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TGR-E副会長としての中嶋一貴

中嶋一貴は、耐久レースの高み、低み、試練、苦難を知っている。ル・マン24時間レースでは、トヨタハイブリッドカーで3連覇を達成したが、2016年レースでは、最終ラップマシントラブルで停止し、あと一歩のところで首位を逃がすなど、苦い経験も味わった。

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ハイパーカー」での耐久レースに挑むガズー・レーシングを率いるのに、ドライバーを引退したばかりの彼以外に誰がふさわしいだろうか。37歳の彼が、トヨタガズー・レーシングヨーロッパ(TGR-E)の副会長という肩書きを持つにはまだ若いと思う人もいるかもしれない。

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中嶋一貴氏とトヨタトムス85C

しかし、英AUTOCAR編集部がグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで彼に話を聞いたところ、この役割にとてもふさわしい人物であることは明らかだった。

――ご就任、おめでとうございます。移籍のきっかけは何だったのでしょうか?

「自分に提示された役割だと思います。本当に驚きでした。オファーを受ける前は、日本でキャリアを続けることしか考えていませんでしたが、この新しい役割を与えられたおかげで、若い世代のドライバーレースそのものの未来に焦点を当てることができるようになりました」

「新しいテクノロジーがどんどん出てきて、カーボンニュートラルのレギュレーションも変わってきていますし、モータースポーツを取り巻く環境は一筋縄ではいかないんです。このような状況に挑戦できるというのは、とても刺激的ですね。出てきた新しいテクノロジーをどうモータースポーツに生かすかが課題です。僕にとっては、クルマを運転しなくても、レースはエキサイティングなんです」

水素エンジン技術も解決策の1つに

――テクノロジーが増えていくのは楽しみですか?

テクノロジーは、レーシングカードライバーとして常に歓迎すべきものです。ル・マンは、新しいテクノロジーを実証し、開発するのに非常に適しています。ディーゼルリードしていた時代もありましたが、その後ハイブリッドが導入されて世界を席巻し、今ではワールドラリーなど他のカテゴリーにも広がっています」

「僕らは今、電気と水素について議論を始めています。トヨタガズー・レーシングにとって、ル・マンは新しいアイデアを披露し、モータースポーツ活動からより良いクルマを作るのに最適な場なのです」

――主役となりそうなパワートレインはありますか?

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トヨタは既存のエンジンベースとした水素燃焼エンジン技術の開発に取り組んでいる。

トヨタでは一般的に、お客様にもっともっと多くの選択肢を提供しようと考えています。電気だけでなく、水素もそうですし、内燃機関もまだ推しています。特に、(トヨタの社長である)豊田章男が乗っている日本の水素燃焼レーシングカーを見ると、その開発スピードは目を見張るものがありますね。相当なものですよ」

「このプロジェクトで楽しみなのは、内燃機関を残しつつ、カーボンニュートラルを同時に実現できることです。個人的には、エキサイティングなエンジン音は失いたくないので、これが解決策の1つになればと思います」

――水素技術が主役になることはあるのでしょうか?

ハイブリッド技術は、はじめの方こそそれほど手頃な価格ではありませんでしたが、お客様からの需要が増えれば、価格は下がります。水素自動車の部品や技術のほとんどは、通常のICE(内燃機関)と同じです。だから、技術的にはうまくやれる方法がある。エネルギー供給が別の問題としてありますが、その点は世界も変わってきているので、実現可能なはずです」

ル・マンは来年が勝負 トヨタの技術活かせるか

――合成燃料についてどう思われますか?

「解決策にはなり得ると思いますが、結局は政治次第ではないでしょうか。今のところ、欧州で政治的に合成燃料を推進していないのは、ちょっと残念ですね。モータースポーツをはじめ、いろいろなところでいい解決策になると思うのですが。そうなることを強く願っています」

「結局、解決策は1つではなく、それぞれの社会や個人の状況に応じて、たくさんの選択肢から選ぶ必要があるのです。なので、新しいテクノロジーがたくさん出てくるのは良いことだと思います」

――新しいル・マン・ハイパーカーの進捗はいかがですか?

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2023年WEC世界耐久選手権)にプジョーフェラーリといったビッグネームが復帰する。

「とても順調です。ホモロゲーションの観点から開発には多くの制約がありますが、レーサーからはポジティブコメントをもらっています。来年は明らかに、僕らにとって大きな年になります。今まで以上に多くのメーカーWECル・マンに参戦しますから、この10年で培ってきた僕らの能力を発揮するときです」

「この点は、他と比べて有利なところです。他のメーカーがどのように挑戦してくるのか、とても楽しみです。彼らはとても強いので、僕らもしっかり準備をしなければいけませんが、ビッグネームの前で自分たちの力を試せるのはとても楽しみです」

――ドライバーとしての経験は、新しい役割にどのように役立っていますか?

「僕は、チームの中でできるだけ多くの会話に参加して、自分の意見を言うようにしています。(ドライバー時代は)チームとしてすべての瞬間を共有し、そのすべての経験が僕らを強くしてくれた。そして今、僕らは山あり谷ありの経験を積んで、どんな困難にも立ち向かえるようになったと感じています。チームはますます自信を深めています」


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