イギリスで暮らす27歳の男性が今年1月、登山中に重度の低体温症により心停止に陥った。病院に搬送された際の体温は18.8度で、およそ3時間も心臓が停止していた男性だが、5日間の昏睡状態のあと奇跡的に生還したという。事故から5か月がたった現在、男性は手足の神経に損傷が残っているものの、それ以外は完全に回復しているそうだ。『Manchester Evening News』『The Mirror』などが伝えている。

イギリス北西部の湖水地方では、丘陵地を走るスポーツ「フェルランニング(Fell running、またはHill Running)」が盛んに行われている。

英グレーター・マンチェスターのサルフォードで暮らすトミープライスさん(Tommy Price、27)は今年1月6日フェルランニング中に低体温症に陥った。

その日、友人のマックス・サレーさん(Max Saleh)と一緒に湖水地方の丘「ブレンカスラ(Blencathra)」 を登っていたトミーさんは突然意識が混濁した後、体温が下がり心停止したという。

すぐに助けを呼ぼうとしたマックスさんだったが、運悪く2人の携帯電話バッテリーが残っていなかったため、トミーさんを山腹に残したまま助けを求めに行くことになったそうだ。

事故から5か月が経った現在、手足の神経に損傷が残るものの、それ以外は完全に回復したトミーさんは当時のことをこのように振り返った。

「あの時のことは何も覚えていません。マックスが助けを呼びに行っている間、吹雪で何も見えない中で立ち上がろうとしたら10メートルほど落ちてしまいました。山岳救助隊が到着したのはそれから1時間15分後で、私は重度の低体温症により心停止していました。ヘリコプターに乗り込むまで電気ショックを3回受け、心肺蘇生が行われたものの効果がなかったそうです。」

ロイヤルヴィクトリア病院(Royal Victoria Infirmary)に搬送された時のトミーさんの体温は18.8度だったそうで、到着してすぐに体外式膜型人工肺「ECMO」により体を温めるための治療を受けたという。

「私の心臓は約3時間も止まっていたんです。幸いにも心臓は動き出しましたが再び心停止する可能性もあったので、当時はただ待つことしかできませんでした。医師からは助かる見込みはないと告げられていたし、良い結果にはならないだろうと言われていましたから。」

それから5日間昏睡状態が続いたのち意識を取り戻したトミーさんは、目覚めてすぐにコーラを飲みたいと話したそうで「集中治療室で目を覚ました時は何が起こったのか分からず、交通事故か何かに遭ったのかと思いました。私の記憶は2日前から止まっていましたから。今こうして生きていることは本当にラッキーだと思います」と語った。

トミーさんの救助にあたったケズウィック山岳救助隊(Keswick Mountain Rescue Team)は今回の事故の詳細をFacebookに投稿しており、そこにはフェルランニングを行う際の注意点として次のように綴られている。

「事故から5か月が経ちました。奇跡的に死を免れた彼は順調に回復しており、フェルランニングを再開しています。彼はかなりの低体温を記録したひとりでまさに驚きのサバイバルストーリーであり、関係者全員のプロ意識の高さを証明するものでした。」

フェルランナーは身軽な人が多く、山や丘を走ることで熱を生み出すので実際に衣服はそれほど必要ではありません。何事も起こらなければそれでもいいのです。しかし私たちは今回の事故を通じ、フェルランニングをする人たちへの警鐘になることを期待したいです。予備の衣服やサバイバルバッグはそれほど重いものではありません。所持しているかいないかで生死を分ける可能性があります。」

画像は『Manchester Evening News 2022年6月26日付「“My heart stopped for THREE HOURS”: Man, 27, from Salford cheats death after catching hypothermia on a mountain – they didn’t think he was going to make it」(Image: Tommy Price)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)

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