航空会社の「ANA」は、その呼び方が一筋縄ではいかないエアラインといえるでしょう。たとえば「アナ」「エイ・エヌ・エー」「全日空」、便名を示すコードは「NH」…なぜなのでしょうか。

公式的には「エイ・エヌ・エー」

エアラインの名称は、会社が設定した名称の他に、世間一般に“愛称”として広く知られているもの、航空ファンの間で用いられるもの、運航上設定された名称など、1社を示すものでも、何通りかの呼び方を持つことが多いです。日本を代表するエアラインのひとつであるANAは、そのなかでもたくさんの呼び方がある会社ということができるかもしれません。

筆者は滑走路の傍らでカメラを構えて離着陸機を撮影する方々が、近づいてくるANA機に対して、次は「全日空」だとか、「アナ」だとか、いろいろな呼び方を聞いたことを記憶しています。

ANAの会社の正式名称は、日本語では全日本空輸株式会社、英語では「All Nippon Airways」 の略である「ANA(読みはエイ・エヌ・エー)」を使用しているそうです。

「アナ」という呼び方はかつてCMでも使用してされていた表現なのですが、語感を向上させる意味合いと国際的な視点から、公式的には使用しないとなった模様です。ただ、かつてを知る航空ファンなどからは「アナ」の呼び名は非公式ながら使用されているようです。

また、社名も全日空ではなく、全日本空輸に変更となりましたが、地上支援車両など管理する子会社全日空モーターサービスや、各種物販などを展開する子会社である全日空商事など、いくつかの子会社では現在でも「全日空」の名称を使用しています。

ただ実は同社の名称の不思議なところは、これだけにとどまらないのです。

空港で見る「NH●●便」…どういうこと?

旅客機の便名は、エアライン名を示すアルファベットなどと、便の数字で構成されています。前者のアルファベットは、2桁の「2レターコード」と3桁の「3レターコード」があります。前者の2レターコードは世界のエアラインが中心となって組織されているIATA(国際航空運送協会)が与えるもので、空港などの電光掲示板の表示などでよく見ることができ、旅客便の運航をスムースにするための記号でもあります。

この「NH」は、ANAの祖先となる「日本ヘリコプター輸送(通称:日ペリ)」の名称に由来します。2レターコードは「“N”ippon “H”elicopter」を略したもので、日ペリから使用され続けています。なお、3レターの場合は「ANA●●便」です。

なお、3桁のアルファベットが示すエアラインは、国際連合の下部機関であるICAO(国際民間航空機関)という政府間の調整を行う機関が発行するもの。フライトプランの提出に必要なもので、航空管制にも使用します。

ちなみに、現在のANAの旅客機の塗装デザインは、1982年からほとんど変わっていません。2色のブルーの斜めラインが後方にせり上がっていくデザインは秀逸だと思いますが、すでに40年以上経過しているとは思いませんでした。ただ、筆者はその前のレオナルド・ダ・ヴィンチヘリコプターのロゴが描かれた「モヒカン塗装」も好きです。

ただし、現行の塗装はベースデザインこそ同様ですが、実は胴体に描かれているロゴが2003年ごろから「全日空」から「ANA」に変更されています。これは、かつて国内線を主として運航していたANAが、国際線への進出を図る意図がこめられているとのことです。

※一部修正しました(6月5日10時30分)。

ANAの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。