プラレール」が誕生60周年を迎えたのを機に、オリジナル車両がラインアップされています。実在の車両に基づくのが醍醐味ともいえるプラレールですが、オリジナル車両はある役割を持って生まれました。

60周年のプラレール 架空の車両は全廃したはず…

プラレール」のラインアップの多くは実在の車両です。しかし2022年現在、全くのオリジナル車両もラインアップされています。どのような意図のもとで生まれたのでしょうか。

そもそも当初プラレールは、実在の車両に基づくものではありませんでした。1959(昭和34)年、金属や木のおもちゃが主流であった当時、最新素材であったプラスチックのおもちゃとして発売された「プラスチック汽車・レールセット」がプラレールの原型です。ちなみに、おなじみの青いレールは、当時の家族が団らんの時を過ごしたちゃぶ台の上で遊べるサイズとして設計され、今でも規格が変わっておらず、当時のレールと最新のレールを繋げて遊ぶこともできます。

1964(昭和39)年、東海道新幹線ひかり」の登場とともに、初めて実車に基づく商品が登場し、1971(昭和46)年には架空デザインの車両が全廃されています。以来、国内累計約1800種類、1億7700万個以上が販売され(2021年3月末現在)、親子3世代にわたり愛されていますが、「実車に基づく」ことが、ひとつの醍醐味であることは間違いありません。

そんなプラレールのなかに登場した“オリジナル車両”は、「プラレール鉄道」という企画で2022年5月時点では2車種がラインアップされています。プラレール鉄道は、2019年の誕生60周年を機にタカラトミーが創立した"架空の鉄道会社"です。

プラレールではこれまで、実在の鉄道車両に加え、『きかんしゃトーマス』『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』などのキャラクターとしての車両が商品化されてきましたが、プラレール鉄道はそれらとも一線を画します。まるで実在するかのようにリアルなオリジナルの鉄道車両をデザインし、新たなプラレールとして商品化するというものです。

今の時代に必要だった? オリジナル車両が生まれた背景

プラレール鉄道からは現在、「スピードジェット」と「クロスライナー」が発売されています。

スピードジェットは、プラレール鉄道で最速を目指して開発された高速鉄道車両という設定。デザインコンセプトは、「プラレール鉄道の英雄(ヒーロー)」や「未来への情熱」をイメージした赤が基調となり、日本の伝統文化である漆塗りをイメージした黒、金でまとめられており、一種壮大なイメージを醸しだしています。

もうひとつのクロスライナーは、都市部と郊外を結ぶ通勤特急です。デザインコンセプトは、路線網をクロスしながら縦横無尽に走行するという設定から、車体側面の青いラインは全国に張り巡らせた路線をイメージしているとのこと。

このプラレール鉄道の2車種でタカラトミーが進めているのが、全国の実在する鉄道会社とのコラボレーション。オリジナル車両と実在車両のプラレールでの共演や、CGと実写の組み合わせでの共演を映像化するという試みを進めています。リアルとバーチャルの両面から子ども達へ鉄道の魅力を伝えよう、というコンセプトをもっています。

たとえば「スピードジェット」は西武鉄道とコラボを実施。西武鉄道沿線をプラレールで再現し、スピードジェット西武鉄道の特急「Laviewラビュー)」が並走する様子などと、実際の西武鉄道の映像を交えたコラボレーション映像「プラレール鉄道×西武鉄道でいく こどもたび」が、YouTubeの西武鉄道公式チャンネルやタカラトミーチャンネルにて公開されています。

「クロスライナー」はJR西日本とのコラボが行われています。大阪市内を走行するJR 西日本の「大阪環状線」をプラレールで再現し、クロスライナーと「323系大阪環状線」「103系大阪環状線」が並走する様子などと、実際の大阪環状線の映像を交えたコラボレーション映像「ぶらり大阪一周の旅」が、タカラトミーチャンネルにて公開中です。

ネットを通じて架空の車両が現実の鉄道と公式コラボするという、今の時代ならではの試みは、玩具の世界の新しい波になっていくのか、楽しみに見守っていきたいところです。

手前の赤い車両がオリジナルの「スピードジェット」(画像:タカラトミー)