映画と舞台を完全連動させるプロジェクト「ムビ×ステ」第3弾となる映画『漆黒天 -終の語り-』が6月24日に公開を迎える。本作主演を務める荒木宏文と、ヒロイン役として出演する小宮有紗。幅広い表現活動を行い実績十分の二人が、撮影現場を振り返り軽快なトークを展開した。



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「主役なんですけれど、真っ黒で大丈夫ですか?」(荒木)


本作は、記憶をなくした男が「己は何者なのか」という答えを探すためにさまよう姿を描いたミステリー時代劇。荒木は記憶をなくした男を、小宮はその男に“名無し”という名をつけ、記憶を捜す手伝いをする町娘・喜多を演じる。


――物語が進むにつれて多面的な部分が出てくる面白いキャラクターでしたが、台本を読んでどのように役柄にアプローチしていったのでしょうか?


荒木:僕は台本を読んだときに、光と影、表と裏、陰と陽のような相反するものが、どちらか一方が、正しいとか間違っているというふうに決めつけることに意義を唱えているようなメッセージを受けたんです。だから僕が演じるときには、観る側の視点によって、どちらにもとれるような表現をしようということを意識しました。


小宮:私が演じた喜多も、物語全体を通してみると、大きく見え方が変わるキャラクターだなと感じました。でも、映画を観る人は結末を知らないので、あまり全体として役柄を作るというよりは、その都度起こる出来事に喜多がどう感じているのか……という部分を大切に演じようと考えていました。あとこの作品のキャラクターにはイメージカラーみたいなものがあって、喜多は黄色だったんです。その意味で、明るいというかほんわかした感じというのも頭のなかにありました。



――キャラクターにテーマカラーがあるというのは面白いですね。荒木さんは何色だったのですが?


荒木:僕は直接言われたことはないのですが、おそらく資料などを見ていると黒ですよね(笑)。


小宮:私は衣装合わせのときに「喜多は黄色だからね」と黄色の着物を用意されたんです。富士役の小島藤子ちゃんは藤色のお着物だというのも聞きました。


荒木:僕は特別説明もなく黒い服が用意されていましたね。想像はついていましたが、同時に「主役ですよね……真っ黒で大丈夫でしょうか」というのは相談しました。でも坂本浩一監督のなかにも、しっかりとしたイメージがあったみたいです。




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――坂本監督と言えば、特撮作品などを手掛け、アクションに長けた方ですが、映像でのアクションはいかがでしたか?


荒木:最近は舞台で殺陣をすることが多かったので、映像でアクションをすることに新鮮味を感じました。舞台と映像で大きく違うのが間合い。舞台では刃を当てないというのが原則。なぜかというと刃が当たって箔が剥がれてしまうことを防ぐため。だから道具を大切にするという意味では、絶対に傷つけない方法で殺陣をするんです。


でも大スクリーンで映し出される映画の場合、どこまでリアリティある映像を見せるかという意味で、刃を当て当てざるを得ないことも出てきます。舞台人からすると、刃を当てるイコール失敗という認識があるので、なかなかストレスになるんです。最初はその作業に慣れなかったですね。


――やっていくうちに慣れましたか?


荒木:そうですね。太秦の小道具の方がとてもプロフェッショナルな方だったので、とても助けられました。どれだけ刃を当ててしまっても、次の撮影のときにはしっかり治してくださるんです。役者が芝居をしやすいようにしてくださることで、思う存分殺陣に集中できました。




現場では食べ物の話ばかり!?


――名無しと喜多は一緒のシーンも多かったですが、現場ではどんなお話をされていたのですか?


荒木:感染対策もあり雑談する機会が減って。その中でも芝居に関する話はほとんどしてないよね。


小宮:そうですね。全然作品に関係ない話ばっかりしていましたね。ほとんどが食べ物の話。


荒木:そうそう、結構偏食なんだよね。


小宮:偏食ではないですよ(笑)。ただ撮影のときはスナック菓子ばかり食べていました。


荒木:すっぱいポテチみたいなのずっと食べていたよね。すごいなって思っていました。


小宮:朝半分食べて夜に半分という感じにしていました。さすがに朝晩で2袋は体に良くないかなと思って。結構ハンバーガーとかポテチとかラーメンとか、ガッツリしたものが好きなんです。でも食べ過ぎるとあまり良くないかなと思って、我慢しています。


荒木:良かった。一応セーブはしていたんだね。ずっとポテチ食べ続けているのかと思った。


小宮:本当は毎日お腹いっぱい食べたいのですが、さすがに体に良くないかなと思って、我慢していました。


荒木:まあこれは一例ですが、それぐらいお芝居とは関係ない話をしていたと思います。


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――あまり現場ではお芝居について話をしないスタンスなのですか?


荒木:そう決め込んでいるわけではないのですが、リハーサルやカメラテストのとき、お芝居で何を伝えようとしているのかが、とても分かりすい方たちだったので、あえて話し合って計画を立てるより、本番でしっかり相手の芝居をキャッチしてこぼさないようにしようという意識が強かったです。自然と現場では、お芝居の話にはならなかったですね。



荒木の第一印象「お顔が美しい方だな」(小宮)


――共演された印象は?


荒木:小宮さんはとても器用な方だなという印象でした。それでいて肝が据わって、ブレない芯を持っている。演じるキャラクターに説得力があるというか「喜多ってこういう人なんだろうな」と自然に感じられました。だからこそセリフを発するのを受けるだけで、僕の役も成立してしまう。すごい方だなと思いました。


小宮:私は初めてお会いしたとき「お顔が美しい方だな」って思いました。


荒木:えー。でも初めてお会いしたときって泥だらけの顔じゃなかった?


小宮:泥だらけでも美しいお顔だなって(笑)。もちろんお芝居も殺陣も素晴らしい方で、荒木さんの側に行くだけで大丈夫だなと思っていたので、あまり深くは考えなかったです。


荒木:でも喜多はヒロインだから、笑顔や涙など、求められることが多かったよね。


小宮:確かにおしゃべりなキャラクターは喜多ぐらいだったので、私がずっと喋っている感じでしたね。でも周りが「……」という台本だったので、なかなか寂しかったです(笑)。


荒木:涙のシーンとかも、長回しで何パターンも撮るんだけれど、毎回涙を流していたよね。精神的にも技術的にも大変だったと思うけれど、しっかりお芝居していてすごいなと思いました。


芝居だけではなく、トークでもぴったりと息の合った二人が織りなすミステリアスでドラマチックな時代劇――。ストーリーと共に、美しいビジュアルも是非堪能してほしい。





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取材・文:磯部正和

写真:稲澤朝博


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