マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のヒーローとして、初めて単独映画4作目が公開される雷神ソー(クリス・ヘムズワース)。それまでのシリーズから方向転換し、大ヒットとなった前作『マイティ・ソー バトルロイヤル(17)に続き、タイカ・ワイティティが監督を続投する『ソー:ラブ&サンダー』は、7月8日(金)に日米同時公開となる。本作は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)でサノスを倒したあと、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と宇宙に旅立ったソーのその後を描く物語だ。MCUのなかでもコメディ色の強い2組のコラボという点でも注目が集まっている。

【写真を見る】ハイテンションなソーはどうした!?打って変わって、穏やかになったソー(『ソー:ラブ&サンダー』)

さらにソーの元恋人ジェーンフォスター(ナタリー・ポートマン)も、単独2作目『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(13)以来のカムバック。しかも彼女には本作で、新たな役回りが与えられているようだ。ソーは新たな冒険で、どんな仲間たちとどんな敵に立ち向かうことになるのか。今回は、『ソー:ラブ&サンダー』に登場するキャラクターを紹介し、これまでのシリーズでの活躍を復習していきたい。

■一気に穏やかになった快活な雷神、ソー

神々の国アスガルドの元王である雷神ソー。単独1作目『マイティ・ソー』(11)で描かれた傲慢な王子から、3作目の『バトルロイヤル』では、「国とは土地ではなく民である」という境地に達し、王として民を守る決意をした。しかし、続く『アベンジャーズインフィニティ・ウォー』(18)では、アスガルドの民を乗せた避難船がサノスに襲われ、義弟ロキをはじめとする多くの民が命を落とす事態に。サノスのデシメーションを生き残ったソーは、ヴァルキリー(テッサトンプソン)と共にノルウェーのある町にニュー・アスガルドを築くが、『エンドゲーム』冒頭でサノスに復讐を果たしたあとは無気力になって自堕落な日々を過ごし、それが体型にも現れてしまっていた。しかしその後、アベンジャーズの仲間たちと宇宙に平和を取り戻す。そして彼は、ニュー・アスガルドヴァルキリーに託し、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と“自分探しの旅”に出た。

バトルロイヤル』のヒットのためか、現在ではコミカルなイメージのあるソーだが、彼が歩んできた道は厳しいものだった。家族やアスガルドの土地と民など、大切なものを多く失ってきた彼は、本作で「ヒーローをやめる」、「戦いはもう終わりだ」と宣言。しかし彼はこれからなにをするのか、どうやって生きていくのかノープランらしい。最強の雷神は行きあたりばったりの旅で、新たな人生を見つけることができるのだろうか。

■まさかのカムバック!ヒロイン&元カノ、ジェーン

『ラブ&サンダー』の登場人物のなかで、誰よりも注目を集めているのはソーの元カノ、ジェーンフォスターだ。天文物理学者の彼女は、『マイティ・ソー』でアスガルドを追放され、地球に墜落したソーに出会った。当初は彼の豪快すぎる性格と自身を神だという言動に困惑し、反発していたが、アスガルドの歴史(北欧神話の世界)と自分の研究に共通点を見いだし、ソーに惹かれていく。しかし2人は人間と神という立場の違いから常に一緒にいることは許されず、離ればなれでいることが多かった。逆にそれが彼らの関係をロマンチックにしていたと言っていいだろう。ところが私たち観客は、『バトルロイヤル』で突然彼らの破局を知ることになる。道端でソーと写真を撮った一般人が、「ジェーンとは残念だったね」と言って去っていったのだ。あまりにもあっさり。いったい2人の間になにがあったのだろうか。

そんなジェーンは、今回新たなヒーロー“マイティ・ソー”として元カレと再会するようだ。予告編では、彼女は雷神の力を得て、なぜかソーの姉ヘラに破壊されたはずのムジョルニアを持って登場。見事にビルドアップされた力強い肉体は、彼女がたしかに雷神なのだと感じさせる。ジェーンはデシメーションで5年間消えていたため、復活してからの3、4年の間になにかがあったのだろう。コミックでは彼女はガンを患い、闘病生活をしながらヒーロー活動をしている。映画でもその設定は反映されているようで、それが物語にどんな影響を与えるのか注目だ。もちろん彼女に未練タラタラのソーとの復縁も期待される。

