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はじめに

コンパクトカーのマーケットは、もはやシティカー全盛の時代ではない。いまやクロスオーバーの天下だ。そんな中にあって、トヨタ・アイゴXはシティカークラスへ新たに参入するレアな存在といえる。

【画像】トヨタ・アイゴXとライバル 全17枚

シティカー、自動車業界的にはAセグメントと分類されるコンパクトカーは、なかなかにタフなビジネスだと言われ続けてきた。これからもそうだろう。このもっとも小さいセグメントの購買層は価格の低さを期待するが、メーカーとしてはNCAPテストで手を抜けないし、コスト的にハイブリッドシステムなしでエミッション規制をクリアしなくてはならないのだから。

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テスト車:トヨタ・アイゴXリミテッドエディション    MAX EDLESTON

それゆえ、シトロエンプジョーが撤退したのも無理はない話だ。彼らはC1と108を生産していたチェコのコリーン工場の権利を手放した。そう、トヨタとの合弁で設立したTPCAの生産拠点で、アイゴの故郷でもある。

フランス勢が手を引いたことで、旧TPCAはトヨタ100%出資となった。現在はTMMCZと名を変え、アイゴXとヤリスを製造している。どうやらトヨタは、いまだAセグメントに将来性があると踏んでいるようだ。

さて、トヨタの欧州におけるボトムエンドを支えてきたアイゴは今年、3世代目へとバトンタッチした。ただし、Xと書いてクロスと読むサフィックスを与えられて。

そのアイゴX、ボディサイズも地上高もわずかながら増加し、いささかの成熟も果たすとともに、価格がかなり上昇した。結局、この手のクルマを存続させるには、値上げするほかに方法がなかったというわけだ。

いや、はたしてそうだろうか。このセグメントの現行モデルを思い浮かべてみたならば、トヨタの価格設定で、満足のいくシェアを奪えるとはとても思えない。もはや型は古くなったものの、フォルクスワーゲンUpも、フィアット500のガソリン車も現役だ。販売台数は伸びていないが、パンダもまだ新車で買える。

もっとチープでよければ、欧州市場にはキアやヒョンデが参入している。ピカントやi10は、Upやフィアット勢よりは新しいモデルだ。また、ダチア・サンデロなら、もう少し大柄なのに驚くほどコスパがいい。

SUV風のAセグメント、というのも独自性を訴求できる要素ではない。その分野ではスズキが2016年にイグニスを投入し、先行しているからだ。

かつてのAセグメント市場に比べれば、競合モデルは少なくなった。それでもアイゴXが成功するためには、その強気な価格設定に見合う実力の持ち主であることを証明してみせなくてはならない。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

パッと見、アイゴXは先代までとあまり変わったように思えない。デザイン言語は大きく異なるものではないし、ずんぐりしておどけた感じのシェイプも、低く設置されたグリルも、ルーフ近くまで伸びたテールライトやガラスのテールゲートも、これまでとそっくりだ。

ところが、実際にはまったく違うクルマなのである。もはや、ほかのメーカーとコンポーネンツを共有する必要がなくなったので、すべてがトヨタのオリジナルに置き換えられた。

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ホイールは、コンパクトカーとしては大径の17〜18インチで、堂々としたサイドビューを演出する。しかし、幅は狭いので、リアから見るとつま先立ちしているような印象だ。リミテッドエディションには、専用のオレンジのアクセントが入る。    MAX EDLESTON

まずプラットフォームは、ヤリスTNGA−Bをモディファイして使用している。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームというおなじみのレイアウトで、おおまかにいえば、これまで通りということになる。ただし、技術面は更新され、シャシーの操縦性と洗練性を高めている。

とはいえ、もっともわかりやすい変更点を挙げるなら、サイズアップということになる。先代比で、全長は235mm延びて3700mmとなり、全幅は125mm拡がった。いまどきのハッチバックがたいていそうであるように、ラインナップは5ドアのみとなったが、後席ドアは笑ってしまうほど小さい。

SUVやクロスオーバーと呼んでいいかは疑問がある。全高1525mmでは、ベントレー・ベンテイガに踏みつぶされそうだ。とはいえ、ボディを拡幅し、エントリーグレードでも17インチ、ほとんどのグレードは18インチのタイヤを履くので、このセグメントとしてははかなり堂々たるスタンスに仕上がっている。

