逮捕・手錠

「○○党(特定の政党名)政治を終わらせよう」「平気で嘘をつく○○(ある政治家の名前)」──。22日に参議院選挙が公示となり、各政党の発言や行動が連日ニュースになっている。

今や誰もがSNS等で気軽に自分の意見を発信できるようになり、ときに特定の政党や政治家に対する厳しい言葉が飛び交うこともある。ただネット上では、先日侮辱罪が厳罰化されたことで、「これからは政治家を批判したら侮辱罪で捕まるのでは?」という声もあがっていて…。


■厳しい処分になる可能性も

刑法231条によると、侮辱罪は、事実を摘示しないで不特定または多数の人が見られる中で口頭や文書を問わず、他者を侮辱することを内容とした犯罪だと定義されている。「事実を摘示しない」ということは、「馬鹿野郎」「このハゲ」「ブス」など具体的な事実を伴わない誹謗中傷が当てはまるということだ。

これまで侮辱罪の法定刑は「拘留(30日未満)または科料(1万円未満)」だったが、13日の厳罰化によって「1年以下の懲役・禁錮刑と30万円以下の罰金刑」が追加された。


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■ネット上ではさまざまな反応

今回の厳罰化は、2020年にプロレスラーの木村花さんがネット上の誹謗中傷で亡くなったことを受けてのものだとされる。そのため、ネット上では「木村花さんの件は本当にひどかったら賛成」「流行りなどを悪用して作品とか人を侮辱して自殺した人も多くいるから当然」など賛同する声があがっている。

一方で、「政治家に文句を言うだけで逮捕されるのかな…」「税金ドロボーって言ったら侮辱罪になっちゃうのかな?」など、政治家を批判することが侮辱罪になるか疑問に思う人の声も見受けられた。

■弁護士に聞くと…

山本健太弁護士

政治家を批判することで侮辱罪に問われる可能性はあるのだろうか。スポーツ関係法務や誹謗中傷問題を多く扱う山本健太弁護士に話を聞いた。

「先日、侮辱罪厳罰化の改正法案が成立しました。これに伴い、例えば、政治に関する批判もしづらくなるのではなどの不安を耳にすることがあります。もっとも、今後も適正な批判に対しては、表現の自由(憲法21条1項)との調和の観点から違法性が阻却(※しりぞけたり、さまたげるという意味の法律用語)される余地があり得ます。ただし、違法性が阻却されるためには違法性阻却事由が充たされる必要があります。そのため、そもそも、例えば「死ね」「きもい」など、侮辱罪に該当する可能性のある表現を用いないなどの注意は引き続き必要です」(山本弁護士)。


■どちらも重要

つまり、表現の自由も、人に対する社会的評価もどちらも重要なものであり、直ちにどちらが優先すると言えるものではないということだ。

ネット上では、誰もが気軽に意見を言える時代だが、一人一人が自分の使う言葉に責任を持つ必要があるのかもしれない。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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