■頼れるサバサバ女性戦士、ヴァルキリー

バトルロイヤル』で初登場し、ソーの頼もしい仲間となったヴァルキリーは、いまやニュー・アスガルドの王として国を統治している。彼女はもともと女性だけで編成されるアスガルド最強の部隊の一員だったが、太古の時代にヘラとの戦いで仲間を失い、自分だけが生き残った。その過去から戦いへの気力を失い、惑星サカールで賞金稼ぎとして暮らすようになる。しかし、ソーやハルクブルース・バナーと出会ってかつての自分を取り戻し、再びヘラと対峙したのだ。『エンドゲーム』の最後の戦いでもアベンジャーズに加勢し活躍を見せた。その後、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と旅に出るソーを見送った彼女だが、ニュー・アスガルドの統治には苦労しているらしい。

『ラブ&サンダー』では、世界の危機に瀕してソーと行動を共にするようだ。またコミックでのヴァルキリーバイセクシュアルのキャラクターで、MCUでもその設定は反映されている。監督のタイカ・ワイティティは、本作でのヴァルキリーについて「(アスガルドの)新たな王として、彼女にとっての女王を探さなくてはなりません」と発言。ソーとジェーンだけでなく、彼女の恋愛模様も気になるところだ。

■おちゃらけているが実はしっかり者なピーター・クイル

『ラブ&サンダー』に登場することで話題になっているガーディアンズ・オブ・ギャラクシー。彼らはソーとどのくらい行動を共にするかはわからないが、MCUでコミカルな要素を担うこの2組が同じ画面に収まるとなると、否応なしに期待は高まる。

ガーディアンズのリーダー、スター・ロードことピーター・クイル(クリス・プラット)は、宇宙を股にかけるトレジャー・ハンター。幼少期、地球に住んでいた彼は宇宙海賊ラヴェジャーズに誘拐され、そのリーダーであるヨンドゥ(マイケル・ルーカー)に育てられた。しかし彼の実の父は強大な力を持つ天界人エゴ(カートラッセル)で、ある目的のために地球人の女性に息子を産ませたのだった。

お調子者だがたしかなリーダーシップを持つクイルは、クセ者ぞろいのガーディアンズをまとめ上げており、このチームの結成によって、彼は単なる泥棒ではなく、ヒーローとしても活躍するように。また、チームの一員でサノスの養女であるガモーラ(ゾーイ・サルダナ)とはいい雰囲気になったが、彼女の死によって悲しい別れを迎えることになる。

『エンドゲーム』の最後で宇宙船べネターにソーを乗せて旅立った彼らだが、クイルとソーはリーダーの座を巡ってちょっとした対立を見せた。ソーはこのチームを「アスガーディアンズ(アスガルド人)・オブ・ギャラクシー」に改名するとまで言い、クイルをイラつかせる場面も。『ラブ&サンダー』では、この2人の“リーダー”の小競り合いも楽しい見どころとなるだろう。

サノス戦でも大活躍!天才アライグマロケット

ガーディアンズのなかでも凶暴な性格のロケットは、アライグマの姿だが実はもともとは人間だ。百戦錬磨の傭兵兼賞金稼ぎである彼は、遺伝子改造で現在の姿になってしまった。高度な知能を持ち、武器のエキスパートでもある彼は、親友兼相棒であるグルートと共に、惑星ザンダーで賞金首となったクイルをねらっていた。しかし彼が逮捕された際に巻き込まれ、共に刑務所にぶち込まれるハメに。ガーディアンズ結成後は、悪態をつきながらも仲間のために奔走する人情に厚い面も見せている。『エンドゲーム』では、ロケットは惑星ニダべリアでソーの新たな武器となるストームブレイカーを鋳造するのを手伝った。ガーディアンズのなかでは、ソーと親しいほうだと言えるだろう。

