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新型コロナの余波が続くなか、家計がピンチになる家庭が急増している。

新型コロナの影響が想定外に長引いたので、さまざまな業種が影響を受けています。毎月の家賃や光熱費の支払いに追われて、思わず消費者金融やクレジットカードのキャッシングに頼る人もいるようですが、返済の利息が高くつきますので絶対にNGです。リストラや収入減のピンチに陥った際の給付金や支援金のほかにも、公共料金の支払いが免除される制度などを知っておくと、いざというときに役立ちますよ」

そうアドバイスするのは、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。

給付金や、支払ったお金の一部が戻ってくる還付金、または支払いそのものが免除される特例など。こうした制度は、言い方を変えれば、“申請すればもらえるお金”といえるだろう。

知っておきたいのは、コロナ関連の給付金や減免措置だけでなく、病気や失業したときに受け取れるお金もあるということ。

正社員だけしかもらえない」と思い込んでいる人も多いが、実はパート・アルバイトも受け取れる対象になっているケースが多いので、しっかり押さえておきたい。

■確実にお金を「もらう」ために確認しておきたい3つのポイント

コロナ関連の給付金以外にも、払いすぎた医療費が戻ってくる「高額療養費制度」など、さまざまな場面で「もらえるお金」。だが、それらは基本的に自分で申請しなければもらえないシステムになっているなど、漏れなく給付を受けるためには注意すべき点も多い。

通知が来るのを待っていてそのまま忘れてしまったり、申請しようと思ったら、期限が過ぎてしまっていたりすることもあるので気をつけよう。

「コロナ関連の給付金は、申請期限を延長しているケースがありますので、役所のホームページで最新情報をチェックしましょう。また、収入減で生活が苦しいときに行政が無利子で貸してくれる『緊急小口資金』や『総合支援資金』は、すでに借りている分についても返済期間が延長されています。返済困難な場合も含め、窓口で困っていることを相談してみましょう」(井戸さん・以下同)

そして、パート・アルバイトが、こうした「もらえるお金」の対象になるかどうかは、健康保険や厚生年金保険といった、いわゆる「社会保険」への加入がカギとなる。

たとえば、健康保険に加入していれば、病気やケガで仕事を休んだときに「傷病手当金」がもらえるし、厚生年金保険に入っていれば、障害認定を受けるともらえる「障害年金」の受給額が多くなる。

今年10月以降、これら健康保険と厚生年金保険の加入のハードルが下がるので、もう一度確認しておこう。

〈1〉1週間の所定労働時間が20時間以上ある。〈2〉雇用期間が2カ月を超えて見込まれる。〈3〉月額賃金が8.8万円(年収106万円)以上ある。〈4〉学生ではない。この4つを満たすと、社会保険に加入できる。たとえば、1日4時間、週5日スーパーでレジ打ちのアルバイトをしていたら、働く時間は週20時間を超えるので、加入の対象になる。

ただし、勤務先が「被保険者の総数が常時100人を超える事業所」でない場合は対象外になるので注意が必要。この要件は、’24年10月には「常時50人」になるが、個人経営のスーパーや飲食店で働いても社会保険には加入できないことがあるので覚えておきたい。

社会保険への加入によるメリットはほかにもある。

社会保険というと健康保険と厚生年金保険だけが対象だと思う人も多いのですが、雇用保険、労災保険もあります。この2つの保険は勤務先の業種や規模を問わず、週の労働時間が20時間以上、かつ31日以上引き続き雇用が見込まれ、さらに学生ではないことが加入の条件。雇用保険に加入していると、失業時に基本手当(失業給付)がもらえるほか、再就職に向けた職業訓練も無料で受けられます。また、労災保険には、仕事中にケガをしたり病気になったりしたときに治療費が無料になるといった、たくさんの『もらえるお金』があります」

パートの求人欄に、「社会保険完備」と書かれているのをよく目にするが、雇用保険や労災保険も含まれているか要チェックだ。

それでは次は具体的な「もらえるお金」を教えてもらおう!

