詳細画像はこちら

ビスポークを選ぶという贅沢

執筆:Ohto Yasuhiro(大音安弘)

馬車の時代から、富裕層によって乗り物は、自己表現の1つであった。

【画像】FペイスSVRと、ジャパンSVエディション【比べる】 全62枚

それは富や権力の象徴でもあるため、裕福なオーナーたちは競うように豪華な馬車をオーダーした。それを請け負ったのが、専門のコーチビルダーである。

詳細画像はこちら
ジャガーFペイスSVRジャパンSVエディション(アボカド)    神村聖

その後、自動車の誕生により、高級車のニーズは馬車から自動車へとシフトしていき、彼らのボディ作りのノウハウは自動車のボディ製造に活かされるようになる。
その頃の高級車の製造は分業制であり、シャシーとパワートレインを自動車メーカーが行い、ボディはコーチビルダーが担っていた。

このため、顧客は自由に好みのスタイリングを持つクルマを手にすることができた。高級車とは完全フルオーダーの「ビスポーク」が基本だったのである。

ジャガーの創業者であるウィリアムライオンズは、元々は、サイドカーの製造を手掛けていたが、その経験を活かし、会社を自動車ボディのコーチビルダーへと発展させていく。つまり、ビスポークこそが、ジャガーの原点ともいえるのだ。

最新ジャガーのラインナップも、豊富なオプションが用意されており、顧客の好みに合わせた1台を作り出すことが可能だ。

しかし、今や高級車も大量生産の時代である。豊富なオプションを備えるジャガーと言えど、限界はある。その限界を取り払うビスポークに特化した部門が「SVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」なのだ。

「ジャパンSVエディション」とは

ジャガーFペイスSVRの最大の特徴は、508PS型と呼ばれるエンジンにある。

電動化シフトの今、マルチシリンダーエンジンは希少。さらにピュアエンジンとなれば、フィナーレを迎えている段階だ。

詳細画像はこちら
ジャガーFペイスSVRジャパンSVエディションの前席(内装色:エボニー)    神村聖

しかも5.0LのV8エンジンに加え、スーパーチャージャーをドッキングさせているのだから、贅沢この上ない。ランドローバーよりも、早く電動化シフトを掲げるジャガーにとっては、まさに最後の晩餐といえる。

因みに、フルモデルチェンジが発表されたレンジローバー・スポーツは、新型では、V8エンジンがBMW製の4.4L V8ターボに切り替わるため、おそらくSVRも、このエンジンがベースとなる可能性が高い。ピュアジャガーエンジンとしてのV8は、Fタイプと同モデルのみとなっているだけに、カーガイにとっては極めて価値のある1台といえよう。

その実力は、最高出力550ps/6500rpm、最大トルク71.4kg-m/3500rpmと圧倒的。ガソリン及びディーゼル共に、2.0L 4気筒ターボに統一された標準仕様車と比べると、パワーは2倍以上、トルクディーゼルの1.6倍にもなる。まさにモンスターSUVだ。

しかし、今回の主役である「SVR」は、さらに一味違う。

SVOが、日本のジャガーファンのために、腕を振るい、特別なカスタマイズを加えた「SVRジャパンSVエディション」なのだ。

つまり、SVOが専門とする高性能化と専用カスタマイズの魅力が一気に味わえるという贅沢さ。その象徴が4色のボディカラーであり、これらはSVビスポークチームと連携して設定され、全てが日本初導入色となる。

各色は5台ずつのみとなるため、SVRの希少性に輪をかけてレアだ。

インテリアとサウンドが最上級

試乗車は、「ワカモレ」というアボカドを使ったサルサ(ソース)をモチーフとしたボディカラー。高性能SUVにおいしそうな色が使われているのは、ちょっと面白いところ。

もちろんインテリアもアップグレードが図られており、ウィンザーレザーを使った最上級のもの。

詳細画像はこちら
Fペイスは2021年に大きな改良があり、内装はデジタル機能を強化。ATのコントロールが、ダイヤルシフトからレバーシフトに変更されている。ユニークなダイヤルシフトが失われたのは、少し寂しさも感じるが、操作性に置いては、ショートストロークとなる電制シフトの方が勝る。    神村聖

