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「政府は1日、新型コロナの水際対策緩和を発表。条件付きで入国者の検査と待機を免除し、上限を1日2万人にするなどの大幅緩和が『サル痘』の上陸を許さないか懸念されています」(全国紙記者)

この「サル痘」なる耳慣れない病気は、重症化すると天然痘のような発疹が全身に広がる感染症で、6月5日現在で欧州その他の国で780件の感染が確認されている。

岸田首相は、参院予算委員会で「情報収集に努めながら監視しつつ、対応を検討する」と述べたが、新型コロナウイルスが感染拡大の一途をたどったように、サル痘の上陸・感染拡大も時間の問題ではないのだろうか?

サル痘に詳しい岡山理科大学の森川茂教授に話を聞いた。

「もともとは’58年、天然痘のような症状がサルに見つかったことから『サル痘』と命名されました。’70年にはザイール(現コンゴ民主共和国)で初めて人から見つかり、その後は、中央・西アフリカでも流行が確認されたのです」

■平均12日間の潜伏期間後発熱や頭痛の症状が

サル痘には「コンゴ盆地型」と「西アフリカ型」の2種類があるが、コンゴ盆地型の致死率は1~10%で、人から人への感染も多い。

西アフリカ型は「軽症で死亡例が少ない」とされていたが、’17年以降のナイジェリアでの流行で「致死率が約3%と高く、人から人への感染も起きている」という。

感染するとどんな症状が出て、どういう経過をたどるのか?

「人が感染すると潜伏期間は7~21日(平均12日)。その後に発疹が出てリンパ節が腫れます。発熱、頭痛、悪寒などが出ることも。発疹は水疱(できものの中に水がたまる)や膿疱(中に膿がたまる)となり、2週間程度で痂皮(かさぶた)になって、その後自然治癒します」

この水疱、膿疱、かさぶたは、いずれも多量のウイルスを含むようで、皮膚から落ちたものや付着した衣類、枕やシーツなどに素手で触れると感染してしまうという。

今回、世界各地で感染が多数報告されだした原因は「現時点では不明です」と森川教授。だが水際対策緩和で入国者が増えるなか、日本への上陸、感染拡大の恐れはないのだろうか?

「患者との濃厚接触者がウイルスの潜伏期間内に入国すれば、国内で感染者が発生する可能性はあるといえます」

コロナのような感染爆発も?

サル痘の主な感染経路は、皮膚病変や血液・体液との接触、大量の飛沫を浴びることなどです。現段階では、飛沫感染が主体で場合によっては空気感染のリスクもある新型コロナのような急激な感染拡大はないと考えられます」

有効な治療薬として、欧米には抗ウイルス薬があるが、日本では未承認であるため、一般医薬品のようには使用できないという。

では、私たちが日常で気をつけておくべきことは?

「まずは患者や感染リスクの高い人との接触を避け、患者が身近にいる場合は濃厚接触せず、患者が触れた衣類などにも直接触れないよう、消毒・滅菌も心がけてください。接触したと思われる場合には石けんで手を洗ったり、消毒用アルコールなどで消毒しましょう」

国が前のめりに水際対策を緩和しても、私たちは「あらゆる感染症から身を守る」ため、日ごろの感染対策を継続すべきだ。