広島・長崎平和の鐘の作者として知られる人間国宝・香取正彦。平和の意味が問われる今、彼が制作した仏具や平和の鐘の原図などの梵鐘資料を紹介します。また、過去の戦争犠牲者を供養する「平和観音」として知られ、通常は佐倉市役所忠霊塔内に安置されている《聖観世音菩薩像》も特別出品。

■概要
収蔵作品展『人間国宝・香取正彦の仏具と佐倉の工芸』
◇会場
佐倉市美術館千葉県佐倉市新町210番地)
◇開催日時
2022年5月28日(土)~7月18日(月・祝)
休館日:月曜日(ただし、7月18日(月・祝)は開館)
開館時間:10:00~18:00
※事前予約の必要はありません。
◇観覧料
無料
6. 津田信夫《北辺夜猫子》

【内容】
 人間国宝は、正式には重要無形文化財保持者といい、歴史的・芸術的に特に価値の高い工芸技術など、高度に体得した人を認定する制度をいいます。
 工芸家として初めて文化勲章を受章した鋳金家の香取秀真を父に持ち、幼少期を佐倉で過ごした鋳金家の香取正彦(1899-1988)は、昭和52(1977)年に梵鐘の制作技術で重要無形文化財保持者となりました。正彦は、父とともに生涯で100口を超える梵鐘を制作しましたが、同時に、時に依頼に応じ、あるいは研究のために、法要などに使用する多くの仏具を制作しました。
 この展覧会では、当館の収蔵品の中から香取正彦の制作した仏具をはじめとする作品や、梵鐘資料などを紹介します。あわせて、香取秀真(1874-1954)や津田信夫(1875-1946)、鈴木治平(1927- )など佐倉ゆかりの金工家の作品や、佐倉ゆかりで正彦とも親交があった人間国宝の人形作家・堀柳女(1897-1984)の作品も紹介します。
 展示作品の中には、平和を希求して制作された観音像や「広島平和の鐘」の原図、あるいは、太平洋戦争中の時局を反映した作品など、平和の意味が問い直される今、改めて見直すべき作品が含まれています。
5.香取正彦《聖観世音菩薩像》

【主な展示作品】
1.《柄香炉》昭和63(1988)年
解説:正彦最晩年の作品。柄香炉は柄のついた香炉のことで、法要などで経典や僧侶自身を清めるために使用するもの。作品制作において古典研究を重視した正彦が、正倉院宝物を参考に模造したもの。正彦の作品制作に対する姿勢がうかがわれる作品。 2.《金銅誕生仏》昭和61(1986)年
解説:釈迦が生まれてすぐに7歩歩いて右手を天に、左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と唱えたという伝説の姿をかたどったもの。4月8日の釈迦の降誕を祝して行われる灌仏会の本尊として知られる。 3.広島平和の鐘 下絵 昭和42(1967)年頃
解説:毎年8月6日の広島原爆の日に挙行される平和式典内で、原爆が投下された時間に捧げる黙とうの際に撞かれる鐘の下絵。「平和」の文字は、元内閣総理大臣吉田茂が揮毫したものを拡大して書き起こしている。

4.《聖観世音菩薩像》昭和42(1967)年 佐倉市蔵 ※特別出品
解説:ふだんは、佐倉市役所内の忠霊塔内に本尊として安置されている。過去の戦争で犠牲となった佐倉やその近郊出身の方々を供養するための平和観音として知られている。

5.香取秀真《白銅三猿釜》昭和19(1944)年 戦艦献納帝国芸術院会員美術展
解説:正彦の父・香取秀真の作品。太平洋戦争末期、海軍に戦艦を献納する資金を得るために帝室博物館(現、東京国立博物館)で開催された展覧会に出品された。本来、釜は鉄であるべきところ、白銅で制作されたのは、戦争が長引く中で物資が不足し、金属の使用が制限されていたことと関係があるのだろうか。蓋のつまみと環付が「見ざる聞かざる言わざる」を表す三猿となっていることも時局の影響を感じさせる。 6.津田信夫《北辺夜猫子》昭和16(1941)年 第4回新文展
解説:佐倉出身の金工家・津田信夫の作品。夜猫子はフクロウの中国での呼び名。フクロウは中国では母親を食べる伝説を持つ不孝鳥として、不吉な出来事の前兆とされてきた。題名の「北辺」は、この年、当時日本と同盟関係にあったナチス・ドイツ独ソ不可侵条約を破ってソビエト連邦に侵攻して独ソ戦がはじまり、日ソ間の緊張が高まったことが念頭にあるのだろうか。 7.堀柳女《花櫛》昭和28(1953)年 第5回人形美術展
解説:もう一人の佐倉ゆかりの人間国宝・堀柳女の作品。柳女は、旧佐倉藩士の柿内家に生まれ、昭和30(1955)年の重要無形文化財保持者の第一次指定で、衣裳人形の制作技術で人間国宝となった。柳女は香取正彦と年齢も近く、東京での自宅も比較的近所だったこともあり、親しい交流があります。
1.香取正彦《柄香炉》
■アクセス
【車】
東関東自動車道佐倉インターより約5km (現在、工事中のため駐車場利用不可。)
【公共交通機関】
京成佐倉駅南口から徒歩8分、または、ちばグリーンバス「JR佐倉駅行」か「第三工業団地行」で「佐倉市美術館」下車すぐ。
JR佐倉駅北口から徒歩20分、または、ちばグリーンバス「京成佐倉駅行」か「田町車庫行」で「二番町」下車すぐ。

■お問い合わせ
佐倉市美術館
住所:千葉県佐倉市新町210番地
TEL:043-485-7851
URL:http://www.city.sakura.lg.jp/section/museum/

配信元企業:佐倉市

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