今年6月に急逝したノンフィクション作家の森崎和江さんの代表作『からゆきさん』(朝日文庫)の緊急重版が決定しました。戦前の日本で、貧しさゆえに外国の娼館に売られた少女たちがいた。国外に売られ、狂死したキミ。南方で財をなし、壮絶な自殺を遂げたヨシ。綿密な取材と膨大な資料をもとに、ふたりの からゆきさんの人生を綴った傑作ノンフィクションです。重版に合わせて、朝日新聞出版公式note「さんぽ」での、7月8日から10日までの3日間限定の全文公開も決定しました。

朝日新聞出版公式note「さんぽ
森崎和江『からゆきさん』特別全文公開ページ

【特別全文公開】異国に売られていった女性たちを取材 故・森崎和江さん代表作『からゆきさん』
https://note.com/asahi_books/n/n817df4c10773

【内容紹介】
16歳で朝鮮に売られ、狂死したキミ。東南アジアで財を成し、壮絶な自殺を遂げたヨシ。ふるさとを思い、売られていった女たちが、異国の地で見た夢は何だったのか? 綿密な取材と膨大な資料をもとに、「からゆきさん」の軌跡を辿ったノンフィクションの金字塔。
性暴力や人身売買で苦しむ女性たちが世界各地で未だに数多く存在する21世紀の今こそ、読まれるべき必読の書。

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口べらしのために「養女」の名目で海外に売られた少女たちが多数いたこと。年少の少女はたった十二歳だったこと。「せり場」で落とされるという、文字通りの人身売買が堂々と行われていたこと。朝鮮半島や中国のみならず、シベリア、上海、ハワイ、アメリカ、オーストラリアにいたるまで、娼妓として連れてこられた日本人の娘たちがいたこと。いちいち衝撃的です。
からゆきさんが続出した背景には日本の公娼制度があり、それは当時の植民地政策とも結びついていました。外国人の手で大陸に売られたおキミたち。その延長線上で、今度は日本人の手で台湾や朝鮮の娘たちが連れ出される。
〈飢えて、食べもの異邦人に求めていたぶられ、刑場に消える朝鮮の女たち。飢えて、養女に出されて美服をまとい、苦界に死にゆく日本の娘たち。どちらもこのような現実のなかで、くには諸外国と交流しはじめたのである〉と、森崎は書きます。国家が個人の人生を左右すること、とりわけ女性の性を売り買いすることへの深い怒りが、そこには込められています。
〈中略〉
長崎からロシアへ向かった「おろしや女郎衆」。上海の娼楼からシンガポールを経てインドで成功したおヨシ。プノンペンでフランス人と結婚したおサナ。「海外醜業婦」という言葉ではくくりきれない多様な女性たちの姿は、本書のもうひとつの読みどころです。むろん、それは〈この村びとの伝統を悪用したものにいきどおりを感じている〉という慨嘆ともひと続きなのですが。
〈中略〉
そう考えるとき、『からゆきさん』は、あらためて、二十一世紀のいまこそ読まれるべき本だといえましょう。四十年前の森崎和江が私たちのカンテラであったように、本書が、性の商品化を、国際間、地域間の経済格差を、そして女性の生き方を考えるうえでの、大きな手がかりであることはまちがいありません。
(斎藤美奈子「解説」より)

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【著者略歴】
森崎和江(もりさきかずえ)
1927年朝鮮慶尚北道大邱府(現韓国大邱市)生まれ。詩人、作家。17歳福岡県立女子専門学校(現福岡女子大学)に入学するまで、植民地時代の朝鮮で過ごす。丸山豊らの詩誌「母音」に参加し、58年に谷川雁、上野英信らと雑誌「サークル村」を創刊。59年には雑誌「無名通信」を刊行。61年に初の単行本『まっくら』を出版。以後、『第三の性』『闘いとエロス』など、数多くの作品を発表する。2022年、逝去。著書に、『語りべの海』『森崎和江コレクション 精神史の旅』、中島岳志との共著『日本断層論』など多数。

『からゆきさん 異国に売られた少女たち』(朝日文庫)
著者:森崎和江
定価:682円(本体620円+税10%)
発売日:2016年8月5日(金曜日)
https://www.amazon.co.jp/dp/4022618744

配信元企業:株式会社朝日新聞出版

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