装備についても、22インチの鍛造アルミホイール、ピクセルLEDヘッドライト、ヘッドアップディスプレイ、パークアシスト、スライディングパノラミックルーフ、MERIDIANサラウンド・サウンドシステムを追加するなど抜かりはない。

2016年に日本上陸を果たしたジャガーFペイスだが、2021年モデルで内外装の大幅アップデートを実施した。特にセンターディスプレイは、大型のタブレットデザインとなったのが印象的なポイントだ。

SVRの武器であるV8エンジンは、スターターボタンを押す瞬間から、クルマ好きを快楽への道へと誘う。重厚なエンジンサウンドは、どんな音楽よりもドライバーを高揚させてくれる。

この独特のサウンドは、失われてしまう前にぜひ味わっておくべきだろう。従来同様にドライブモードセレクトジャガードライブセレクター」が装備されており、ダイナミックモードを選択すると、アクセルレスポンスやシフトタイミングなどが、スポーツ走行モードに切り替わる。

エンジンだけじゃない ジャガーらしさがある

さらにSVRには、フラップ内蔵のエグゾーストシステムが装備されるため、エンジンサウンドもより刺激的に変化する。因みに従来のATシフトに使われていたダイヤル機構は、新たなドライブモードセレクターとして継承されている。

試乗時はあいにくの雨模様のため、V8の加速力を試すのは控えたが、それでも滑らかに吹け上がるエンジンと力強い加速は、快感のひとこと。もう一歩、踏み込みたい誘惑に駆られる。

詳細画像はこちら
ジャガーFペイスSVRジャパンSVエディション(アボカド)    神村聖

もちろん、エンジンが独り歩きすることもなく、ステアリングや足回りも、SVRならではの走りが楽しめるようにチューンされていることを感じる。

意外だったのが、その走りに、ジャガーらしいしなやかさを持ち合わせていることだ。

以前のFペイスは、標準車を含め、強固なボディを活かすハードな足回りの印象が強く、スポーティなキャラクターが重視されていた。

しかし、最新のFペイスは、スポーティさを守りつつ、ジャガーらしい懐の深さを感じる滑らかな走りが味わえるようになった。

これはSVRの味付けというよりも、Fペイスの熟成が進んだためと考えられる。

SVスペシャリストセンターが日本へ

ジャガーにとって新境地だったSUVも、いよいよジャガーネスを実現できるようになったのだろう。天候によりSVR特有の魅力を存分に味わうことこそ叶わなかったが、Fペイスの進化による魅力に気が付けたことは、大きな収穫であった。

日本専用にアレンジしたFペイスSVRを見て、SVRに惹かれただけでなく、自分だけの特別なFペイスを手にしたいと考えた人もいるのではないだろうか。その夢を叶える環境作りも着々と進行中だ。

詳細画像はこちら
SVOのビジネスは幅広く、少量生産・カスタマイズに対応できる開発/製造スタッフ/設備を備え、クラシックカー事業や装甲車の開発製造などを行う。その中に「SVR」と呼ばれるハイパフォーマンスモデルも含まれている。    神村聖

ジャガーランドローバーでは、SVOの手掛けるモデルを専門に扱う「SVスペシャリストセンター」を全世界で展開してきた。それが2022年より日本でも導入されることになったのだ。

まずは5大都市+αとなる全国の8拠点に限定されるが、そこではSVモデルの展示車及び試乗車が用意され、SVの専門家が常駐。SVモデルに対する顧客のニーズに応え、ビスポークモデルなどのプレミアムサービスを提供するとしている。

少し英国が近く感じられるような特殊かつ贅沢なオーダーシステムの導入が、日本のクルマ好きたちにどのような喜びを提供してくれるようになるのかも、注目していきたい。

FペイスSVRジャパンSVエディション スペック

価格:1646万円
全長:4755mm
全幅:1960mm
全高:1670mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
車両重量:2130kg
パワートレイン:4999ccV型8気筒スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乗車定員:5名
駆動方式:四輪駆動

詳細画像はこちら
ジャガーFペイスSVRジャパンSVエディション(アボカド)    神村聖

特別色と極上の内装 「FペイスSVRジャパンSVエディション」 試乗で見つけたジャガーらしさ