■仲間想いだが、現在は反抗期中?なグルート

ロケットの親友兼相棒であるグルートも、ストームブレイカーを作るのを手伝っている。彼は木のヒューマノイドで、ストームブレイカーの柄は彼の枝でできているのだ。「私はグルート(I am Groot.)」としかしゃべれないが、ロケットをはじめガーディアンズの面々は彼の意思を理解し、コミュニケーションを取ることができる。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)で仲間を守るためにバラバラになってしまったグルートは、それ以降の作品では少しずつ成長し、子どもの“ベイビー・グルート”や反抗期の“ティーン・グルート”として活躍。1作目以上に人気を獲得した。『ラブ&サンダー』には、ティーン・グルートの姿で登場するようだ。

■ズレたところも愛らしい!屈強な元囚人、ドラックス

クイルたちが刑務所で出会ったドラックス(デイヴ・バウティスタ)は、最も凶悪な囚人として恐れられていた。しかし、サノスと結託したロナンに家族を殺された彼は、その復讐を誓い、クイルたちと行動を共にするようになる。屈強な戦士だが素朴な性格の彼は、ズレた言動で周囲を引かせることも多いが、情に厚い人物。ガーディアンズの面々のことは「新しい家族」と公言するほど大切に思っている。

■心を読む&操るエイリアン、マンティス

クイルの父エゴに仕えていたマンティス(ポム・クレメンティエフ)は、触れた相手の感情を読んだり、心を操ったりするエンパシー(共感能力)を持つエイリアンだ。エゴと2人きりで暮らしていたため、当初は他人との距離をはかるのが苦手だったが、GOGに迎え入れられてからはコミュニケーション能力も向上した。特にドラックスとは仲がよく、彼は彼女に亡き娘の面影を見ている。

■哀しき人生を歩んできたサイボーグ、ネビュラ

ネビュラ(カレン・ギラン)は暗殺者として育てられ、サイボーグ化されたサノスの義理の養女だ。義姉のガモーラに愛憎入り交じる複雑な感情を抱いていたが、彼女との関係が改善するにつれてガーディアンズに協力するようになる。『エンドゲーム』ではアベンジャーズ陣営に加わり、その後ガーディアンズの一員となった。

■ソーたちの前に立ち塞がる恐ろしいヴィラン、ゴア

ソー:ラブ&サンダー』でソーたちの前に立ち塞がるのが、“神殺し”の異名を持つゴア(クリスチャン・ベール)。かつては神を信じ祈りを捧げていたが、最愛の娘を失ったのを機に、神の存在を疑うように。そしてある時、神と遭遇した彼は、“それ”が自分のことしか考えていないと知り激昂。ついに神を完全否定したゴアは、“神を殺す力”を手にし、全宇宙の神々を殲滅することを決意する。

ゴアが手に入れた神を殺す力とは、真っ黒な剣“ネクロソード”。原作コミックでは、映画「ヴェノム」シリーズでもおなじみのエイリアン共生体、シンビオートの一種である“オール・ブラック”が変形した剣で、それ自体が星一つを破壊するほどの力を持った恐ろしい武器だ。シンビオートは寄主と感情や衝動が一致すると強く結びつき、超人的な力を与えるため、ゴアの神々に対する憎悪と結びつくことでとんでもない威力を発揮する。

すべての神を殺すことを目的としているゴアにとって、雷神であるソーももちろんターゲットの一人だ。前作以降ポップな雰囲気となった「ソー」シリーズだが、ゴアはその作風に合うのか少し不安になるほど、ダークで悲しい過去を持つヴィランと言える。ソーとガーディアンズとの掛け合いはもちろん、ジェーンマイティ・ソーになった経緯も気になる『ソー:ラブ&サンダー』。笑いとシリアスのバランスが絶妙な作品になっていることに期待したい。

文/瀧川かおり

3年ぶりとなるソーの単独映画『ソー:ラブ&サンダー』では、どんなキャラクターが活躍するのか?/[c]Marvel Studios 2022