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BEV時代へのステップ 着実に

今最も旬なボルボといえばブランド初のBEV、クロスオーバーモデルのC40リチャージだろう。

【画像】PHEV同時に登場 ボルボV60/V90リチャージ・プラグインハイブリッドを比較【詳しく見る】 全139枚

ボルボは他に先駆けて2030年までにすべてのラインナップをBEVに切り替えると明言。

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ボルボV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション    宮澤佳久

そこに至る中間目標として、2025年までに販売車両の半数をBEVにする(日本市場は40%)ということも発表している。

C40リチャージはその目標を達成するための具体的な提案なのである。

だが北欧のようにBEVにスムーズに移行しはじめている国がある一方、日本のように充電インフラの整備が遅れている例も少なくない。

世界を見渡せば「明日から急にBEVオンリーの生活がはじまっても大丈夫!」というカスタマーはそう多くはないはずだ。

ボルボ自身もその点をよく理解しており、カスタマーの意識と自らが掲げた目標に折り合いをつける作業を丁寧に進めている。

そのはじまりはXC90のトップグレードとして登場したT8ツインエンジンだった。

前輪をガソリンエンジンと電気モーター(CISG=クランク・インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)で、後輪を電気モーターで駆動するAWDモデルである。

今回試乗したV60リチャージは、このT8システムの流れをくんだパワートレインが搭載されたV60のビッグマイナーチェンジ版。

これまで以上にBEVに近づいたPHEVモデルなのである。

そこには「まだBEVには踏み込めない」というカスタマーにBEVのメリットを感じさせつつ、デメリットを生じさせない、丁寧なアプローチが含まれていたのである。

EV性能アップで「電気」が主役に

ビッグマイナーチェンジを経たV60シリーズのラインナップはB4とB5の48Vマイルドハイブリッドのモデルと、T6エンジンを搭載したプラグインハイブリッドハイブリッドAWDモデルに大別できる。

今回試乗したモデルはV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション

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ボルボV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション    宮澤佳久

以前のV60の頂点はT8だったが、これからはT6がトップモデルとなる。ツインエンジンという名称が廃されたT6は内容も変更されている。

2Lガソリンエンジンの最高出力は253psのままだが、スーパーチャージャーが廃されている。

スーパーチャージャーが担っていた低回転域のトルクを46psから71psに増強されたフロントのCISGモーターが補う。

リアモーターも87psから145psに増強された結果、システム最高出力も以前の340psから350psに増強されている。

また駆動用のリチウムイオンバッテリーの容量も10.8kWhから18.8kwhに増えており、EV走行による距離も以前の2倍近い91kmまで増えている。

今回のビッグマイナーチェンジでEVパートの性能が大幅にアップしたことで、平日のお買い物や駅への送り迎えはEV走行のみでこなし、休日の遠出はハイブリッドで、というPHEV本来の使い方の幅が広がったことになる。

ボルボの広報氏いわく「以前はガソリン車にモーターが付いている感じでしたが、今回はBEVにガソリンエンジンが付いている感じ」とのこと。その実力やいかに。

BEV前の肩慣らしの1台?

今回は箱根から都内までの100kmほどの距離を試乗した。

スタートボタンを押してクルマ(エンジンではない!)を始動させ、走りはじめる。

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ボルボV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション    宮澤佳久

ドライブモードは「ハイブリッド」だが、スロットルを強く踏まない限りエンジンは始動しない。

芦ノ湖に抜ける山道もひたひたとEV走行のまま静かに上っていく。

今回はV60の前にV90のT8にも試乗している。

遮音がしっかり効いたV90に比べた場合、V60はわずかなロードノイズと振動が感じられる点は以前とそれほど変わらない。

もちろんボディが引き締まった感覚と、キビキビとしたハンドリングというV60のキャラクターも健在だ。

芦ノ湖から大観山への山道でスロットルを強く踏み込むと、思ったより静かにガソリンエンジンが介入しはじめた。

車重が2tをこえているので350psというより、どっしりとしたプレミアム感と、AWDのスタビリティの高さの方が印象的に感じられた。

そして何よりハイブリッドシステムのシームレスな捌きが以前のT6モデルより格段に賢くなっていることも確認できた。

これから7年ほどの時間をかけてBEVの時代に向けた肩慣らしをする。

EV性能が強化されたV60リチャージT6は、そんな使い方に最適な1台といえる。

ボルボV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプションのスペック

価格:824万円
全長:4760mm
全幅:1850mm
全高:1435mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:2345kg
パワートレイン:直列4気筒1968cc+モーター
最高出力:253ps/5500rpm
最大トルク:35.7kg-m/2500-5000rpm
最高出力(モーター):52kW(71ps)/3000-4000rpm(前)+107kW(145ps)/3280-15900rpm(後)
最大トルク(モーター):16.8kg-m/0-3000rpm(前)+31.5kg-m/0-3280rpm(後)
充電電力使用時走行距離:91km
ギアボックス:電子制御前進8速オートマティック

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ボルボV60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション    宮澤佳久

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