もっとも、それは少なくともサイドからみれば、という話。アルミホイールの幅は5インチしかないので、後ろから見ると細いタイヤが踏ん張った、農業用トラクターに似た眺めと言えなくもない。

サイズアップしたということは、必然的にウェイトも増量してしまう。テスト車はフル装備のリミテッドエディションだが、974kgという実測値は、2014年に計測した先代アイゴより84kg重い。それでも、i10よりはほんの少し軽いのだから、トヨタのうまく重量増加を抑制したといえる。

いっぽう、先代からキャリーオーバーしたコンポーネンツもある。エンジンだ。1KR型1.0L直3の発展版が、アイゴXには搭載されるのだ。ダイハツが開発したこの小型車用ユニットは、最新のエミッション規制に適合させるべく、これまで数々のアップデートが施されてきた。しかしながら、出力については大幅な向上をみていない。今回の仕様も、72ps/9.5kg-mと慎ましやかなスペックだ。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

サイズアップと上級移行の恩恵をもっとも享受している箇所は、やはりインテリアだろう。シティカーの室内というと、収まりの悪いドライビングポジションと、味気ないダッシュボードに挟まれた窮屈な空間に感じられがちだ。

ところが、それはこのクルマに当てはまらない。アイゴXは、多くの点でスーパーミニ、すなわちBセグメントに乗っているような気分にしてくれる。ボディサイズ拡大により、前席は左右乗員の間隔や、レッグルームが広くなった。

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従来モデルに比べると、装備も、デザインや装飾も進歩が見られる。前席に座っていると、ひとクラス上のクルマに乗っているような感じさえある。しかし、後席は子ども用と思ったほうがいい。    MAX EDLESTON

ダッシュボードは全面新設計で、やや飾り気が乏しかったこれまでに比べ、ボリューム感と遊び心が増し、カラフルな装飾が施された。相変わらず硬いプラスティックが多用され、ドア上部だけでなく目につきにくいところにも鉄板むき出しの部分はある。でも、それらはこのクラスのクルマでは珍しくないことだ。

技術装備についても、その進歩は見落としようがない。新しくなったディスプレイ類は、トヨタ車の多くと比べてもよりユーザーフレンドリーになった。速度計はアナログだが、回転計と燃料計はシンプルなデジタルゲージ。速度計の内側には、小さなカラー画面が設置され、必要性の高い情報が簡潔に見やすく表示される。ステアリングホイール上のボタンで行う、表示切り替えの操作もイージーだ。

空調の操作には、実体スイッチが用いられる。また、エアコンでは換気が間に合わないというのであれば、ファブリックのサンルーフを追加できるグレードも設定されているので、それをおすすめしたい。天気のいい日に、ルーフ全開で走るのはじつに気持ちいい。ただし、80km/hを超えるあたりから、盛大な風切り音に悩まされることになるし、閉じていてもサンルーフなしの仕様よりもノイズは余計に入ってくる。

前席に座っている限り、アイゴXは驚くほど快適なクルマだ。それでも、結局はAセグメントなので、とびきり広いというわけではない。ましてや後席は子ども用、せいぜいローティーンまでしか乗れないくらいのスペースで、大人が乗るにはヘッドルームもレッグルームも足りない。

サンルーフを諦めれば、頭上には多少の余裕が得られるが、あくまでも多少の違いに過ぎない。乗車定員は4名で、リアシートの中央には金属のヒンジがむき出しになっている。

荷室容量は通常時が231Lで、i10に負けている。さらに、オプションのJBLオーディオを装着すると189Lまで目減りする。後席は50:50の分割可倒式だが、荷室と倒したシートバックの間には大きな段差が残る。

走り ★★★★☆☆☆☆☆☆

0−100km/h=16.7秒。これは1960年代前半のロードテストから引用した数字ではない。間違いなく2022年データだ。ターボユニットを積む競合モデルが10秒前後をマークし、一般的なクルマは8秒を切る中では、受け入れ難い遅さだ。

トヨタの公称値は14.9秒。おそらくは1名乗車で、エンジンとギアボックスの慣らしも済ませてあれば、これに近いタイムも出ただろうが、テスト車の走行距離は480km程度に過ぎなかった。とはいえ、それでもほとんどのライバルより遅い。それは中間加速も同じで、4速での48−113km/h加速は、先代アイゴと変わらず29.2秒。1.2Lのi10には及ばない。

