主演を務めた『佐々木、イン、マイマイン』をはじめ、『his』や『くれなずめ』『空白』、大河ドラマ青天を衝け』など、近年特に活躍が目覚ましい藤原季節さん(29)。現在は、「劇団た組」を主宰する脚本家・演出家の加藤拓也さんが映画初監督を務め、あるカップルの関係を見つめた『わたしはおとな』が公開中です。

 妊娠した大学生の恋人・優実(木竜麻生)から、子どもの父親が自分かどうか分からないと告白される直哉を演じた藤原さんが、「臆病さを乗り越えて、ちゃんと人と向き合う」ことや、「ちゃんと傷つくこと」の大切さを、率直に語りました。

◆発せられるセリフに隠された意味

――以前、「作品の登場人物が日常の地続きであって欲しい」とお話しされていました。まさに地続きだと感じられる映画でした。

藤原季節(以下、藤原):非常に曖昧なものを描こうとしている作品だと感じます。付き合う一歩手前の曖昧な関係、そして父親になるとか母親になる、その一歩手前のやりとり。これ、大学生のほんの半年の話なんです(本作は、出会いと現在のふたりの関係を、時間を行き来して見せていく)。それぞれの過渡期の繊細な一瞬を切り取っているのが面白いと思います。

――とても生々しいやりとりなのですが、同時に、ふたりは向き合っているようでいてきちんと向き合っていないように感じます。

藤原:加藤さんのセリフって、書かれていることと本当の意味が違っていたりするんです。たとえば「それ、いいね」というセリフがあったとして、本当にいいねと思って肯定の意味で言っているのか、相手をバカにしたくて言っているのか、もしくは違うことを考えながら言っているのか。裏のテキストが細かく詰まっていて、そこを読み解く作業があります。

◆自分を大人に見せるための前置き

――直哉は、観客に嫌われてしまいそうな部分を特に含んでいますね。

藤原:「ありがたいと思っているけど」と前置きしてから話したり。その譲歩も、相手を論破したり、自分を大人に見せるための戦略の言葉でしかない。自分の意見を通すための前置きなんですよね。直哉は、自分が間違っていると追い詰められるとパニックになるタイプでしょうね。

◆他人ごとにならないように

――直哉は、自分とも向き合えていない気がします。藤原さんは以前、役者として、「自分の感情と向き合う作業を大切にしている」とお話しされていました。そこに変化はありますか?

藤原:自分のなかでその感情が発生した瞬間だけでなく、発生しない瞬間も意識するようにしてます。この間、電車に乗っているときにモニターを見ていたら、海外で起きた残虐な事件のニュースが流れていたんです。前日に起きた大きな事件だったんですけど、僕、そのことを忘れてたんです。同じことが東京や自分の故郷で起きていたら、激しくショックを受けて、忘れていないはず。それが、国をまたぐだけで自分の中で通過してしまうんだなと。

人を演じる職業なのに、世界で起きていることがどんどん他人ごとになってしまうのは、よくないと感じました。そういった、感情の発生しない部分にもフォーカスをあてて、ちゃんと自分に引き付けて世の中を見るようにしたいと意識しています。

◆臆病さを乗り越えて人と向き合いたい

――本作で新たに感化されたことはありますか?

藤原:改めて、人と向き合うときは、しっかり向き合わないといけないと思いました。人と別れるのも怖いし、愛するのも怖い。自分に自信がないのが相手にバレるのも怖い。恋愛でも友情でも。それって臆病さゆえだと思うのですが、その臆病さを乗り越えて、ちゃんと人と向き合わないといけないなと。

――難しいことですね。

藤原:そうですね。僕ももうすぐ20代が終わりますが、20代って曖昧な関係が多かったと思うんです。相手に対して自分の発言に責任を持ちたくないというか。でもこのままじゃダメだなと思います。

◆人と向き合うとは、ちゃんと傷つくということ

――自分に自信がなかったり、傷つきたくなかったり。そこを乗り越えるのは、すぐにできることじゃありません。

藤原:自信があるから向き合えるかというと、そこにもまた危険がありますからね(苦笑)。あと大事なのは、ちゃんと傷つくことですよね。誰かと一生懸命向き合うって傷つくことだから。ちゃんと傷つかなきゃダメなんだと思えるようになりました。

――本作にもまさに言えますね。キャリアを築いていくなかで、俳優という仕事に意識していることはありますか?

藤原:基本、どんなに言いづらいセリフであっても、書かれているセリフをそのまま言うということを守っています。そしてそこで生まれてくる感情と向き合ってみる。セリフを自分に寄せていく俳優さんもいると思いますが、僕は作家さんが書いたセリフをそのまま言って、自分が持っていない文脈に出会ってみたいんです。

仕事を重ねて、そうした気持ちがより強くなっている気がします。自分の物差しではなく、監督、脚本家スタッフさんたちの物差しに乗っかってみたい。もちろんそのためには作品への信頼が必要です。

――現場ではご自身を差し出している感じでしょうか?

藤原:昔よりフラットかもしれませんね。日常生活でさまざまな感情に向き合ったり、豊かにして、自分のなかにいろんな文脈を蓄えて、現場ではフラットにいる。蓄えたものが、ひょっとしてにじみ出たらいいなぐらいの感じです。

◆憧れの先輩の存在に、年齢を重ねる楽しみが増える

――来年30歳になりますが、憧れている先輩はいますか?

藤原:真似はできませんが、パッと思い浮かぶのは井浦新さんです。自分が同じ年齢になって、あんなにパワフルでいられるかなと思いますが、そうした姿を見ていると、年齢を重ねるひとつの楽しみになります。

――井浦さんとは、『止められるか、俺たちを』(18)でお仕事されてからのお付き合いですね。コロナ禍も以前より落ち着いて、またお会いされたりしているのでしょうか。

藤原:会ってご飯を食べようといった関係ではないんです。節目節目に挨拶のメールを送らせていただくと、「自分の背中なんて軽く追い越せよ」と言われます。映画界の兄貴とか、親父という感じです。それに『止められるか、俺たちを』での関係が抜けなくて、新さんに会うとなったら、足を崩せません。

『止められるか、俺たちを』ではほかにも高良健吾さんや毎熊克哉さんといった方たちとご一緒して、俳優の兄さんたちとして今も浮かびますし、そうした存在がいるのは嬉しいことです。最近、高岡蒼佑さんが格闘家としてデビューした姿にも感動しました。あの年齢で若者と殴り合うなんて真似できません。

◆映画を観たらSNSで感想を

――最後に改めて本作を観ようと思っている人にメッセージをお願いします。

藤原:口コミで伸びてくれる映画なんじゃないかと思っています。ありきたりの作品ではないです。怖いもの見たさでいいので、ぜひこの映画にチャレンジしてもらえたら。観終わって、作品のことでも僕の演じた直哉のことでも、けなすでもいいので、なんでも話して欲しいです。

――観た人と語り合うのもいいですが、登場人物たちと話したくなりました。

藤原:そうですよね。映画を観た方の感想を読むのがすごく楽しみで、SNSでもガンガンエゴサーチしようと思っています(笑)

<取材・文・撮影/望月ふみ>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異 Twitter@mochi_fumi

藤原季節さん(29)