もし死期が近いとしたら、最期には何がしたいだろう。飲みたくても飲めなかったお酒を飲みたいという人もいれば、タバコを吸いたい、あるいは大好きなアイスクリームを食べたいという人もいるだろう。オーストラリア在住のある女性は、病床の父に注射筒(シリンジ)を使ってラム酒を振舞ったという。『LADbible』などが伝えた。

オーストラリア在住のペネロープ・アンさんが先月30日、TikTokに投稿した父との最期のひと時を捉えた動画が拡散している。

動画は入院中の父が飲みたがっていたラム酒ペネロープさんが注射筒で口に含ませるもので、「父さんの魂が天に召される前の最期の飲酒よ。私たちが再びあなたに会える日まで…。父さん。大好きだよ」と言葉が添えられている。

ベッドのそばにはペネロープさんの母が座っており、カメラの前にいるペネロープさんはオーストラリア人に愛されているラム酒「バンダバーグ・ラム」と注射筒を見せると、「父との別れの準備をしてきたの。父にちょっとだけラム酒コカ・コーラを味わってもらうわ」と説明した。

そしてペネロープさんが注射筒で缶に入ったラム酒を吸い取っている間、母は横向きに寝ている自身の夫に「ラムを持ってきたわよ。これから注射筒に入れたものを口に含ませるからね」と語りかけている。

ペネロープさんはその後、父のそばにやって来てラム酒を与え「美味しいでしょう?」と2度質問、これに父はしっかり頷いてみせた。

そんな父にペネロープさんは「もちろん、そうよね!」とカメラに笑顔を見せており、この動画には次のようなコメントが寄せられた。

「私は緩和ケアの看護師だけど、これは最高のケアよ。」
「私も同じ職場で働く看護師。これは特別な瞬間! お父さんはきっとあなたに感謝しているわよ!」
「私も看護師。最期の願いを叶えるために、見て見ぬ振りをしたことは何度もあるわ。」
「糖尿病で入院していた患者は最期にチョコを食べたがってね。亡くなる前にほんの少しだけ口にしたの。喜んでいたと思う。」
スコットランド出身の母がホスピスにいた時は、ストロースコッチ・ウイスキーを飲んだわ。そうしてみんなで乾杯したのよ。」
「この動画を4度も見たよ。自分の父にもこうしてあげたかったな。」
「悲しい別れの動画は何度も見たけど、これは素敵だね。」
「私の父が亡くなった時はビートルズの曲をかけたんだ。ほとんど意識はなかったけど、大好きな曲が流れたら片足でタップを踏んでいたよ。あの時の姿は生涯忘れないね。」
「私の友達の父は20年間断酒をしていたの。でも亡くなる前に家族がビールを持ち込んで最期の一口を味わっていた。」
「私の祖母は亡くなる数時間前、『ビールを飲みたい』と言っていた。でもダメだと言われて叶わなかった。」
「私の父は51歳で健康には何の問題もなかったのに、先週心臓発作を起こして2時間後には逝ってしまった。残念で仕方ない。」
「これは美しいと思う。涙が止まらないよ。どうか安らかに!」

ちなみにペネロープさんの父は肺に炎症が起きて呼吸がしにくくなる「慢性閉塞性肺疾患」とその合併症により長年入退院を繰り返してきたそうで、この動画は父との最期のやり取りとなった15分間に撮影されたものという。

TikTokには「あまりにもプライベートなことは投稿すべきでない」という意見もあったそうだが、ペネロープさんは「多くの人とこの動画をシェアできたことをとても嬉しく思っている」と明かし、こう述べた。

「実は父の死期が近いことは分かっていたの。ただ本当にその時が来ると、やはりつらいものでね。『ラム酒を飲みたい』というのは父の願いで、父と話し合って決めたことよ。父には最期に『いつ逝っても大丈夫よ。母の世話は私が見るから、心配しないでね』と伝えたの。父は軽く頷いていたわ。そして父は、翌朝まで待たずにあっという間に逝ってしまったの。」

「父を失った後は全身が重く、喪失感でどうにかなりそうだった。体がこんなふうになるなんて思いもしなかったけど、母はもっと酷くてね。そんな母を見るのが一番つらかった。」

「ただ撮影した動画には励ましの温かい言葉がたくさん寄せられて、母もとても感謝していたわ。それに私は、ああやって父との最期のやり取りを遺せたことをとても嬉しく思っているの。だって、父との動画は私の宝物だから。一生大切にするわ!」

画像は『LADbible 2022年7月4日付「Aussie Woman Smuggles In A Rum And Coke To Give Her Dying Dad His Final Drink」(Featured Image Credit: @Penface/TikTok.)』『penface 2022年6月30日付TikTok「One last drink with dad before his spirit returned to the universe.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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