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加速テストでは非力さが目立ったが、普段使いではMTのフィールヒールアンドトウを楽しみながら気持ちよく走れる。ブレーキ性能もまずまず優秀だ。    MAX EDLESTON

1.0L直3は低速トルクが足りず、エンストせずに発進するには回転を上げなくてはならない。クラッチの感覚が曖昧で、ミートポイントが手前にあるのも扱いにくさにつながっている。しかし、走り出してしまえば、3気筒特有の唸りを上げながら、6500rpmのレッドラインまで鋭い回転をみせる。それほどストレスなく、113km/h巡航をすることも可能だ。

0−100km/hタイムを損ねた一因は、ギアボックスにもある。引っ掛かりのある動きと狭いゲートにより、2速から3速へのシフトがしづらいのだ。しかし、公道上での普段使いはじつに楽しい。慌ただしく変速しようとしない限りは、短いストロークと機械的なフィールが、力ないパフォーマンスへの不満を埋め合わせてくれる。

72psを発生する回転域をキープしようとすれば、変速の回数も増えるが、それもいやな仕事ではない。ペダル配置が、ヒールアンドトウにぴったりなのもうれしい要素だ。ギア比が均等に割り振られ、2速と3速の開きが大きくないのもありがたい。

とはいえ、全体的にみると、もう少し低めのギア比設定でもよかったように思える。そうすれば、非力なエンジンパワーをもっと有効に使えたはずだ。CVT仕様も設定され、0−100km/hはMTより0.1秒速いという。しかし、そのわずかなパフォーマンスのアドバンテージを得るためには、手動変速をすることになるだろう。

ブレーキングは、113−0km/hの制動距離が45.6mで、ほんのわずかながらi10に後れをとる。とはいえ、上々の結果で、今までテストしたライバル車の中には、これより制動力の低いものも多かった。公道でのブレーキングでは、ペダルフィールプログレッシブで心地よかった。

使い勝手 ★★★★★★★★☆☆

インフォテインメント

長年、トヨタマルチメディアシステムは、他社と比べてかなり旧式だったが、ようやくマイナーチェンジやフルチェンジの際に刷新するようになってきた。アイゴXでも、上位グレードのエクスクルーシブとリミテッドエディションには、まったく新しいシステムが与えられている。

ただ、下位グレードでは相変わらず、7.0インチもしくは8.0インチの画面を用いる旧システムのままだ。競合車では、最廉価グレードにスマートフォン接続機能のみを装備するものも多い。いっそアイゴXもそうして、エントリーモデルの価格を下げればいいと思うのだが。

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上位グレードには、トヨタマルチメディアシステムの中でも最新のものが装備され、機能面で不足は感じない。下位グレードは旧システムを流用しているが、それならいっそスマートフォン接続クレードルだけにして、価格を下げてくれたほうがありがたい。    MAX EDLESTON

テスト車は最上位グレードで、最新システムが搭載されている。少なくとも、やっとちゃんとしたものがついた、とはいえる。レスポンスには満足できるし、インターフェイスは今風。シンプルで使い方の理解はしやすく、ボタンは大きくて、メニューの階層は多すぎない。

純正ナビは、渋滞を考慮した到着時間の遅れを計算させると、Googleマップには勝てないが、それ以外の機能には満足できる。

Apple CarPlayとAndroid Autoはワイヤレスで使用できる。スマートフォンミラーリングと車載システムは、実体ボタンで切り替えることができる。

燈火類

ピュアエッジの両グレードには、LEDランニングライトさえつかない。エクスクルーシブとリミテッドエディションには、LEDプロジェクターヘッドライトが装備される。

ステアリングとペダル

3つのペダルは使いやすい間隔で配置され、ヒールアンドトウがバッチリ決まる。おまけに、まずまずのフットレストまで設置されている。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

2代目アイゴは、プラットフォームの剛性アップによって、初代よりも安心感を持って運転できるクルマになっていた。同じことは、ヤリス用プラットフォームの改修版を用いたアイゴXにも言える。

本格的に走れるシャシーがほしいのであれば、やはりほかを当たったほうがいい。できれば、より上のクラスで探すのが得策だ。そうはいってもアイゴXは、控えめな動力性能を存分に使い切るのに十分なバランスと落ち着きを備えている。

