5月25日、新作デジタルEP『13』をリリースしたBBHF。アルバム『BBHF I -南下する青年- 』以降、徐々に戻ってきたライブに取り組んだり、タイアップも含め、シングルをリリースしたりと止まることなく活動を続けてきた彼ら。その中で生まれてきた今のモードをコンセプチュアルに体現したのがこの6曲だ。
「生」そして「死」という根源的なテーマにまっすぐに向かいながら、歌詞の内容としても音楽性としても、ソングライターである尾崎雄貴、その弟にしてドラマーの尾崎和樹、そしてギターのDAIKI、3人の持っているスキルや経験をそのまま注ぎ込んだ今作は、なぜこんなにも新鮮で、同時に総括的なものになったのか。
そしてこれから先、BBHFはどこに向かうのか。6月からスタートするツアーへの思いも含めて、3人に語ってもらった。

――今作『13』は6曲入りで、「ホームラン」から始まっていくわけなんですが、その「ホームラン」は昨年シングルとしてリリースされていた曲ですね。そこから今作への流れが始まっているんだと思うんですが、改めてあの曲を作ってリリースした当時の感触というのはどういうものでした?

尾崎雄貴(Vo/Gt)

尾崎雄貴(以下、雄貴) これは今回のEPにもそのまま繋がっている感情なんですけど、ロジカルな考えじゃなくて、感覚とか感情とかに近いものがすごくあります。たとえば苛立ちとか怒りとか、自分の思い通りにならないことに対してのネガティブな感情、全部ひっくるめて押し出すような形で楽曲を作ったのが「ホームラン」だったんです。サウンドについてあれこれ考えを巡らせて、いろいろ参照しながら音楽を作るのではなくて、自分の気持ち一発でやるっていう。結局自分の音楽はギターをじゃかじゃかコードで弾いて歌ってっていうのがスタートなんで、そこはやっぱり変わらないって自分は思っているんですけど、そういう感情を……プロセスが大事なんじゃなくて、まずその感情自体が僕らに存在してるっていうことが大事、それが伝わることが大事っていうモードに今入ってるのかなと思っていて、「ホームラン」がそのスタートでした。そういうやり方でも自分たちでいいなと思える曲は書けるんだなって、自分でも驚いた覚えがありますね。

BBHF「ホームラン」MV

尾崎和樹(以下、和樹) 普段は基本的に尾崎雄貴の頭の中で鳴っている音を再現していくというようなプロセスで、楽曲によっては完成目前になるまでどういう曲になるかわからないみたいなこともあったりしたんです。でも「ホームラン」は曲を作り始めてすぐ位の時点で、なんとなくもう共有がされている感覚というか。きっとこういう曲になるんだろうなっていうイメージが掴みやすかったんですよね。それが感情や感覚を表に出してくっていうモードの表れだったのかなって思います。

DAIKI 「ホームラン」をライブで演奏すると、初期衝動的な、楽器を始めたときの感情に近いものをすごく再確認、再認識できるような感じがあって。すごくシンプルな構成で、なおかつ、「ギターの音ってこういう音だよな」みたいな。がむしゃらにかき鳴らす、ストラミングできるような気持ちになれるというのは今までの楽曲ではあまりなかったので、実際にライブで演奏しても本当に楽しい楽曲だなって感じてます。

BBHF『SUPER MOON TOUR 2021』2021年12月10日 東京・Zepp DiverCityより

――そんな「ホームラン」から今作のコンセプト、テーマにたどり着いていったんですか?

雄貴 「ホームラン」を書いた時点で今回のEPに入っている楽曲の一部、2、3曲はできていて。もしくは「ホームラン」よりちょっと先にできた曲もあったりしたんですけど、そこから歌詞を書いていく上で、結局自分がずっと悩み続けたり苦しみ続けたりする中で時々光があって、水面に上がるような感じで息ができるようなときがあったりっていう上がり下がりがあるけど、結局それの終わりってどこなんだろうって考えると、死ぬことだなって思って。そういうことをすごく強く思う出来事が、もちろんコロナもあったし、自分の人生の中でもあって、死をゴール地点として捉えるような考え方になったことが、自分でもまったく意図せず楽曲に出てきた気がします。今回、歌詞に「死」とか「死神」とかっていう言葉がいっぱい出てくるんですけど、それも自分の中にトレンドにしていたわけじゃなくて、書いてから自分で気づいたんです。今回は死がテーマになってるなって。

