例年、気温や湿度が高くなる6月から9月は、カンピロバクターやサルモネラ菌などの細菌による食中毒を発症する人が増加すると言われています。食中毒とみられる症状が出た場合、どのように対処すべきなのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

嘔吐や下痢の症状が強い場合は受診を

Q.例年、気温や湿度が高くなる6月から9月は、主にどのような細菌による食中毒が流行するのでしょうか。細菌の種類とその特徴、原因となる主な食品について、教えてください。

市原さん「この時期の細菌性食中毒の原因となるのは、カンピロバクターやサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌腸管出血性大腸菌などです。カンピロバクターは潜伏期間が2日間から7日間で、加熱処理が不十分な鶏肉から主に感染します。75度以上(食材中心部の温度、以下同)で1分以上加熱することで死滅します。サルモネラ菌は潜伏期間が8時間から48時間で、主に加熱処理が不十分な鶏肉や鶏卵から感染します。60度で15分以上加熱することで死滅します。

黄色ブドウ球菌は潜伏期間が30分から6時間と短く、食肉や人間の皮膚などに付着しています。菌が出す毒素によって食中毒を引き起こしますが、この毒素は熱に強く加熱しても死滅しません。多くはおにぎりや弁当などから感染します。腸管出血性大腸菌O157など)は潜伏期間が3日間から5日間で、主に焼き肉ローストビーフなどの加熱が不十分な肉から感染します。75度以上で1分以上加熱することで死滅します」

Q.食べ物を食べた後にどのような症状が出ると、細菌性食中毒の疑いがあるのでしょうか。

市原さん「細菌性の食中毒の主な症状として、嘔吐(おうと)や下痢、腹痛、発熱が挙げられます。黄色ブドウ球菌は発熱しにくかったり、腸管出血性大腸菌は血便が出たりなど、原因菌によって症状は多少変わってきます」

Q.では、夏に細菌性の食中毒とみられる症状が出た場合、どのように対処すべきなのでしょうか。

市原さん「嘔吐や下痢で体から多くの水分が失われるため、水分摂取を小まめにしましょう。しかし、嘔吐によって水分摂取が難しい場合や、激しい下痢で水分の喪失が大きい場合などは脱水症状が進行するため、内科を受診して点滴を受けるべきです。つまり、受診の目安としては、嘔吐や下痢の症状が強い場合です。倦怠(けんたい)感や動悸(どうき)、頻脈(脈拍が1分間に100以上ある場合)を伴う場合も、脱水症状が進行している可能性があるので受診しましょう」

Q.嘔吐や下痢などの症状が強い場合は受診した方がよいということですが、症状が比較的軽い場合はどうでしょうか。市販薬を飲んで様子を見てもよいのでしょうか。

市原さん「嘔吐や下痢の症状が軽度であり、水分摂取もしっかりとできるようであれば、市販薬を飲んで様子を見ても構いません。ただし、子どもや高齢者は症状が急に悪化することがあり、また、症状を訴えることが少ない場合もあるので、早めに内科を受診しましょう」

Q.夏に細菌性の食中毒を防ぐには、どのような対策が求められるのでしょうか。

市原さん「食品の温度管理をしっかりと行い、消費期限にも注意しましょう。調理の際に、生の食材を扱った包丁やまな板などは小まめに洗浄・殺菌します。また、食品はしっかりと加熱し、食事の前にはしっかりと手を洗ってください。弁当などを持ち歩く際は、保冷剤などを利用して菌の繁殖を防ぐ工夫をしましょう」

オトナンサー編集部

食中毒とみられる症状が出たらどうする?