ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の新作は、KERA自身愛してやまない昭和を生きた喜劇人たちの物語。昭和30年代初頭の新宿を舞台に、総勢17名のキャストが入り乱れる群像劇だ。そこで演出も担うKERAと、KERA作品への出演は3作目となる瀬戸康史、初めての千葉雄大に、現段階での本作にかける想いを語ってもらった。

笑いがなければ演劇も続けてこられなかった

――昭和の喜劇人に対するKERAさんの想いはこれまでも度々お聞きしてきましたが、改めてKERAさんが喜劇人たちに心惹かれる理由とは?

KERA 自分がコメディを作り続けてきたそもそものきっかけが、そういう人たちへの興味だったと思うんです。やっぱり笑いが好きだし、笑いにたくさん救われてきたし、笑いがなかったらここまで演劇も続けてこられなかったと思うので。あとは父親の関係で、幼少期に喜劇人たちが偶然周りにいたってことも大きいと思いますね。

――昭和30年代初頭の喜劇人たちの群像劇とのことですが、現段階での構想は?

KERA 当初は『ドクターホフマンサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜』(19年) のような、理屈では説明出来ない、不条理な作品にしようかと考えていたんです。1幕は人間ドラマで、2幕にかけて思いもよらない展開をしていく、みたいな。でもそれはちょっと欲張り過ぎかなと。20人近い登場人物をそれぞれ着地させようと思ったら、5時間半ぐらいはかかってしまう(笑)。だから人間を描くってところだけにとどまっていても、書いていてある意味弾んでしまうところはあるだろうし、自分では普通の人間ドラマを書いているつもりでも、そうではないものになるに違いない(笑)。だったらそれでいいのかな、と思っているんです。

笑いってものの表現の幅がすごく広がっている

――瀬戸さんがKERAさん作品に参加されるのは、『陥没』(17年) 、『ドクターホフマン~』に続いて3作目ですね。

瀬戸 ほかの現場と比べても、KERAさんとは“一緒に作っている感”が強いんです。

KERA それは嬉しいな。

瀬戸 あと僕はKERAさんに感謝しかなくて。僕自身知らない扉を開けてくださいましたし、KERAさんのおかげで僕に対する周りの見方が変わったと思っていて。だからまたこうやって一緒に作品を作れるってことが、ただただ嬉しいです。

――千葉さんはKERAさん作品への参加は初ですが、上京後に初めて観た舞台が、KERAさん演出の『どん底』(08年) だったそうですね。

千葉 はい。今回この中に入れていただけるってことが、まずは本当に嬉しかったです。それと物語の舞台が昭和30年代ということで、知らないことを知れる機会をいただけたってこともありがたいなと。あと以前から「KERAさんの頭の中ってどうなっているんだろう?」と気になっていたので、KERAさんの手によって自分がどうなっていくのか。それも今から楽しみです。

――お稽古はこれからとのことですが、瀬戸さん、千葉さんはすでに2度、KERAさんのワークショップを受けられたと伺いました。

KERA 昭和に最も縁遠いであろう瀬戸くんと千葉くん、あと(伊藤)沙莉ちゃんと勝地(涼)くんに、ちょっと昭和30年代を勉強してもらいたいなと思って。岸田國士の『かんしゃく玉』を読んだり、過去の映像を見たりしました。主眼はやっぱり、稽古が始まった時点でその時代の人になってもらうこと。ただ昭和を知っているほかのキャストに比べて、どうしてもスタートが遅くなってしまう分、焦りもあると思うんです。そのために少し心に余裕を持ってもらう、そのためのワークショップですね。

瀬戸 まずはみんなで集まってなにかをやる、っていう時間がとても楽しかったです。稽古を前に、さらにワクワクした気持ちになったというか。あと改めて、笑いって進化しているんだなと感じました。例えば海外の、ニール・サイモンのジョークとかを聞いても、「これはジョークなのか?」とわからなかったりするんですが、時代は違えども、そこは同じ日本人なのでやっぱりわかる。ただレパートリーが増えているというか、笑いってものの表現の幅がすごく広がっているんだなと。それは非常に面白いなと思いました。

千葉 拝見した映像の中には、喜劇人の方たちのドキュメンタリーなどもありました。舞台上ではこんなに面白いことをやっているのに、プライベートでは実はこんな壮絶なことがあって……みたいなことも初めて知れて。そのギャップというか、一筋縄ではいかないみたいな部分は、自分が演じる上でも意識していきたいなと思っています。

瀬戸と千葉がまったく性格の異なる兄弟役に

――おふたりの役どころのイメージは?

KERA まだ全然決まっていないです。ほかのパズルを組み立てていく中でのバランスなので。ただ瀬戸くんと千葉くんは、9割方兄弟にしようと思っています。見た目が似ているふたりなので、いっそのこと兄弟っていうのも面白いかなと。しかもまったく性格の違う兄弟。もともとは瀬戸くんが兄貴かなと思っていたんですが、千葉くんが兄貴っていう線も面白いかもしれないですね。

瀬戸・千葉 (笑)。

瀬戸 千葉くんとは同い年で、顔も似ていると言われて、10年前ぐらいからお互い知ってはいました。当時はすごくキャピキャピした印象でしたが(笑)、数年前に映画で久しぶりに会った時、すごく芯が太くなった印象に変わっていて。ただガッツリお芝居をするのは、今回が初めて。千葉くんがなにを隠し持っているのか、すごくワクワクした気持ちです。

千葉 別になにも隠し持ってはいませんが……(笑)。僕も瀬戸さんとガッツリお芝居出来ることがすごく楽しみですし、KERAさんの舞台の先輩でもあるので、いろいろ見て、学ばせてもらいたいなと思っています。

取材・文=野上瑠美子
撮影=源賀津己
スタイリスト=小林洋治郎(Yolken)(瀬戸康史)、寒河江健(千葉雄大
ヘアメイク=RYO瀬戸康史)、堤 紗也香(千葉雄大)、山本絵里子(KERA)

衣裳(瀬戸康史
ジャケット:¥35,200(UNDECORATED/UNDECORATED)
パンツ:¥36,300(UNDECORATED/UNDECORATED)
シャツ:¥30,800(SEVEN BY SEVEN/Sakas PR)

【問合せ先】
UNDECORATED
153-0061
東京都目黒区中目黒1-8-1 VORT中目黒1 2F
TEL:03-3794-4037

Sakas PR
東京都渋谷区神宮前3-15-21 ヒルトップ原宿301
TEL:03-6447-2762

『世界は笑う』チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2206482

6月19日(日) 10:00よりチケット一般発売開始

左から)千葉雄大、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、瀬戸康史