公道走行可能な電動キックボードの普及が著しい。環境にも優しく、便利な乗り物であることは間違いないが、乗る人間次第では凶器にもなりうる。危険運転が横行する電動キックボード無法地帯と化した歌舞伎町で3日間張り込み、その実態を追った。

◆72時間の潜伏取材で撮った問題シーンの数々

 GW明けの早朝、新宿・歌舞伎町区役所通りの歩道を、2人乗りする一台の電動キックボードが走り抜けた。運転するホスト風の男性の服を摑むのは、スマホをいじる「ぴえん系女子」。アフター終わりの客を新宿駅まで送り届ける仲睦まじい姿ではあるが、明らか危険運転である。

 しかし、ここ歌舞伎町ではなんら珍しい光景ではない。この街ではホスト、スカウト、客引きなどの間で電動キックボードが大流行しているが、その多くが当たり前のように危険運転をしている。

 場所は同じく区役所通り。終電もなくなった深夜2時頃、若い男性が運転する2人乗りの電動キックボードが車道と歩道を交互に走り、縦横無尽に歩行者の間をすり抜けていった。取材班が自転車で追いかけると、2人乗りのまま通行人の女性に、「お姉さん、これからどこ行くの?」とナンパ行為をしている。

 女性に断られた2人組は、「キャハハハハ!」と笑い声を上げながら歩道を走り続け、駐車場に停めてあった他県ナンバーの車に乗り込むと、消えていった。わざわざ他県から歌舞伎町まで電動キックボードを持ってきているのだ。

◆「トー横界隈」の若者たちも電動キックボードを乗り回す

 素行の悪さが目立つ「トー横界隈」の若者たちも電動キックボードを乗り回す。見ているこっちが恥ずかしくなるようなコールを合唱しながら酒を飲み、空いたチャミスルの瓶を地面に叩きつけた。そして、「俺が歌舞伎町で一番強い! ウキャー!」と奇声を発しながら、電動キックボードに乗り、酒を買いに行った。

 歌舞伎町の酒屋で働く30代の男性は、こうした状況に頭を悩ませている。

「私は車で毎日歌舞伎町を通るのですが、最近、電動キックボードの飛び出しが異常に増えました。乗っている本人は楽しそうですが、とにかく車で近くを走りたくない。彼らはそのうち死亡事故を起こすとしか思えません」

ナンバープレート未装着、レーン無視、右折車線を直進

 ある別の日、取材班が職安通りを張っていると、ホスト街からナンバープレート未着用の電動キックボードに乗る男性が一時停止ラインを無視して飛び出してきた。時速は優に20㎞を超えている。

 男性は後方確認を一切せずに片側2車線の右車線に移動して走行。右折をするのかと思いきや、そのまま直進していった。イヤホンで聴いている歌にノッてきたのか、J—POPを熱唱しながら蛇行運転を始め、後ろを走るトラックに思い切りクラクションを鳴らされていた。

◆本当に規制を緩和すべきなのか?

 傍若無人にも程がある。これらの危険運転にはどういった処罰を下される可能性があるのか。アトム法律事務所の藤垣圭介弁護士に聞いた。

「現行法において電動キックボード原動機付自転車と同じ扱いとなっています。そのため、2人乗りは定員外乗車違反、ナンバープレートの未装着は道路運送車両法違反、2車線以上の車道の右側の走行は通行区分違反で、それぞれ罰金や反則金の対象になる可能性があります」

 新宿区は電動キックボード実証実験の対象エリアとなっているため、特例でヘルメットの着用は任意など、一部規制緩和後のルール適用だが、それでも見かける利用者は軒並み違反をしていた。

 今年の4月、道路交通法の改正案が可決され、電動キックボードに対する規制は緩和される。施行は2年以内とのことなので、しばらくは現行法の適用が続くわけだが、「電動キックボード無法地帯」と化している歌舞伎町の人々が、そのような事情を把握しているとは到底思えない。

【藤垣圭介氏】
アトム法律事務所埼玉大宮支部長。埼玉弁護士会所属。交通事故をはじめとして数多くの刑事弁護を担当

取材・文/SPA! 歌舞伎町張り込み班 撮影/藤中一平

他県から電動キックボードを持って歌舞伎町に来た2人組。かなりはしゃいでいたが、何がそんなに楽しいのか