代替テキスト

《繁盛しているラーメン店は回転が命。客が店を選ぶように、店側も客を選ぶ権利は勿論あると私は思います》
《え、逆に子連れお断りのお店に無理やり入って食事して良いことって、何があるの…??理由があるから、断られてるんだよね…?》

6月20日、ネット上にこんな声が上がった。

これらは「弁護士ドットコムニュース」が同日に配信した、「人気ラーメン店『子連れはお断り』に納得いかない!法的に問題ないの?」と題する記事へのコメントだ。

記事では、家族連れで人気ラーメン店に行ったところ、子供連れを理由に入店を断られてしまったという男性の相談を紹介。その男性はあとから店に詳しい理由を問い合わせたところ、店内が狭いことやゆっくりできないことなどを挙げられたとのこと。店側に何を言っても「とにかく子どもはダメ」との一点張りだったといい、法的に問題がないか同サイトに相談が寄せられたという。

この相談に対応した弁護士は記事内で、契約の相手や内容を自由に選択できる民法の「契約自由の原則」を根拠に、店側が子連れ客の入店を拒否することは「法的に問題ない」と解説。

さらに同弁護士は、《ただし、人種や性別など、社会的に差別が許されないと認識されている事由で顧客を選別する行為は合理的理由のない限り違法となる場合もありますが、「子ども連れ」という理由はいまのところ合理的理由のない差別にはならないと考えます》とも言及している。

また、ホームページや店頭の張り紙などで告知をしていないことについても、「違法となるわけではない」としている。つまり、「子連れお断り」にするかどうかは、店側の自由というわけだ。

この見解に、ネット上では冒頭のように店側の判断を支持するコメントもあれば、《「法的には問題ない」「子供を連れてくる方がおかしい」って声が多数なんだけど…こういうのを見ると子供連れには生きにくい世の中になったものだなぁと》や《子供が静かにラーメン食べるならば問題無いと思うが騒ぎ出して注意しない親が人気ラーメン店に入ってきたら他の客の迷惑になると思う》との声もあり、論争状態となっている。

■現役ラーメン店主は「子供ではなく親や保護者の方に問題がある」と指摘

では実際に、「子連れお断り」にしている店側の意見はどうだろうか?そこで本誌は、大阪府泉南郡熊取町にある自家製麵「ら~めん麵虎」の店主・臼井英生さん(54)に話を聞いた。

同店では張り紙だけでなく、ホームページ上でもはっきりとこうアナウンスしている。

令和2年2月11日午後6時50分から小学校未就学児連れの来店は、お断りしています》

ラーメン店を開業して今年で22年目という臼井さんによると、以前までは子連れ客も入店可にしていたとのこと。ただ、休憩時間の限られたビジネスマンや学生などの客を優先したいとの思いから、子連れ客には昼のピークを過ぎてから来店してもらうよう、張り紙にてお願いしていたという。

その張り紙を見てサッと食べて席を立つ子連れ客もいたが、徐々に“マナーの悪さ”が目立ってきたといい、臼井さんは「子供ではなく親や保護者の方に問題がある」と指摘する。

臼井さんの店の客席数は、新型コロナの感染が拡大する前はカウンター席が9席だったが、現在は6席。そして、4人がけのテーブル席が3席だ。「子連れお断り」のきっかけになった《令和2年2月11日午後6時50分》の出来事について、臼井さんはこう話してくれた。

「数少ないテーブル席で、親子が一緒にタブレットで動画を見ながら食べていたんですよ。やっぱりこちらとしては、遅くても30分~40分に1回は席を回転させたいという思いがあるんですね。ですがその親子は50分くらい経っても、まだ料理も残っている状態で動画を見ていたんです。ですので、『他のお客さんに迷惑だから早く食べて退店してください』と注意しました」

この出来事をきっかけに、「子連れお断り」にしたという臼井さん。加えて、食べ終わってから携帯やスマホを見て席を動かない客もいることから、店内での携帯やスマホの利用も禁止にしているとのこと。

このような決まりを設けた背景について、臼井さんは切実な事情をこう語った。

「注意しない店もあると思いますが、他のお客さんのことを考えると、うちは注意する店なんです。『食べたらすぐに出ていけ』ということではないのですが、最近はマナーの悪さが目立つので……。親が携帯を触っている傍らで、子供は食べ物で遊んだり走り回ったりするというようなこともありました。でも親は携帯に夢中で、注意しないパターンが非常に多いんですよ」

さらに子連れ客をめぐって、臼井さんを悩ませるトラブルは他にもあった。

「これまで夜の営業時間中に、使用済みのおむつを4回も席に置いていかれているんです。ひどい時には、食べている途中で子供のおむつをかえて、その使用済みのおむつを隣の空いている席に置いて帰ったお客さんもいました」

そんな状況に臼井さんは「大人のマナーが悪いので、『子供お断り』じゃなくて『子連れのマナーが出来ていない親』と書きたいくらいなんですよ」と話し、「中にはマナーのある人もいますが、子供が食べ物を散らかしても『ゴメンね』と声をかけてくれる人も少ないですね」と嘆息を漏らした。

店側にも理由がある「子連れお断り」。互いに気持ちよく過ごせるよう、マナーは守りたいものだ。