早稲田大学在学中にAV女優としてデビューした渡辺まお(22)。2020年12月には「文春オンライン」でのインタビューにも応じ、AV女優としての意気込みを語っていた。しかし、今月突然の引退を発表し、名前も神野藍(じんのあい)に改名した。第一線で活躍してきた彼女はなぜAV女優をやめたのか――。

 AV女優をやめた経緯や家族との関係性、AV新法に思うことなど、詳しく話を聞いた。(全3回の1回目/続きを読む)

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AV女優として完全燃焼した

――お久しぶりです。お越し下さりありがとうございます

神野 神野藍として会うのは初めてですね(笑)。もう“渡辺まお”という名前は使えないので、少し寂しいです。

――神野藍という名前はどうやって決めたんですか。

神野 私、谷崎潤一郎さんの「痴人の愛(ちじんのあい)」が大好きで、それでそこから「ち」以外をもらいました。

――前回のインタビューでは、「大学卒業後もずっとAV女優を続けたい」とおっしゃっていましたが、大学卒業から2ヶ月で引退されました。AV女優を引退した理由を、率直に聞きたいです。

神野 引退を決めた理由は一つではなく、いろいろあるんですが、一度AV女優を休業した時に自分の中に「またAV女優に戻りたい」という気持ちがないことに気づいて、もういいかなって思ったんです。葛藤はあったんですが、中途半端な気持ちのまま働くのはダメだと思って、事務所に引退する方向で考えていることを話しました。

――AV女優という仕事をやり切ったと。

神野 完全燃焼したと思います。デビューした当初は、何もかも知らないことばかりで、現場に行くたびに刺激を受けていましたし、自分がAV女優であることも刺激的でした。好奇心からこの仕事を始めたんですが、2年間AV女優として活動していくうちに満たされていってしまって。もうこれ以上続けても新しく得るものはないんじゃないかなって。

――また新しいことに挑戦したいと思い始めたんですね。

神野 そうですね。AV女優としてのキャリアは短い方だと思うんですが、自分の中に常に成長していきたいという気持ちもあって。今は会社員として働きながら新しい名前で活動しています。具体的にどんなことをやっていくのかは模索中ですが、元AV女優として何か発信していければと思っています。

――引退を発表してから周りの反応はいかがでしょうか。

これまで選択してきたことに後悔はしていない

神野 ファンの方はどんなことをしていようと応援するよって言ってくださる方も多くて嬉しかったです。友だちも「あ~やめたんだ。おつかれ~」くらいで、特別何かを言われるわけでもなくて。

 両親にも辞める方向で考えていることは伝えました。特別何か言われたわけではないですけど、ホッとしていると思いますね。AVを始めたことでいろいろと心配をかけることも多かったので。

――ちなみに直接お会いしたんですか。

神野 いや、まだ会ってないですね。コロナということもありますし、まだちょっと時間が欲しいかなと思います。いつか直接話せたら嬉しいですね。

――引退されてから1ヶ月経ちましたが、振り返ってみていかがですか。

神野 今考えるとAV女優として活動していた時は、割と仕事人間だったなって思いますね。そのおかげで泥臭く生きていく術は身につきましたけど。やっぱり肉体労働ですし、朝から晩まで仕事が入っていた時期もあったので、すごく忙しい中で、必死にしがみついていました。AV女優である前に大学生でもあったので、学業との両立も大変でした。理解してくれる方が周りにいたので、なんとか卒業できましたけど、卒論は辛かったですね(笑)

 AV女優を始めてから心が広くなった気がします。今までの学生生活って考え方とか価値観が同じような人たちが周りにいたので、良くも悪くも視野が狭かったんです。でも、AV女優はいろんなバックグラウンドを持った方がいて、そういう人の価値観に触れていくうちに、視野が広がりました。

――デビュー時は神野さんの学歴に対するバッシングが多かったですよね。

神野 今でも言われることはありますね。「早稲田なのにもったいない」とか「学歴を捨てた女」って言われますけど、これまで選択してきたことを後悔はしていないです。

世間的に評価される女性がAV女優をやることに需要がある

 デビューした時は大学名は伏せていたんですが、すぐにバレてしまって。早稲田在学中のAV女優として最初は話題になりました。私がデビューした後くらいから、学歴と紐づけて売るブームみたいなものが起きたように感じます。例えば「TOEIC900点超え」とか、「帰国子女」とか。

 そういう世間的に評価される女性がAV女優をやることに需要があるんだと思います。ただその一方で、そういう方がデビューすると必ずと言っていいほど、「高学歴がAV堕ち」「人生終わり」とバッシングするのって矛盾があるなと思いました。私自身も早稲田だったからこそ、光が当たった部分はあると思うんですが、学歴だけで人を判断してほしくないなと思いますね。

「素人っぽいのが好きだけど、本当に素人は嫌だよ」とか、「清楚系女子が好きだけど、清楚すぎるのは嫌だ」とか。AV女優が求められるものってたくさんあると思うんですが、AV女優って役を演じている演者であってリアルとは違います。そういうことを理解した上で楽しんでくれる人が増えれば嬉しいです。

 AV女優ってプライベートと仕事の境界線が曖昧なんですよね。 仕事なんだけど、素の自分を出すことも求められるというか。AV事務所側がわざとその境界線をぼかしている部分もあるので、しょうがないんですが、もう少し見る側の意識が変わればいいなと思っています。

――そういう意味では大学名を公表しなければよかったと思いますか。

神野 うーん。今だったら公表しないと思いますね。あの頃は無鉄砲だったというか、いろんなリスクをちゃんと考えられていなかった部分もあると思います。上から「こうしようよ」って言われたら、「はい、そうですね」って受け入れてしまっていたし、そうじゃないと売れないと思っていました。周りから求められるものは全て受け入れなきゃいけないって思い込んでいて。どうすればいいかわからなくなることもありました。

写真=石川啓次/文藝春秋

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(「文春オンライン」編集部)

「渡辺まお」改め「神野藍」