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 フィクションの世界では幽霊や超常現象を描いた作品が無数に存在する。人間が死後の世界にただならぬ関心を持っている現れでもある。

 実際に心霊体験をしたという人は意外と多い。それが気のせいなのか、本物なのかはわからないが、少なくとも我々の「心の中(脳)」には存在するようだ。

 『Spirituality in Clinical Practice』に掲載された研究では、心霊体験をある種の"症状"としてとらえようと述べている。

 研究グループが提案するこの症状の名は、「ホーンテッド・ピープル症候群(haunted people syndrome)」だ。日本語に直訳すると「幽霊人症候群」となる。

【画像】 ホーンテッド・ピープル症候群の4つの特徴

 ホーンテッド・ピープル症候群は「心霊現象らしき出来事に意味を与えるため、性格・イデオロギー・文化・過去の経験が複雑に絡み合って発症する」と、心理学者のブライアン・レイス氏は説明する。

 レイス氏とジム・ホーラン氏は、心霊現象や超常現象を理解するために研究を進めている。

 ホーンテッド・ピープル症候群は、そこから考案された彼らの主要な理論の1つで、次の4つの特徴があるという。

1. 異常な体験を心霊現象ととらえるかどうかは、体験者の背景・考え方・性格に左右される。

2. 心霊体験による不安や苦痛は、異常な体験の性質・近さ・自発性に関係する。
3. 苦痛と不安は、異常な体験をさらに起こりやすくする。
4. 異常な体験は伝染しやすい(例:異常な体験が他人に広まる)

 レイス氏らによると、心霊体験の報告や、それに関係した人々の証言の多くは、「症状」ととらえることで理解できるのだという。

 「風邪の症状とまったく同じだ。症状が重いかどうかは、程度・珍しさ・長さに基づいて診断される」と、レイス氏は説明する。

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心霊体験を生じさせる要因

 心霊体験を生じさせる重要な要因として指摘されるのが、「トランスリミナリティ」だ。

 これは意識的な自己と無意識的な自己・外部環境との境界をあらわす概念で、超心理学の分野では一般に、超感覚的知覚・幽体離脱体験・幻視体験と関連づけられている。

 今回の研究で心霊体験をしたことがある人を分析したところ、ほとんどの場合、それが起こりやすい特徴のある人が起こりやすい環境にいるときに起きていることが判明したという。

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>ホーンテッド・ピープル症候群は治療可能

 レイス氏らは、幽霊や超常体験が実際にあるものととらえ、治療することができるという。そしてそれは早期に行わなければならないと指摘する。

 心霊体験・シャーマン体験・超常体験などと一般に言われるものは、歴史を通じてよく記録されてきた。

 100年以上にわたる現代心理学の実証的な研究からも、社会がどんなに変化しても心霊体験は無くならないことが示されてきた。

 心霊体験はそれだけショッキングで、経験者を不安にさせるということだ。だから心霊体験のある人たちは、それをもっと真剣に受け止めるべきだし、周囲からもそう受け止められるべきだと、レイス氏らは主張する。

 そうした体験を否定しても、その人にとって幸福な結果につながらないという。

 レイス氏は、「医療関係者は不安やうつを抱えている患者に、それは現実ではなく、ただの思い込みなどと言ったりはしない」「ホーンテッド・ピープル症候群はさまざまな文化で共通して体験されている現象なのだから、そのようなものとして扱われるべきだ」と強調する。

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心霊体験で苦しむ人へのアドバイス

 心霊体験をどう受け止めるべきか悩む人に対し、「心霊体験がじつは珍しいものではないことや、予想可能な要素があるということを知っておくことが助けになる」と、レイス氏はアドバイスする。

 また、異常な体験を「超常現象」と解釈するかどうかに関わらず、それを経験したことで孤独や狂気を感じる必要はないという。それは次のような理由からだ。

1. 超常現象がたった1度で終わるのはきわめて稀。過去の研究によれば、微かなものやはっきりしたものなど、さまざまな超常体験をいつまでも経験するのが普通である。

2. 超常現象には、主観的側面・客観的側面の両方がある。例えば、気配を感じる、触られるといった経験は、その人にしかわからない主観的なものだ。ものが動いた、映像としてその姿が映ったなど、客観的に確認できるものもある。

 こうした特徴はホーンテッド・ピープル症候群でもっとも賛否が別れるところだが、合理的に説明しようとするにせよ、超常的な原因で説明しようとするにせよ、予測が可能であるという。

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宗教や儀式における超常現象

 レイス氏らは今後、宗教や儀式の文脈でトランスリミタリティを掘り下げる予定であるとのこと。宗教や儀式を行う人たちが、意図的に超常的な現象を起こしているのは過去の歴史が物語っている。

 「こうした人たちは、精神的・経験的な目的を達成するために、トランスリミナリティを起こりやすくする重要な精神的プロセスや手法を編み出したのではと考えている」と、レイス氏は言う。

 ケーススタディや臨床心理士との協力を通じて、ホーンテッド・ピープル症候群をさらに検証し、有意義な治療につなげたいとのことだ。

References:Haunted People Syndrome: Study sheds new light on paranormal experiences / New Psychological Research Says Paranormal Experiences Are The Norm, Not The Exception / written by hiroching / edited by / parumo

 
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心霊体験する人は意外と多い「ホーンテッド・ピープル症候群」とは?