6月3日(金)、映画『冬薔薇(ふゆそうび)』の初日舞台挨拶が東京・新宿ピカデリーにて開催され、主演の伊藤健太郎と阪本順治監督が上映前舞台挨拶に登壇した。

『冬薔薇』は、阪本順治監督がオリジナル脚本で描く最新作。主人公の青年・渡口淳を、本作が2年ぶりの映画出演となる伊藤健太郎が演じる。なお、阪本監督は伊藤をイメージして脚本を当て書き。そのほか、キャストには小林薫、余貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙、笠松伴俳優・伊藤健太郎が“芝居を続けること”への覚悟と意気込みを語る 映画『冬薔薇』インタビュー&メイキング映像を解禁助、伊武雅刀、石橋蓮司らが名を連ねている。物語の舞台は、ある港町。渡口淳(伊藤健太郎)は専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きていた。両親は埋立て用の土砂をガット船と呼ばれる船で運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ませながら日々を過ごしている。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らない人物のものだった。

 
 

舞台挨拶に登壇した伊藤は、主演映画の念願の封切りに「昨日の夜からドキドキ。映画の初日ってこんなにも愛おしいものなのかと感じています」としみじみ。伊藤の両親も完成披露上映会で本作を鑑賞したそうで、「大感動してくれたので、恩返しができたのかな?と思っています。父親が帰りの道で躓いたらしくてそれを心配して『大丈夫?』と連絡したら『俺のことはいい。自分のことを気遣え』と小林薫さんの劇中のセリフを言ってきて『何を言っているのかな?』と思ったけれど」と嬉しそうに明かしていた。

伊藤主演を想定したオリジナル脚本を執筆した阪本監督は、打ち合わせの初対面時を振り返り、「映画を撮る以上お互いに仲間意識を持たなければいけないので濃厚な2時間を過ごしました」と、深く語り合ったことを明かす。その内容について、伊藤は「そこでの話はお互いに墓場まで持って行きましょうと、最初に約束を交わしました」「すべてをさらけ出しても大丈夫な方だと早い段階で感じたので、監督にはすべてを話しました」と、阪本監督に寄せた全幅の信頼について語った。

そんな伊藤について、阪本監督は「気持ちは強いけれど、心はガラス板みたいな気がして。何かの拍子にバキッと割れそう。大きな声で笑うときもあるけれど、それが寂しく聞こえる時もある」と分析。さらに「気持ちは強いけれど、胃腸が弱い。謎の胃痛に襲われる時がある。この前の完成披露舞台挨拶の後にも謎の腹痛でしゃがみ込んでいた。それほどの感慨と緊迫感がそうさせたのだと思う」と、当時の伊藤の心境を慮る。当の伊藤は「今もお腹が痛い!何とかギリギリのところで耐えています!前回と同じような緊張というか、気持ちは高まっています」と明かした。

左から、伊藤健太郎、阪本順治監督

左から、伊藤健太郎、阪本順治監督

舞台挨拶終盤には、伊藤が「この映画で監督にはどん底から救い上げていただきました」と、阪本監督に薔薇の花束を贈呈。さらにサプライズで感謝の手紙を朗読した。そして、伊藤は「『冬薔薇』は僕にとって宝物です。この映画は僕にとって自分の第二章の始まりだと思っています。阪本監督と出会い、この先もずっと役者として生きていくと強く思いました。そして芝居が大好きだと改めて強く思いました」などと、目を赤らめながら感謝。加えて、「次はボクシング映画でご一緒したいです!」と阪本監督との再タッグへの期待を口にしていた。これに、阪本監督は「伊藤健太郎という人と仕事をするという機会がなければ、このような物語は一生書いていなかったはず。その意味では、僕にこの物語を綴らせてくれた伊藤君に感謝です」と喜び、受け取った花束を伊藤にバトンタッチ。伊藤は、「薔薇が返ってきました!」とはにかみながらも、「これから先も素敵なものを届けることが自分の使命。素敵なものを届けられる、現場に居続けることのできる役者になっていきたい」と、真剣なまなざしで宣言していた。

左から、伊藤健太郎、阪本順治監督

左から、伊藤健太郎、阪本順治監督

『冬薔薇』は公開中。

伊藤健太郎