1979年に放送されたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第15話を新たに映像化した『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(公開中)。残敵掃討任務で“帰らずの島”と呼ばれる無人島を訪れたアムロ(声:古谷徹)は1機のザクと遭遇し、戦闘の末にガンダムを失ってしまう。そのまま気絶し、目覚めた彼が見たのは、島にいるはずのない20人の子どもたちと元ジオン公国軍の脱走兵ククルス・ドアン(声:武内駿輔)だった。ファンの間で“伝説のエピソード”として語り継がれてきた物語が、「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザイン・アニメーションディレクター、安彦良和監督の手によって劇場作品として現代に甦る。

【写真を見る】ガンダムとドアン専用ザクによる、大迫力の戦闘シーンも!超詳細に描き込まれた642Pにおよぶ絵コンテ集

現在、全国の劇場で公開中の本作だが、同時にBlu-rayも発売開始。しかも劇場での限定販売で、原画集や絵コンテ集、描き下ろし収納BOXといったファン必携の特典が詰まった【劇場限定版】もラインナップされている。今回、この限定版Blu-rayをいち早くゲットしたので、気になるその内容を文字通りひも解いていきたい。

ククルス・ドアンアムロが一枚画で描かれた、豪華な収納BOX

劇場作品1本の特典としては豪華すぎるボリュームということもあり、タイトルが記された特製の段ボールケースに厳重に梱包されている。まるで宝箱を手にしたような気持ちで蓋を開けてみると、まず目に飛び込んでくるのが、本作のもう一人の主人公ともいえるククルス・ドアンが大きくデザインされた収納BOXだ。

この収納BOXは本作のキャラクターデザインを務めたことぶきつかさとCGアニメーションスタジオのYAMATOWORKSによる描き下ろし。正面にドアン専用ザクや子どもたちをバックに強い意志を宿した表情のドアン、裏面にはその“一人の戦士”としてのドアンの背中を見つめるアムロが、子どもたちやガンダムと一緒に並んでいる姿を一枚画でデザインしている。

安彦良和監督描き下ろし!重厚感が漂うスリーブケースのイラスト

収納BOXから中身を取り出してみよう。本編ディスクが入ったスリーブケースに特典ディスクのデジジャケット、絵コンテ集、特製原画集がみっちりと収まっている。スリーブケースは安彦監督が自ら描き下ろしたもので、白のランニングにハーフパンツジオン軍の軍帽を被った出で立ちのアムロが、崖の上に立っているところをガンダムやザクと共にデザイン。油絵のような色味の濃さが印象的で、大勢の戦災孤児を生みだした戦争の悲惨さ、シリアスさを感じさせる重厚なものになっている。

ちなみに、本編ディスクのケースには16Pの特製ブックレットも封入。イントロダクションやストーリー、劇中に登場する主なキャラクター&メカニックの紹介が記載されている。また、作品を完成させた後の安彦監督へのインタビューも収録。「ククルス・ドアンの島」を現代に映像化した意味、新たに加えられた設定の意図などが語られているので、作品への理解を深めるためにも鑑賞後にぜひ読んでみてほしい。

■臨場感がハンパない…ドアンとサザンクロス隊の戦闘シーンが描かれたデジジャケット

一方のデジジャケットは、総作画監督を務めた田村篤とYAMATOWORKSによる描き下ろしで、劇中シーンをイメージしたものになっている。表面にはビーム・サーベルを構えるガンダムをバックに、コックピットに乗り込むアムロが。裏面には、ドアンが搭乗するザクと、彼がかつて率いていたモビルスーツ部隊、サザンクロス隊の高機動型ザクが、火花を散らしながら激しく戦う様子が描かれている。ザク2機からは、コックピットにいるドアンと彼のあとに隊長になったエグバ・アトラー(声:宮内敦士)も抜きで配置されるなど、このイラストだけでも戦闘シーンの臨場感が伝わってくる。

特典ディスクは、服部隆之による劇伴のオリジナルサウンドトラックCDと特典Blu-rayの2枚。Blu-rayには、今年の3月9日、つまり“ザクの日”に開催された「『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島ザクの日スペシャル会見」の模様が収録されている。このイベントにはアムロ役の古谷、ドアン役の武内、安彦監督の3名が登壇。本作の見どころや古谷と武内が語るそれぞれの役への想いがわかるほか、原作の第15話について、様々な事情により作画に携わることができなかった安彦監督が「観返したくなかった(笑)」と正直な気持ちを吐露するレアな場面も。このほか、シナリオデジタルアーカイブ第6稿(決定稿)の静止画像もあり、シナリオと絵コンテでの変更点や、安彦監督ならではの作家性など、テキストベースで確認することができる。

■いつまでもページをめくりたくなる、642Pにおよぶ絵コンテ

劇場限定版Blu-rayの推しアイテムといえるのが、642Pにおよぶ全編の絵コンテ集と48Pの特製原画集だ。絵コンテアニメーターが原画を描く際の設計図になるもので、必要な要素が描き込まれていればある程度ざっくりしていても大丈夫というイメージ。しかし、本作ではこの絵コンテの段階からキャラクターやメカニックが丁寧に描かれており、その詳細さに驚かされる。

表紙には、ガンダムドアン専用ザクとの最初の戦闘シーンがあしらわれ、ヒートホークを振りかざすザクがかっこいい。こういった戦闘シーンはもちろん、保護されたアムロがドアンや子どもたちと交流する日常描写からも生き生きとした登場人物たちの息づかいが感じられ、作品にかける妥協のない姿勢に感服させられる。いつまでもパラパラとページをめくりたくなる代物だ。

■原画一枚一枚へのこだわりが伝わってくる特製原画集

原画集の表紙には、戦闘の末に右腕を落とし、片膝をつくボロボロになったドアン専用ザクの原画をレイアウト。損傷し剝がれた装甲や使い込まれた埃っぽさも見事に表現され、幾多の戦闘をくぐり抜けたことを暗示させている。

中身も濃密で特に注目したいのが、安彦監督が担当、もしくは修正指示をしたシーンの原画で構成される前半の16P。ピックアップした原画それぞれのシーンに該当する絵コンテや完成した場面カットが並べられているほか、キャラクターの心情を解説したテキストも掲載されている。例えば、最初の2~3Pに掲載されている「ドアンの真意にショックを受けるアムロ」は、島の電気を復旧させたアムロが、その行動をドアンに労ってもらえると思ったところ、彼の思わぬ言葉に驚き、戸惑いを見せるシーン。一連のアムロの心情を表現するにあたり、目線や表情のどのようなところに気を配ったかも詳細に記されており、アニメーターがどこにこだわって描いているか、またキャラクターにリアリティある芝居をさせようという意図を感じることができる。

安彦監督をはじめスタッフ、キャスト陣があふれる情熱を注いで完成させた『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。劇場限定版Blu-rayに収録された特典からは、そういった作品への強い想いを受け取ることができる。映画の上映期間中、数量限定発売という超レアアイテムである本パッケージ。まずは劇場で本作を鑑賞し、その後パッケージでその感動を何度も噛みしめてはいかがだろうか?

文/サンクレイオ翼

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』より劇場限定版Blu-rayの豪華特典を紹介!