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image credit:Adapted from Nano Letters 2022

 マイクロプラスチックは、今や地球上のいたるところを汚染しており、人間を含む、あらゆる生き物に健康被害をもたらす恐れがある。

 とても小さな粒子の為、一度水路などの環境に入り込んでしまえば、取り除くことは難しい。だがその難題を小さなロボットが解決してくれそうだ。

 自己修復機能を持つ、魚形のやわらかいロボットは、レーザーを浴びると植物プランクトン並みの速さで泳ぎ、周囲にただようマイクロプラスチックを吸収してくれるという。

【画像】 貝が分泌する素材をソフトロボットに応用

 マイクロプラスチックは環境中に存在する微小なプラスチック粒子で、その大きさは5mm以下と微小だ。小さな隙間にも簡単に入り込んでしまう。海に流れ込んでしまえば、取り除くのはとても大変だ。

 そこで解決策の1つとして考案されたのが、柔軟な小型ソフトロボットに掃除をさせる方法だ。

 従来のソフトロボットは、水を媒体とするゲル状の「ヒドロゲル」や弾性を持った熱可逆性のある高分子「エラストマー」で作られるのが一般的だった。

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 だが、こうした素材は水の中ですぐダメになってしまう。そこで注目されたのが貝類が外套膜(がいとうまく)から分泌する「真珠層」という素材だ。

 真珠層は貝殻の内側についている無機物と有機物の複合素材で、丈夫で柔軟さに優れる。特徴的なのがグラデーションのような構造だ。

 片面は炭酸カルシウムのミネラルポリマー複合体で占められているが、もう片面に近づくほどに絹タンパク質フィラーが増えてくる。

 四川大学のジャン・シンシン氏らは、この構造にインスピレーションを受けた。同じようなグラデーション構造を再現すれば、耐久性と屈曲性に優れたソフトロボット用素材が作れるとひらめいたのだ。

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Photo by Daniele Levis Pelusi on Unsplash

レーザー照射で泳ぎながらマイクロプラスチックを吸収

 ジャン氏らはまず、β-シクロデキストリン分子をスルホン酸化グラフェンに結合させ、複合ナノシートを作成。このナノシート溶液を、濃度を変えながらポリウレタン・ラテックス混合物に混ぜる。

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 このように層ごとに組み立てることで、ナノ複合素材のグラデーション構造が完成した。これをもとに開発されたのが、全長15ミリの魚型ロボットだ。

 作り方もユニークなら、動き方もユニーク。尾ビレの部分に近赤外線レーザーを照射し、高速で明滅させるのだ。

 こうすると尾ビレがはためき前へ泳ぎ出す。最高速度は秒速2.67体分で、従来のソフトロボットを凌駕する速さだ。

Robot fish moves through water picking up microplastics

 このスピードは植物プランクトンの速度に匹敵するという。また周囲にあるポリエチレン製のマイクロプラスチックを繰り返し吸収してくれることも確認されている。

 万が一切れても自己修復が可能で、マイクロプラスチックの除去能力が失われることはないという。

 小さいながらも丈夫で、高速で泳げる魚型ソフトロボットなら、過酷な水環境に漂うマイクロプラスチックなどの汚染物質のモニタリングに利用できるだろうとのことだ。

 この研究は『Nano Letters』(2022年6月22日付)に掲載された。

References:Tiny fish-shaped robot 'swims' around picking up microplastics / written by hiroching / edited by / parumo

 
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泳ぎながらマイクロプラスチックをお掃除してくれる魚型のロボットが開発される