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現実的には、シャシーの限界が試されるような速度域に達することはまずないが、そこでも挙動を乱すことなく、良好なバランスを維持し、グリップも上々だ。    MAX EDLESTON

モデルチェンジで重くなったが、それでも974kgは重すぎるとは言えないウェイトで、そのことは走りにも表れている。この程度の重量なら、175幅のタイヤに多くを要求しないので、少なくともドライコンディションであれば、グリップは問題にならない。

そうはいっても、このシャシーには荷が重いくらいの速度域に入ることそれ自体が大変なことだ。その領域では、少しでもハラハラするようなリスクがあるたびに、スタビリティコントロールが介入してくる。

この制御システムはアンダーステアが発生する前にパワーを絞り、スロットルオフでのオーバーステアが出そうな気配を感知するとキッパリその芽を摘み取る。

ステアリングは前輪が何をしているかの情報を多くは伝えてくれず、手応えは例によって軽いのだが、フィールが一貫しているのはありがたいことだ。シティカーに重要な回転サークルは9.4mと小さいので、駐車や取り回しは従来モデルと変わらず朝飯前だ。ただし、縁石で18インチホイールをこすらないよう気をつけたいが。

小さなクルマとしては、アイゴXの挙動はすばらしく熟成している。コスト的に厳しいクルマだと感じさせられるのは、平坦ではない道を走ったときだ。シャシーは、垂直方向のシンプルな突き上げはうまくいなしてくれるが、一輪だけが路肩のくぼみにはまったときなどは、リアアクスルからいやな振動が出ることもある。左右独立サスペンションではまずみられない類の振動だが、多くのBセグメント車ではうまく抑えられているのもまた事実だ。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★★☆

快適性は、Aセグメント車の強みとなることはそうそう多くない。乗員の背が高い場合もだが、長距離移動する場合はとくにそうだ。だからこそ、シティカーと呼ばれるのでもあるが。しかしながら、その点でアイゴXは大きな進歩を遂げている。

やや車高が増したことは、ドライビングポジションにおける大きなメリットをもたらした。ヘッドルームもレッグルームも広がり、ステアリングコラムの調整幅も大きいので、リラックスしたポジションを取ることが簡単になった。

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車両重量が軽いので、足回りを固める必要がなく、結果として乗り心地はよくなっている。長距離も快適に移動できそうだ。キャンバスルーフは、静粛性に多少の不利をもたらす。    MAX EDLESTON

そこには、シートそのものも貢献もある。最廉価グレードであっても、高さ調整機構は標準装備だ。ランバーサポートはないものの、それを問題に感じるテスターはいなかった。座面は比較的長めで、前上がりの傾斜がついているので、脚が長いドライバーでも太ももをきちんと支えるサポートが得られる。

音環境の洗練度は、ほかの小型車と同等程度。ロードノイズが途絶えることはないが、完全に許容できる範囲内で、Bピラー付近の風切り音はあるが、それも小さなものだ。テスト車に装備されていたキャンバス地のサンルーフからは、シーリングがタイトだったにもかかわらず、周囲のノイズが多少漏れ聞こえてきたので、ノーマルルーフ仕様の室内騒音は、速度を上げてもあと1〜2dBAは低いだろうと思われる。

18インチホイールは、乗り心地を悪化させるだろうと思われたが、ここでも軽い車両重量の恩恵が感じられる。1t未満の重量をコントロールするなら、スプリングダンパーを硬くする必要がない。結果として、アイゴXの乗り心地は比較的コンフォートなものになっている。

購入と維持 ★★★★★☆☆☆☆☆

2022年現在、シティカーを全面新開発することは、間違いなく財政的なリスクを伴う。シティカーのメーカーは、ユーザーに不満を抱かせずに、高額な豪華装備をどれだけ削ぎ落として、どれだけ妥当な価格設定ができるのだろうか。

もっともベーシックなグレードのピュアは、装備が非常に充実していて、価格は1万4805ポンド(約229万円)。Upやi10、ピカントのベースグレードはこれより少し安価だが、装備内容はアイゴXに及ばないところもあるので、ライバル車たちもとくに割安とは言えない。ただし、サンデロは価格が低く、しかも使い勝手がよりいい。

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1年以内の値落ちは急激なものになると予想されるが、その後はほぼ横這い。エントリーグレードのピュアなら、今回のリミテッドより損失を抑えられるだろう。

