2022年6月25日から6月26日にかけて、タクティカルFPS『VALORANT』の公式大会「VALORANT Champions Tour」(以下、VCT)の国内決勝にあたる「VCT 2022 Challengers Japan Stage2」Playoff Finalsが開催された。

 Playoff Finalsは有観客オフラインにて行われ、eスポーツ大会として国内最大規模となる、埼玉県さいたまスーパーアリーナにて開催。2日間の総来場者数は2.6万人を突破し、国内eスポーツ史上最大動員数を記録した。

 Playoff Finalsには、トーナメントを勝ち進んだ「NORTHEPTION」、「ZETA DIVISION」、「Crazy Raccoon」の3チームが出場。DAY2のGRAND FINALでは、世界3位の実績を持つ「ZETA DIVISION」を3-1で下し、「NORTHEPTION」が新たな王者に輝いた。

参考:【写真】2日間にわたる会場の様子

■着実に広がりを見せる、eスポーツ観戦を楽しむカルチャー

 選手たちがプレイするステージは、さいたまスーパーアリーナの会場中央に設置された。ステージを中心に360度ぐるりと囲む客席には、各日1.3万人のファンが集結。スティックバルーンで応援するファンでびっしりと埋め尽くされた客席は、圧巻の光景となっていた。

 5月に行われたオフラインイベント「RAGE VALORANT 2022 Spring」は、2日間で1.3万人を動員したことで話題になったばかりだが、今回はその2倍の規模での開催となった。しかも、「RAGE VALORANT 2022 Spring」は、人気ストリーマーやオールスター選手を招待するエンタメ性の高いイベントだったが、今回は本格的な競技シーンの大会である。

 かつて、eスポーツ大会を観戦する人は、圧倒的に男性の割合が高かった。しかしながら、今回の会場には、男性ファンも女性ファンもまんべんなく来場し、体感ではほぼ半々と言えるレベルだった。近い将来、オフライン会場に女性の来場者が多かったかどうかが、取り立てて話題にのぼらなくなる日も近いだろう。

 さらに、もともとeスポーツ大会を観戦する人は、自身もプレイヤーであることが多かった。だが、DAY1のオープニングで、キャスターの岸大河が「『VALORANT』をプレイしていないが、VCTを観ている人」と呼びかけた際には、客席のあちこちで反応するファンの姿が見られた。eスポーツ大会を観て楽しむカルチャーは、着実に広がっているといえる。

■オフライン、公式配信、ウォッチパーティ、楽しみ方もさまざま

 会場ではコロナ対策により、大きな声を出して応援することはできない。そのため、ファンは歓声の代わりに、スティックバルーンを叩いて盛り上がる。そして、応援するチームや選手には、手づくりのユニークな応援ボードでアピールする。こうした応援方法は、すっかり定着してきたといえるだろう。

 試合が始まると、印象的なプレイやラウンドの勝利ごとに会場が沸く。DAY1に「NORTHEPTION」のMeteor選手がエースを獲得した場面では、ファンが一斉に立ち上がってスティックバルーンを叩き、一体感ある盛り上がりに包まれた。

 盛り上がっていたのは、会場だけではない。オンラインでは、YouTubeとTwitchでの公式配信に加え、人気ストリーマー9名によるウォッチパーティ(ミラー配信)も行われ、合計の最高同時接続者数はDAY1が21万、DAY2が29万を超えた。

 公式配信では、実況解説を聞きながらじっくりと試合を観戦でき、ウォッチパーティでは、ストリーマーのトークやリアクションとともに観戦を楽しめる。しかも、今回はSHAKAやじゃすぱーなど、一部のストリーマーは会場からの配信を行っていた。こうした楽しみ方の幅の広さも、盛り上がりの一因となっているだろう。

■選手の生の声が客席に響く、オフラインならではの臨場感

 さいたまスーパーアリーナは大きな会場だが、試合中には選手の生の声が聞こえる瞬間が幾度となくあった。緊迫する場面では、会場は息を呑むように静まり返り、ラウンドを取ったチームの雄叫びが聞こえると、その直後に割れんばかりのスティックバルーンの音に包まれた。

 しんと静まった会場は、想像以上に声が通る。ステージ間近のアリーナ席に限らず、かなりの席に選手たちの「ナイス!」と叫ぶ声が届いていたはずだ。そのなかでも、特に印象的だったのは、優勝をかけたGRAND FINALでの「NORTHEPTION」の選手たちの声だ。

 「NORTHEPTION」は、DAY1のUPPER FINALで「ZETA DIVISION」に0-2で敗北するも、続くLOWER FINALでは、「Crazy Raccoon」を相手に2-0で勝利。DAY2のGRAND FINALで、再び「ZETA DIVISION」に挑むこととなった。

 GRAND FINALでは、お互いに1マップを取得する展開となったが、3マップ目から止まらぬ勢いを見せたのは「NORTHEPTION」だった。ラウンドを取得するたびに、「NORTHEPTION」の選手たちの声が響き渡り、その士気の高さは会場にも伝わっていた。

 「NORTHEPTION」が優勝を勝ち取った直後、ステージ上でのインタビューで、リーダーのBlackWiz選手は「気持ちで勝った」と語っている。会場で観ていたファンの多くは、自分たちのペースに持ち込んでいく「NORTHEPTION」の気迫や勢いを、肌で感じたのではないだろうか。

■新王者「NORTHEPTION」が、国際大会Mastersに挑む

 優勝に輝いた「NORTHEPTION」は、デンマークコペンハーゲンにて開催される国際大会「VCT 2022 Masters Stage2」に、日本代表チームとして出場。大会は7月10日から7月24日にかけて行われ、最終3日間は有観客オフラインにて開催される。

 「VCT 2022 Masters Stage2」には、世界各地域の予選を勝ち上がった12チームが出場する。「ZETA DIVISION」に続き、新王者「NORTHEPTION」が世界の舞台で活躍する姿に期待したい。

(取材・文=綾本ゆかり)

(撮影=三沢光汰)