また髪の話をしよう。良い方の話だ。我々の毛穴の中には、発毛の司令塔がある。それが「毛乳頭」という組織で、これが周囲の「毛母細胞」に発毛指令を出すことで髪の毛が生えてくる。
米カリフォルニア大学アーバイン校などの研究グループが、この発毛指令を伝える「シグナル伝達分子」を休止期にある人間の毛包に注入したところ、髪の毛の成長がうながされることが確認されたそうだ。
研究グループによれば、このシグナル伝達分子は「次世代の禿頭症治療の理想的な候補」であるとのことだ。
シグナル伝達分子「SCUBE3」は毛乳頭で自然に作られている分子で、付近の毛包幹細胞に「毛を生やせ」と指令を伝える役割があることがわかった。
毛が効率的に成長するには不可欠な分子だ。だから毛乳頭がSCUBE3をうまく生産できなくなるとハゲてしまう。これが男性型禿頭症だ。
そこで今回の研究では、マウスに休止期にある人間の毛包を移植し、そこに微量のSCUBE3を注入するという実験を行なった。
すると人間の毛包とその周囲のマウスの毛包が新たに成長を開始することが確認されたのだ。
通常のマウスの皮膚では、成長期の毛乳頭にしかSCUBE3が発現せず、休止期のものにはない。これを微量に注入すると新たに発毛が誘発された/Image credit: Liu et al., doi: 10.1016/j.devcel.2022.06.005.
次世代の禿頭症治療として期待
研究グループのクリスチャン・ゲレーロ=フアレス博士は、この実験から「SCUBE3やその派生分子がハゲの治療として有望であるという原理実証データ」がえられたと語る。
研究の筆頭著者であるマクシム・ピリクス教授は、「禿頭症の効果的な新治療が強く求められている。毛乳頭細胞が普通に使っている天然の化学物質は、次世代ハゲ治療の理想的な候補」と付け加える。
この研究は、『Developmental Cell』(2022年6月30日付)に掲載された。
References:Newly-Discovered Signaling Molecule Stimulates Hair Multiplication and Growth | Sci-News.com / written by hiroching / edited by / parumo
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