これにオプションを上乗せしはじめると、最後は手に負えないことになりかねない。グレードを1段上のエッジにすると、価格は1万6505ポンド(約256万円)になるが、装備が劇的によくなるわけではない。テスト車のリミテッドエディションは、シートヒーターやLEDライト、ワイヤレス充電器などが加わり、MTで1万9650ポンド(約305万円)、CVTだと2万750ポンド(約322万円)だ。

購入価格がそれほど低く抑えられないとしても、スモールカーの維持費は期待通り安い。燃費は文句なしで、1週間乗って20.6km/Lというテスト時の平均値は、ハイブリッドPHEVでも及ばないものが多い数字だ。また、トヨタ車といえば、ずば抜けた信頼性で高く評価されている。それは歴代アイゴも例外ではなかった。

発売からさほど時間が経過していないので、ランニングコストは詳細がまだわからない点もある。しかし、気になるポイントがタイヤだ。18インチホイールはシャープなルックスに寄与するが、175/60R18というタイヤサイズは特殊。検索してみると、見つけられたのは3銘柄のみで、価格は1本120ポンド(約1.9万円)からだった。18インチタイヤとしてはとくに高いわけではないが、Aセグメントとしては予想外の出費となるはずだ。

スペック

レイアウト

先代までのアイゴはPSAと共同開発のプラットフォームを共用していたが、新型はヤリス用のTNGA−Bの短縮版を使用する。

サスペンションはきわめてコンベンショナルな仕立て。テスト車の前後重量配分は、実測で61:39だった。

エンジン

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過去2世代は旧PSAなどと共同開発したAプラットフォームベースだったが、新型アイゴXはTNGAに移行した。ヤリス用の短縮版を用いる。

駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:直列3気筒998cc、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ71.0×84.0mm
圧縮比:11.8:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:72ps/6000rpm
最大トルク:9.5kg-m/4400rpm
エンジン許容回転数:6500rpm
馬力荷重比:78ps/t
トルク荷重比:10.4kg-m/t
エンジン比出力:72ps/L

ボディ/シャシー

全長:3700mm
ホイールベース:2430mm
オーバーハング(前):730mm
オーバーハング(後):540mm

全幅(ミラー含む):2060mm
全幅(両ドア開き):3520mm

全高:1525mm
全高(テールゲート開き):1950mm

足元長さ(前席):最大1095mm
足元長さ(後席):最大675mm
座面~天井(前席):最大1030mm
座面~天井(後席):870mm

積載容量:231〜828L

構造:スティールモノコック
車両重量:920kg(公称値)/974kg(実測値)
抗力係数:0.32
ホイール前・後:5.0Jx18
タイヤ前・後:175/60 R18 85H
ミシュランe−プライマシー
スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

変速機

形式:5速MT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.55/8.2 
2速:2.05/14.3 
3速:1.31/22.4 
4速:1.03/28.5 
5速:0.85/34.4    
最終減速比:4.29:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:20.6km/L
ツーリング:20.8km/L
動力性能計測時:10.3km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/L
中速(郊外):-km/L
高速(高速道路):-km/L
超高速:-km/L
混合:20.9km/L

燃料タンク容量:35L
現実的な航続距離:721km
CO2排出量:110g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラットコイルスプリング、スタビライザ
後:トーションビーム/コイルスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.9回転
最小回転直径:9.4m

ブレーキ

前:-mm通気冷却式ディスク
後:-mmドラム
制御装置:ABS
ハンドブレーキ:手動、センターコンソールレバー設置

静粛性

アイドリング:37dBA
全開時(3速):76dBA
48km/h走行時:58dBA
80km/h走行時:65dBA
113km/h走行時:71dBA

安全装備

ABS/ESP/AEB/レーンキープアシスト/6エアバッグ
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温16℃
0-30マイル/時(48km/h):4.6秒
0-40(64):7.4秒
0-50(80):10.5秒
0-60(97):15.6秒
0-70(113):21.1秒
0-80(129):28.4秒
0-402m発進加速:20.5秒(到達速度:110.4km/h)
0-1000m発進加速:37.4秒(到達速度:112.7km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
ヒョンデi10 1.2プレミアム(2020年)
テスト条件:乾燥路面/気温9℃
0-30マイル/時(48km/h):4.0秒
0-40(64):6.0秒
0-50(80):8.4秒
0-60(97):12.3秒
0-70(113):16.9秒
0-80(129):22.6秒
0-402m発進加速:18.8秒(到達速度:118.6km/h)
0-1000m発進加速:34.9秒(到達速度:144.4km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):5.8秒(2速)/9.5秒(3速)

