態度をとる理由がよくわからなくて……」

 僕は、土井さんの親も毒親、つまり加害的であった者である可能性が高いと考えます。GADHAのプログラムに参加した方のほとんどは親から傷つけられた人でもあります。人を傷つける考え方を植え付けられているんです。それ故に土井さんが気づいていないだけで、親御さんはパートナーの方を傷つける言動を大量に積み重ねている可能性が高いです。相手の親にすら攻撃的になるまでに、よほどの苦痛があったのだと考えられます。

 困惑した様子の土井さんですが、僕は続けて質問します。

「これまでに親御さんとの関係について、パートナーの方に相談されたことはありませんか? その相談を適当に流したり、親の味方をしたりしていませんでしたか?」

そういえば、よくある嫁姑問題だと思って適当にあしらったことが何度かあった気がします」

 個別の人間関係で「普通」「よくあること」というのは通用しません。目の前にいるその人が傷ついている、その事実を重大なことと捉えられなければ相手はさらに傷つき、やがて関係は終わります。パートナーとの関係を修復したいと思うなら、まずは相手の気持ちがそこにあることを尊重してみることが大事です。 それから土井さんは、手探りながらもGADHAでやり取りを続けていきました。自分が被害者なのではないかと半信半疑の時期は続きましたが、半年後にこんな報告が入ります。

「実はこの前、離婚が決定的になったことを親に話したら家に押しかけてきまして……『息子は真面目に働いてきただけなのに、そんなことで離婚だ、子どもに会わせないだなんて大げさだ』と妻に言ったんです。 案の定、妻は『私が子どもを人質にしているとでも言いたいんですね』と挑発的で困惑しましたが、GADHAでのやり取りを思い出しながら『俺が傷つけたのに、俺の親にまで一方的に悪者にされて辛いよな。今までずっと君の気持ちを無視してきてごめん』と、妻の気持ちを想像して寄り添おうとしてみたんです。妻はとても驚いて固まっていましたが……そのくらいの時期から少しずつ妻の態度が軟らかくなってきました」

パートナーの意思を尊重できるようになってからは、「離婚した今のほうが幸せ」

 その後「一旦距離をおく時間を取りたい」とのパートナーの要望を尊重し、結果的に離婚することになったものの、最近は結婚していたころよりもずっと彼女が優しいんです、と語る土井さん。

「以前は『絶対に会わせたくない、あなたの顔も見たくない』と頑なだったのに、今では子供と一緒に毎週末会っています。不思議ですよね、離婚した今のほうが幸せなんです

 今回土井さんが変わった点は、「自分が人を傷つける考え方を身に着けてしまった原因である親に流されずに、パートナーの気持ちを想像し寄り添うことができたこと」だと言えます。

 悲しいことですが、育った環境が原因で加害者になることは非常に多く、モラハラの改善には自分の親を疑うことが必要です。変容を進める中で、親と距離を取る人も少なくありません。

 以前は「どちらが正しいのか」「普通なのか」にこだわり、パートナーの気持ちをないがしろにしていた土井さんが、パートナーの要望を尊重し、離婚してからも交流を持ち続ける新しい関わり方を「幸せ」と言うことができるようになったのはとても大きな変化です。

「結婚していたころよりもパートナーが優しくなった」のは、土井さんが奪い取ってしまっていたパートナーの優しさを返すことができたからではないでしょうか。

 相手の傷つきを「些細なこと」「大げさ」だと捉えることをやめ、相手の気持ちに寄り添い尊重することこそが、人を傷つける関わり方を手放し、お互いを想い合う関係を築くために最も重要なことのひとつです。

【えいなか】
DVモラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティGADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッターえいなか

―[モラハラ夫の反省文]―


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