――サウンド的には「ホームラン」から始まって、「サラブレッド」はわりと思い切りギターロックをやっているような曲で、そこから「死神」や「シェイク」というダンサブルな曲があって、最後は「バックファイア」でアコースティックな、オーガニックな響きにたどり着く。わずか6曲の中ですごく変化に富んだ作品になりましたね。

DAIKI(Gt)

DAIKI でも、僕は今回の『13』に関しては、自分の中でちょっと吹っ切れた部分もありまして。今までは結構コンセプト的に、楽曲を生かせるフレーズをどれだけ生み出していくか、そのための引き出しを持つように意識してたんですけど、今回はそういう意味では、元から自分が持っていた、古いタンスの引き出しに閉じ込めていたようなものをちょっと開けて取り込んだっていうような感覚なんです。だから今回の作品に関してはそこまで苦労しなかったというか、もちろん楽曲ありきなんですけど、あまり研究しすぎないように心がけて、なるべく自分の素の部分、今まで自分が聴いてきたものが出るような精神状態に持っていくことを心がけていました。

――そういう意味では「サラブレッド」なんかはすごくはっきりとルーツ感が出たサウンドになっていると思うんですが、ご自身ではどうですか?

DAIKI この曲に関しては、僕がみんなと出会って、Galileo Galilei時代にサポートをやってきた中でいうと、悪い意味ではなくて、正直新しくは感じない、今までやってきたことを踏襲したような、総括みたいな感じの楽曲かなって。ファンの人もどっか懐かしい感じが多分出てくるだろうし、ルーツ感というよりも、すごくクラシックな感じがしますね。

BBHF「サラブレッド」Official Audio

雄貴 なんか今って、サム・フェンダーとか、そんなに新しくないけど、ジェームス・ベイとかもそうだし、ギターロックみたいなのってちょっとアップデートじゃないけど、形を変えてきているのかなと思っていて。ザ・キラーズとかもそうですけど、ブルース・スプリングスティーン的になってきてるというか。僕自身はそういうのが元々すごく好きなので、そういう要素を「サラブレッド」はすごく強く出しています。でもそれってむしろ僕の中で一貫してあるものなので、DAIKIくんが言ってくれてることはすごくわかるし、DAIKIくんはたぶんそう思ってるんだろうなって思っていました。あと、そんな要素の中に、僕はBUMP OF CHICKENが小学6年生の頃から好きなんですけど、バンプの「オンリーロンリーグローリー」にギターをかき鳴らすサウンドがあって。

――ああ、はい。

雄貴 そういう、僕が好きだったBUMP OF CHICKEN感というのはいろいろな曲に取り入れています。「シェイク」とかにもすごくあると思うし。「サラブレッド」もそういう面白さはあると思います。

今後BBHFっていうバンドを続けていく上で、すごく大事な作品になったなと思います。

――そうした作品の結末になるのが「バックファイア」という曲なんですが、この曲はどういうふうに生まれてきたんですか?

雄貴 「バックファイア」は「ホームラン」よりも前にあった曲の1つで。「黒い翼の間を」と同タイミングぐらいからプロトタイプみたいなやつがあったんです。その頃からかサビの歌詞も変わっていなくて。そこから作っていくなかで、すごく大事な曲になりそうだからタイミングが来た時にリリースしようっていうようなことを、僕自身もちょっと思ってたし、レーベルの人からも言われて。だからといって温めていたわけでもなく、ほっといてた曲なんですよ。それを今回入れたっていう感じなんですけど、だからこの曲だけは死について歌っていなくて。直接的に死っていう言葉は使っていないんですよね。今回収録するタイミングで後から追加することもできたんですけどしなかった。そういう意味でもこのEPの中でもすごく重要な曲なんじゃないかなって思います。

和樹 アレンジ的には引っかけるようなフレーズ、突っかかるようなアレンジメントみたいなものを一切入れずに、省いて作った曲で。曲作りの段階でも基本的に「もっと面白くしよう」みたいな思いが一切なかった。普通に作って、普通にできあがって「すごくいい曲になったね」っていう楽曲だったので、そのぶん生み出した感が強いですね。自分にすごい顔の似てる子どもができたみたいな(笑)。自分っぽいというか、みんなっぽいと思う。