30-50(48-80):6.0秒(2速)/9.5秒(3速)/13.5秒(4速)/16.8秒(5速)

40-60(64-97):9.8秒(3速)/14.2秒(4速)/19.7秒(5速)

50-70(80-113):11.0秒(3速)/15.7秒(4速)/22.7秒(5速)

60-80(97-129):13.4秒(3速)/19.0秒(4速)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温16℃
30-0マイル/時(48km/h):8.5m
50-0マイル/時(64km/h):23.3m
70-0マイル/時(80km/h):45.6m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.85秒

ライバルの制動距離

ヒョンデi10 1.2プレミアム(2020年)
テスト条件:乾燥路面/気温9℃
30-0マイル/時(48km/h):8.3m
50-0マイル/時(64km/h):22.3m
70-0マイル/時(80km/h):44.7m

各ギアの最高速

1速:53.1km/h(6500rpm)
2速:93.3km/h(6500rpm)
3速:144.8km/h(6500rpm)
4速:157.7km/h(5532rpm)
5速(公称値):157.7km/h(4579rpm)

5速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):3270rpm/3738rpm

結論 ★★★★★★★☆☆☆

レッドリストの絶滅危惧種は3段階に分かれている。シティカーを当てはめるなら、もっとも危険視されるIA類とはいわないまでも、絶滅が危ぶまれる3ランク目のII類くらいには相当するだろう。

それゆえ、このカテゴリーに新顔が登場したのは歓迎すべきことだ。しかし、このトヨタのアプローチが、セグメントの未来を切り開くものなのかどうか、われわれは確信が持てない。

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結論:ほとんどの部分で、非常に成熟したスモールカーだと評価できる。ただし、あまりにも割高なのも事実だ。    MAX EDLESTON

ほぼ全般的に、アイゴXはすばらしい出来のスモールカーだ。インテリアは、価値あるドライブを楽しむのにぴったりだ。特別広いわけではないが、デザインは楽しげで、エルゴノミクスは模範的。あったらいいなと思うようなテクノロジーは、オプションも含めればたいてい手に入る。シャシー性能と洗練度は、ひとクラス上のレベルに達している。

しかしながら、エンジンは歴代アイゴで使い古されたユニットで、2022年の基準に照らせば悲しいほど非力だ。みごとなまでに使いやすいMTのギアボックスは、そのアンダーパワーなエンジンを走りやすい状態に保ってくれる。それでも、ライバル車たちのターボユニットと比べると見劣りするのは否めない。

だが、アイゴX最大の問題は価格だ。もっともベーシックなバージョンなら、値付けを正当化できる。しかし、上位グレードになるとかなり高額だ。その価格帯を考えると、遅さと狭い室内スペースへの不満が高まる。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

個人的にはキャンバスのサンルーフが好きだ。安いコンパクトカーに求めるような類のファンな感じを与えてくれるからだ。ただ、電動にする必要はあったのだろうか。もしも手動なら、開閉を素早く簡単にできただろうし、いちいちエンジンをかけなくても開け閉めできる。なにより、価格を低くできるのに。

マット・ソーンダース

アイゴXがホットハッチのように走るとはとは誰も期待していないだろうし、3気筒とタイトなMTで小さなクルマを鞭打って走らせるのもそれはそれでおもしろみがある。とはいえ、その遅さには現代のクルマとは思えないものがある。

オプション追加のアドバイス

ベーシックなピュア仕様以外は、金額的に割に合わない。そのグレードでも、シティカーに不可欠と思われる以上の装備内容となっている。残念なのは、ボディカラーの選択肢にモノクロなものが多すぎることと、インフォテインメントシステムが旧式だということだ。上位グレードを選ぶなら、キャンバスルーフの追加をおすすめしたい。

改善してほしいポイント

・もっとパワーが出るエンジンを。ターボ版を追加してもいいかもしれない。
・フロントのシートバックのボリュームを削ぎ落として、後席レッグルームを拡大してほしい。
・価格に見合ったもっと上質なトリムを用意するべきだ。


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