◆“キッズ”たちが大人の餌食になっている

 少年少女たちの“狩り場”となっているのだろうか? 今年6月22日、東京・歌舞伎町の通称「トー横」で、“ハウル”と名乗っていた男が16歳の少女にみだらな行為をしたとして、警視庁に逮捕された。

 その1週間前の6月14日には、名古屋・栄で14歳の少女を自宅に誘い、みだらな行為をしたとして、24歳の男も条例違反容疑で愛知県警に逮捕されている。男と少女は今年2月に名古屋・栄の広場、通称「ドン横」で知り合い、その後家出をした少女を自宅で寝泊まりさせていたという。

 この名古屋市中区錦のドン・キホーテ栄本店の横の意から「ドン横キッズ」以外にも、大阪市中央区道頓堀グリコサインの下の意から「グリ下キッズ」、福岡市中央区天神の警固公園(けごこうえん)周辺の「警固界隈キッズ」など、10~20代の若者が繁華街に集まる現象が日本各地で発生している。その発端は、やはり「トー横キッズ」の存在にほかならない。

◆トー横キッズ自撮り界隈だった

 トー横キッズが一般的認知されたのは、2021年11月27日、新宿・歌舞伎町の雑居ビルの屋上で、ホームレス男性がリンチされ死亡するという凄惨な事件からだろう。逮捕された犯人グループの中の2人の少年は、歌舞伎町新宿東宝ビル周辺に集まる通称「トー横キッズ」と呼ばれる彷徨える未成年たちだった。彼らの生態に迫った「『ぴえん』という病」の著者であるライター佐々木チワワ氏は、キッズたちの由来についてこう語る。

「もともとは自身の自撮り画像をSNSに上げて楽しむ“自撮り界隈”が、オフ会の待ち合わせ的に歌舞伎町シンボルになったTOHOビルの周辺で待ち合わせをしはじめたのが発端です。そこにバーテンダーなども出入りし、未成年も混じっていたことから路上でも飲むというコミュニティに発展。そんな若い集団を、歌舞伎町の人々が『キッズ』と呼びだしたのが由来です。そして、2021年の6月ごろから“居場所のない未成年が集まる”とメディアで報道されたことにより、さらに低年齢化、居場所化は進んでいる印象です」

◆悪いのはキッズたちではない

「トー横キッズ」について、現地にいるキッズに話を聞いたが、「いじめや上下関係とかになじめない人間の集まりなので。皆さんが思っている以上にフラットで緩く、思いやりにあふれた、優しい空間」と語る姿が印象的だった。

 しかし、実際は集団リンチ事件以外にも、薬物を摂取したとみられる10代の男女が建物から飛び降り自殺、未成年が詐欺グループに誘われ性犯罪に巻き込まれるなど、薬物、性暴力、傷害事件など数々のトラブルが発生し続けている。「トー横キッズ」は 犯罪の温床とも言われているが、前出の佐々木氏はこう否定する。

「報道が増えるほどに、未成年たちが救いを求めてやってきてしまっている。少年少女のなかには親から虐待を受けていたり、精神的な病を抱えていたり、地元に居場所がない子が多い。まだ未成年で流されやすい部分もあると思う。そんな彼らを、悪い大人が利用している印象が強い。日本全国に広がる“キッズ”の問題は、未成年の問題として片づけるのではなく、大人の問題という意識で包括的に見るべきだと思います」

◆トー横キッズは社会全体の問題

 こうした状況下に警視庁は、2021年12月初めに新宿東宝ビル周辺を私服の警察官などおよそ100人を動員して大規模なパトロールを行い、中学生高校生など17人を補導したことにより一旦沈静化したように思えたが、一部で「トー横第2世代」と呼ばれている少年少女たちがこの春からに新宿東宝ビル周辺にたむろするようになり、そこで14歳の少女がインターネットカフェで売春したとして逮捕された。買っているのは、大人だ。

「正しく厳しい言葉を言う大人より、間違っていても居場所をくれて肯定してくれる大人についていきたくなる、そんな少年少女たちを完全に非難することは難しいのではないでしょうか。歌舞伎町自体がそもそも、お金さえ払えばだれでも承認してくれる街ですから。家庭の問題や学校の問題など、それは引いては親の問題、社会の問題。そのすべてのしわ寄せが弱い子供たちに向いている。『最近の子供たちは……』と憂うだけでは意味がない。社会全体の問題です」

 日本各地で増え続けている彷徨えるキッズたち。正しい大人ならば、彼らを利用するのではく、救うべきではないだろうか。

取材・文/ジャスト日本

佐々木チワワ
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代フォーカスした記事を多数執筆。ツイッター@chiwawa_sasaki