■コロナ禍で“傷んだ生活”には緊急支援対策で対応しよう

長引くコロナの影響で、収入減やリストラに遭ったとき、市区町村の社会福祉協議会が無利子でお金を貸してくれる制度が「総合支援資金」と「緊急小口資金」。

総合支援資金」は、コロナ禍で仕事を失ったり、仕事が減った人が生活を立て直すまでの一定期間(原則3カ月以内)、生活費として月20万円以内(2人以上世帯の場合)を借りられるもので、休業したり、仕事が減った人向けの「緊急小口資金」でも20万円以内を(1回のみ)借りることができる。

「これらの貸し付けは通常、高齢者や住民税非課税世帯などの低所得者が対象となっていますが、コロナで収入が減ったり失業したりしたときは、収入の要件はなく無条件で借りられます。『緊急小口資金』も新型コロナの影響で減収した場合は、休業していなくても借りられるようになっています」

コロナによる収入減で家賃の支払いが厳しくなったら、家賃相当額が3カ月給付される「住居確保給付金」を申請しよう。

「賃貸住宅に住んでいる人が対象で、持ち家でローンを支払っている人は対象外です。コロナで生活がピンチになったら、市区町村にある社会福祉協議会、役所の福祉課にもらえる対象かどうかを含めて遠慮なく相談してみましょう」

新型コロナの影響で要件が緩和されているが、これらの申請期限は今のところ8月31日となっている。期限を過ぎると借りられなくなるので、役所のホームページで最新情報を確認しよう。

■納付の免除・猶予も「もらえるお金」の一部

また、コロナ禍で失業してしまった場合には、国民年金保険料の免除・納付猶予制度もある。

失業すると、勤務先で加入していた厚生年金保険から国民年金保険に切り替わるが、月1万6590円(’22年度)もする保険料を失業中に支払うのは大変。そんなときにこの制度を利用すると、保険料を支払わなくても年金の受給資格期間に反映されるのだ。

「コロナの影響で収入減になったときは、特例措置として簡易な手続きで利用できるようになっていますが、年金額の計算上は、免除期間の納付保険料は本来納める額の2分の1とみなされます。また、納付猶予になった期間については、将来受け取る年金額には反映されず、満額支給にはなりませんので覚えておきましょう」

収入が少ないときは公共料金の支払いも苦しいもの。電気やガス、水道など、公共料金の支払いが滞ると供給停止となってしまう恐れがあるが、これも事前に申請しておくことで支払いを猶予してもらえる可能性がある。ちなみに、東京都では水道料金は最長1年間、電気・ガス料金は1カ月先延ばしできる特例がある。

■生活全般にかかわる「もらえるお金」一覧

総合支援資金問合わせ先:市区町村の社会福祉協議会

収入減で生活が苦しいとき、無利子で貸付が受けられる。2人以上世帯で月20万円以内を原則3カ月以内。申請期限2022年8月31日まで。

緊急小口資金問合わせ先:市区町村の社会福祉協議会

収入減で生活が苦しいとき、無利子で貸付が受けられる。貸付額は20万円以内。申請期限2022年8月31日まで。

【生活困窮者自立支援金】問合わせ先:市区町村

緊急小口資金等の特例貸付を終了した世帯、利用できない世帯が利用できる。2人世帯8万円、単身世帯6万円、3人以上世帯10万円を3カ月支給。申請期限2022年8月31日まで。

【住居確保給付金問合わせ先:市区町村

収入減で住居を失う恐れがあるとき、市区町村が定める金額を上限に、原則3カ月(延長は2回まで最大9カ月)支給される。給付終了後、再度新型コロナの影響で収入源の場合、さらに3カ月再支給が可能。申請期限は2022年8月31日まで。

国民年金保険料の免除・納付猶予】問合わせ先:市区町村国民年金

国民年金保険料の納付が困難なときは免除の申請をすることで、加入していたとみなされる。ただし、満額支給にはならない。追納は可。

公共料金の支払い猶予等】問合わせ先:各契約事業者

新型コロナの影響で支払いが困難なとき、電気・ガス・水道料金の支払い期限の猶予が受けられる。措置を講じている事業者については地域ごとに要確認。

収入減の急場をしのぐには、契約している会社や自治体にどんな「特例」があるのか確認しよう!

PROFILE

井戸美枝

社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。最新刊の『「届け出」だけでもらえるお金・戻ってくるお金』(宝島社)をはじめ、監修、著書多数