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都内の瀟洒な街の一角に、黒のロング丈のコートに黒のパンツ姿の女性が。女優の鈴木京香(54)だ。5月下旬の夕方、京香は横にいる女性と談笑しながら、颯爽と車へ乗り込んでいった。

現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)で丹後局を好演している京香。冒頭のシーンで足取りが軽かった京香だが、別の理由もあるようでーー。

「実は京香さんは昨年6月に都心の超一等地にある家を購入したんです。5年ほど前に京香さんは高級マンションを購入していますが、2年前に売却。現在は賃貸の物件に住んでいるといいます。今回選んだ物件は、芸術好きの京香さんらしく有名な建築家が造った歴史的価値の高いものなんです」(京香の知人)

WEBサイト「Casa BRUTUS」で5月4日に配信されたインタビューで、京香はこう語っていた。

《解体の可能性さえあった《ヴィラ・クゥクゥ》をご縁あって引き取らせていただき、竣工当時の姿にできるだけ戻すよう、修復工事を進めている最中です》

京香の協力により取り壊しを免れたというヴィラ・クゥクゥは、世界的に有名なスイス出身の建築家ル・コルビュジエの弟子で、近代建築を日本に広めた吉阪隆正氏が設計し、’57年に建てられた住宅だ。果たして、どのような建物なのか?

一級建築士事務所「サイト」の齊藤祐子さんはこう説明する。

「完成当時、日本にはまだコンクリートで造られる住居がほとんどありませんでした。ヴィラ・クゥクゥコンクリートで造られた初めての自由な造形の住宅といえると思います。

またところどころ師であるル・コルビュジエの影響を感じさせる建築物でもあり、歴史的・文化的な価値が非常に高い住宅です。これまでの所有者さんも丁寧に手入れをしながら住まわれてきました」

京香は以前のインタビューで美術館が大好きだと語っていた。

《これ以上近寄っちゃいけないという距離はやっぱりありますけど、他の方の邪魔にならない程度に近づいて細部を見たいし、何歩か下がって全体も見たいと思うし、その絵を見ている人の雰囲気込みで眺めるのも好きです》(『クロワッサン』’16年10月10日号)

そんな彼女だけに、アートとともに生活してみたいと考えているのだろう。

■「遺産的建築をちゃんと残さなければ」

今回のヴィラ・クゥクゥ購入に、どれほどの費用がかかったのか。不動産関係者はこう話す。

「都内の超一等地にある約60坪の豪邸ですから、土地だけでも約3億円はくだらないでしょう」

建物としての資産価値について、ヴィラ・クゥクゥ継承の窓口となった「住宅遺産トラスト」の担当者は説明する。

「一般的な住宅とは異なり、歴史的建造物ですから、美術品と同じで価格に明確な基準はありません。ただ都心の一等地にあり、木造ではなく移築もできませんので、鈴木さんが引きとってくださらなければ、おそらく更地で取引されていたことでしょう。

鈴木さんは、フランス東部にあるル・コルビュジエの手がけたロンシャン礼拝堂も実際に訪問されていて、ヴィラ・クゥクゥを最初に見学された時すぐに『ロンシャンを思い出します』とおっしゃられていました。このように建築や建築家のことを熱心に学ばれている方です。日本の建築関係者は皆、鈴木さんにとても感謝していると思います」

前出の「Casa BRUTUS」のインタビューで、《この素晴らしい遺産的建築をちゃんとした形で残さなければと、いま責任も感じています》と語っている京香。

改修には、さらにどれほどのお金がかかるのか。前出の『住宅遺産トラスト』によれば、

「60年以上前の建物ですので、設備を含め、丁寧に手を入れなおさなければなりません。鈴木さんは、修繕に際し、専門家と共にできるだけオリジナルの状態へと細かく調べられて取り組まれています。大変なご負担がかかることです」

■「自分が持っているものに感謝したい」

私財をなげうってでも、文化遺産の保全に取り組む京香。その陰で、ある青写真を描いているという。

「改修工事を終えたら、恋人の長谷川博己さん(45)とときどき過ごすことも考えているのではないでしょうか」(前出・京香の知人)

実は長谷川の父親は、’19年4月に亡くなった建築評論家の長谷川堯さん(享年81)だ。

「堯さんは大学時代の卒業論文でル・コルビュジエについて書いたといいます。また大学教授になってからも講義で、ル・コルビュジエを取り上げることがありました。そんな“縁”もあり、ヴィラ・クゥクゥは2人にとっても特別な意味を持つ建物です。竣工当時の状態に戻すため、京香さんは長谷川さんと一緒にル・コルビュジエや、吉阪先生について勉強することもあるといいます」(前出・京香の知人)

長谷川と改修を楽しんでいる京香は、今年2月「MYLOHAS」のインタビューで、

《自分が持っているものに感謝したいという気持ちが、なんかこう、湧き上がってきはじめたんです。自己愛とは違うと思うのですが、自分が愛おしいというか、自分にあるもののなかで最大限の努力をしていければいいんだというふうに考えが変わって、自分のことをまんべんなく大切に思えるんです》

最大限の努力で継承したグランメゾン(大きな家)を改修して後世に残すーー。女優業に加え、それが今の彼女のもう一つの責務だと考えているようだ。