BBHF「バックファイア」MV

――なるほど。こねくり回すことなく、わりとそのまま出ちゃっているという。

DAIKI 今作の中でも特にシンプルな曲だと思います。僕個人的には、Dメロに当たる部分、「あぁ今日は君に会えてよかった」っていうパートが自分の中ではサビだと思ってるんですけど、ああいうDメロをつけることがすごく新鮮でした。

BBHF『SUPER MOON TOUR 2021』2021年12月10日 東京・Zepp DiverCityより

――うん。それってつまり、このEPに至った雄貴さんのモードを形としても象徴している気がします。歌詞に直接的に死という言葉は出てこないけど、ここにも何か終わっていくものがあって、でも続いていくものもあって。そういう曲が「どこまでいける」という言葉で終わるのがすごく希望的でいいなと思います。

雄貴 はい。急に元ベースの佐孝(仁司)くんの話をしちゃうんですけど、お互いが持ってる、お互いの思い出の大事さが違うということで。俺はこれをすごく大事にしてたのに、彼にとってはそれが案外大事じゃなかったり、覚えてなかったり。やっぱり思い出って、その人が持っているものを絶対に共有はできないんだなって。そういう思いもあってこの楽曲は書いたんです。ミュージックビデオもそうですけど、地元の稚内での思い出、僕が出会ってきた人たちだったり、稚内に残ってる人たちだったり、いつの間にかいなくなってる人たちだったり、そういう人たちとのこともこの曲には込められてるんで。すごくパーソナルな曲になったなと思います。

――わかりました。改めてこの『13』という作品は、BBHFにとってどんなものになったと思いますか?

DAIKI 今後BBHFっていうバンドを続けていく上で、すごく大事な作品になったなと思います。ここ最近、メンバーが抜けたり、コロナでいろんなことが思うようにいかなかったりとか、そういう状況下で、思うようにいかないパーソナルな部分だったりとか、そういう感情をすごく乗っけられた感じが今まで以上にするんです。個人的な感情を入れ込めた感じがします。

尾崎和樹(Ds)

和樹 いい意味で、わかりやすい作品だと思うんです。わかりやすい曲しか入ってないEPだなって思うので。たとえば「サラブレッド」をいいと思ってくれた人は他の曲も全部いいと思ってくれるだろうし、「バックファイア」を聴いていいと思ってくれた人は、他の曲でも何かを感じてくれると思うし。そういうシンプルかつ一貫性のある作品になってるんじゃないのかなと思います。ぜひEPとして全曲通して聴いてほしいなって。

雄貴 この作品は僕らにとっての大きなターニングポイントになるなと思っています。次は全然違うことをやりたいなっていう、1つピリオドを打てたっていう感覚がありますね。そういう意味でこの後に繋がる作品になるんじゃないかなって。すごく満足のいく作品になったからこそ、ここでピリオドを打てる。今すごく新しい気持ちになれています。死というか終わりを扱った作品なので、もうすぐ始まるツアーでもそれをちゃんと体現したいなと思います。ちゃんとピリオドを打った上で、BBHFの「次」を見せられるライブができればと思っています。

Text:小川智宏 Photo:大辻隆広 LIVE Photo:鳥居洋介

<ライブ情報>
BBHF “LIVE LOVE LIFE” TOUR 2022

6月10日(金) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:30 / START 19:00

6月12日(日) 大阪・なんばHatch
OPEN 17:15 / START 18:00

6月18日(土) 宮城・仙台darwin
OPEN 18:00 / START 18:30

6月25日(土) 福岡・DRUM LOGOS
OPEN 18:00 / START 18:30

6月26日(日) 広島・LIVE VANQUISH
OPEN 17:30 / START 18:00

7月1日(金) 東京・Zepp Haneda
OPEN 18:00 / START 19:00

7月9日(土) 北海道・札幌 PENNY LANE 24
OPEN 18:00 / START 18:30

チケット料金:5,000円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要

チケット購入リンク:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2296881

<リリース情報>
BBHF Digital EP『13』

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BBHF『13』ジャケット

【収録曲】
01. ホームラン [EP version]
02. サラブレッド
03. 死神
04. シェイク
05. どうなるのかな
06. バックファイア

BBHF『13』トレーラー映像

配信リンク:
https://lnk.to/BBHF_13AH

BBHF オフィシャルサイト:
https://birdbearhareandfish.com/

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