2022年1月、埼玉県ふじみ野市の自宅で無職の渡邊宏容疑者(66)が人質を取って立てこもり、散弾銃鈴木純一医師(当時44)を殺害した事件。さいたま地検は7月1日、渡邊容疑者を殺人などの疑いで起訴した。精神鑑定の結果「刑事責任を問える」と判断されたという。

 調べに対し「医師を殺して自殺しようと思った」と供述していたという渡邊容疑者。閑静な住宅街で一体何が起きたのか。凄惨な事件を報じた「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2022年2月10日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

◆◆◆

 埼玉県ふじみ野市の自宅に人質を取って立てこもり、散弾銃鈴木純一医師を殺害した無職の渡辺宏容疑者。

 2020年8月、友人に「タイガーマスクの番組をどうしても観たい。ダビングしてもらえないか」と頼んでいたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

何でも屋とかにも聞いたけど、やってくれない

 渡辺がどうしても観たがったのは、20年8月18日NHK BSプレミアムで放送された「アナザーストーリーズ 運命の分岐点 タイガーマスク伝説~愛と夢を届けるヒーローの真実~」という番組。1980年代に覆面レスラーとして一世を風靡したが、現在は重い病と向き合っている初代タイガーマスク佐山聡の葛藤を描くドキュメンタリーだ。

 渡辺は友人にこう相談した。

「何でも屋とかにも聞いたけど、やってくれないんだよ。何か伝手ないですか」

と二人暮らしを続けてきた渡辺

 その友人が語る。

「何度か電話で相談が続きました。私が『値段いくらになるか分かんないよ。三万ぐらいかかるかもよ』と言うと、渡辺さんは『三万でもお願いします』と。最終的には諦めたようでしたが、きっと病気で弱っている自身の母親とタイガーマスクとを重ね合わせて、プロレスラーの闘病生活に希望を見出そうとしたのでしょう」

 両親が別離してからは母と二人暮らしを続けてきた渡辺。介護という美名のもと、医療関係者・介護関係者の前で時に身勝手な振る舞いを続け、最後に暴発したのだった。

 このほか、渡辺が最後にすがった“魔除け”、小・中学校時代の同級生が語る渡辺、都内の信金に就職するも借金取りに追われた理由、元担当医に宛てて苦情を記した手紙、鈴木医師と渡辺の意見が対立した問題など、「週刊文春 電子版」が報じている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年2月10日号)

送検される渡辺容疑者