6月24日公開の是枝裕和監督最新作『ベイビー・ブローカー』が、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたことを受け、是枝監督、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨンの5名がカンヌ入りし、現地時間5月26日にレッドカーペットとワールド・プレミアとなる公式上映に参加した。上映終了後は12分にもおよびスタンディングオベーションが起こる大盛況となり、是枝監督は「思っていた以上にちゃんと届いたのかなと思います」と手応えをにじませた。

【写真】是枝監督『ベイビー・ブローカー』カンヌで12分間のスタンディング・オベーション

 本作は“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊をめぐり出会っていく人々が描かれるヒューマンドラマ。『万引き家族』の是枝監督と『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホがタッグを組んだ注目作で、この日のレッドカーペットには大勢の取材陣と観客が集結。そんな中、タキシード姿の是枝監督、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、そしてオフショルダーのグレーのロングドレスに身を包んだイ・ジウン、胸元が大きく開いたシンプルな白いロングドレス姿のイ・ジュヨンが登場し、大歓声で迎えられた。

 その後5人は、カンヌ国際映画祭のメイン会場PALAIS DES FESTIVALSに移動し、公式上映を開始。上映中は「赤ちゃんポスト」をきっかけに出会ったブローカー、母親、刑事たちの一風変わった旅路に笑いが起こり、終盤にかけては涙をすする音も。上映終了後は12分にも及ぶスタンディングオベーションが続き、是枝監督とソン・ガンホ、カン・ドンウォンは3人で肩を組みお互いを称えあった。またイ・ジウン、イ・ジュヨンも監督と目を合わせ微笑みあったり、場内を見上げて手を振り満面の笑みを見せるなど、割れんばかりの拍手喝さいを全身で受け止めていた。

 公式上映終了後、是枝監督は「ちゃんと笑うところで笑い声が聞こえて、隣のソン・ガンホさんと手を握りあって最後まで僕自身上映を楽しめたので良かったのではないかなと思います」と振り返り、12分間のスタンディングオベーションを受けたことについても「本当にあたたかい握手と笑顔に包まれたいい時間だったと思います」と充実した表情。

 上映後に出演者とどんな会話をしたのか聞かれると「彼らも完成版を観るのは初めてだったので、ソン・ガンホさんは本当にいい映画になった、撮っている時にはこんなに感動的な映画になるとは思っていなかったと言ってくれました。編集を頑張ってよかったなと思えました。イ・ジウンさんとイ・ジュヨンさんは初めてのレッドカーペットでしたし、すごく緊張したと言っていました。でも上映中笑い声がおきてすごくホッとしたと言っていました。上映後は緊張がほぐれていい笑顔がみられました」と明かした。

 そしてコロナ禍や不穏な世界情勢の中開催されたカンヌ映画祭に、4年ぶりに参加したことについて「非常に政治的な状況が動きがある中での開催で、映画祭にとっても試練だと思うけれど、カンヌはやっぱり昨年も香港の状況に対していち早く作品を上映するという選択をしましたし、今回もそこは態度を表明していますし、ウクライナのことだけでなくて、レッドカーペットというのが華やかな映画人がスポットライトを浴びる場所だけでなく、あの場所で抵抗なら抵抗など、声が小さな人たちにあの場所を開放して使ってもらうという、そういう場所として映画祭を開いていくという態度を僕は一番リスペクトしています。映画祭とはそういう場所なんだなというのを、4年ぶりにきて改めて認識しました」と語った。

 なお今回、本作の本予告も解禁。小さな命をめぐって、登場人物それぞれの正義が揺らぎ始める様子などを収めている。

 映画『ベイビー・ブローカー』は、6月24日より全国公開。

映画『ベイビー・ブローカー』第75回カンヌ国際映画祭レッドカーペットにて (C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED