映画「漆黒天 -終の語り-」の完成披露舞台挨拶が5月31日に都内で開催。主演の荒木宏文をはじめ、小宮有紗松本寛也、梅津瑞樹、小澤雄太、鈴木裕樹坂本浩一監督の7名が登壇した。

【写真】「漆黒天–終の語り–」でヒロインを務める小宮有紗

■映画「漆黒天 -終の語り-」

ひとつの作品世界で映画と演劇の2作品を公開&上演するプロジェクト「東映ムビ×ステ」の第3弾として制作。主人公は記憶を失った流浪の男・名無し(荒木宏文)。記憶を追い求める中、彼に迫りくる数々の刺客たち。一体、彼はなぜ襲われるのか…。謎多き男をめぐるハードなミステリー時代劇。

記憶喪失の主人公は「これほど簡単な役はない!」

まず本作のオファーを受けた際の感想を聞かれた主演の荒木は「2作仕事が決まった!映画と舞台が決まった!」と正直な笑顔で答える。ムビ×ステ第3弾となる今作は“脚本家とキャストの掛け算”がコンセプトとのことで、「舞台 刀剣乱舞」などで知られる末満健一氏の脚本については「難しいなあー!と思いましたね」と答えると、松本も「漢字が読めなかった」、小宮も「人の名前が難しくないですか?」と同調し、冒頭から会場は笑いにあふれた。

今回荒木が演じるのは記憶をなくした男・名無し記憶喪失のキャラクターを演じる難しさについて聞かれた荒木は、「これほど簡単な役はない!だって覚えてないんだから、ゼロスタートでいいわけじゃないですか。記憶があると、その人の歴史を作らなきゃいけないわけですよ、役者というのはね。いつ何グラムで生まれて、お乳で育ったのか、粉ミルクで育ったのか、乳母さんで育ったのか…その歴史を全部作ったうえで、その役を演じなきゃいけないわけです。でも記憶がない、覚えてないんだからそれを作らなくてもいい。今目の前にある情報が頭の中に残っている記憶ですとなったら、ゼロスタートでいいわけですから、こんなに楽な役はない!」と持論を展開。鈴木も「これがうちの主演ですよ!」、梅津も「おおむねその通りなんではないかと」と同調し、会場からは拍手が起きた。

■時代劇の本場・太秦で撮影

本作の撮影は時代劇の本場である太秦の東映京都撮影所で行われた。太秦での撮影の感想を聞かれた小宮は、最初「どういうことですか?」と戸惑いを見せ、「思ってなかったことを振られたから何も考えてなかった…」と照れ笑いしつつも、松本から「カツラかぶったりとかさ…」と助け舟を出され「私、地毛が長くて、全部地毛だったんですよ。地毛を結髪さんに毎日結っていただいて、着物を着せていただいて、それだけで役に入れる感じで、ありがたかったです」と撮影の裏話を語った。

小澤も太秦での撮影は初めてとのことで「歴史があってすごく厳しい撮影所だと聞いてましてね、役者の登竜門だって話なんかもあるんですよ」と軽妙に切り出し、司会から「落語家さんみたいですね(笑)」との評も受けつつ「菓子折りを持っていかないと人として扱われないから気をつけて、なんて脅されて行ったんですけど…すごい優しい方たちで、やりやすい現場で、なおかつ監督がリードして撮影をバーッとやっていただけるんで、本当にスムーズな撮影だったなと思っております」と満足げに語った。

■梅津の真顔ボケに会場爆笑

アクションシーンに定評のある坂本監督。殺陣のシーンの見どころを聞かれた梅津は「冒頭、太秦に越してきた百姓が、米をめぐって無手で殴り合うというシーンがあるんですけど、そこのアクションが一番つらかったですね、日差しも強かったし…」と真顔でボケを繰り出し、登壇者も思わず爆笑。

ムビ×ステにほぼ皆勤賞で出演しているという松本は、太秦について「そういや、見慣れた景色だなとしか思わなかったな…」と振り返りつつ、殺陣は前日に考えているのか、当日に考えているのかを坂本監督に逆質問。今回は前日に考えて、当日確認して調整していったとのことで、「今回は本当に皆さん素晴らしかったです」と坂本監督もアクションに太鼓判を押した。

■「ゲキレンジャー」以来、15年ぶりの共演に喜び

鈴木と荒木は、芝居では2007年の「獣拳戦隊ゲキレンジャー」以来15年ぶりの共演。鈴木は「嬉しかったですよ。気合も入ったし。すっごい肩の力入ってると思います、俺。荒木ともそうですけど、この作品を作る上でプロデューサーの皆さんですとか、ゲキレンジャーの頃からお世話になっている皆さんと一緒にものづくりができたというのは、本当に幸せなことだったと思います」と喜びを語り、荒木も「嬉しかったよね、再会って、続けてないとできないから」と共感した。

「アクションも本当にすごいんで、ボロボロでやってましたから、彼。この作品は99%くらい荒木の映画と言っていいと思うんですけど…」(鈴木)「全然余裕でやってました」(荒木)「ボロボロでやってましたよ」「余裕です」「湿布貼れって言っても貼らないんですよ」「あの時代に湿布ないんだもん」という掛け合いに、小澤から「お2人、仲良いですね(笑)」とコメントも飛んだ。

■荒木「本当に幸せな現場でした」

8月には映画の前日譚となる舞台版の上演も予定されている。舞台版への意気込みを聞かれた梅津は「おそらく映画終盤の方で投獄された荒木さんを、僕らが打ちこわしをしながら助けに行くという話になると思うんですけど…」とまた真顔でボケつつ、「アクションも盛りだくさんになると思うので、楽しみにしていただければと思います」と語った。荒木も「舞台は映画のようにカット割りがないので、最初から最後までバテないように体力を作って稽古に挑みたいと思います」と心構えを述べた。

最後に荒木が「僕らが芝居に集中できる環境を全力で整えてくれる、そんなプロの方に囲まれながら、僕たちは芝居のことだけを考えてこの作品を撮ることができました。本当に幸せな現場でした。ぜひこの作品を楽しんでください!」と締め、会見は終了した。

映画「漆黒天–終の語り–」完成披露舞台挨拶の様子/(C)2022 movie-st