就活も6月に入り、内定がない人はそろそろ焦り始める頃かもしれない。選考落ちの「お祈りメール」が重なってくると、「どこでもいいから雇って!」と頼み込みたくもなる。

「面接担当者に『もう御社しかないんです! なんでもやりますから!』とお願いして、ようやく内定をもらいました」

こう振り返るのは、大手証券会社に勤める男性Aさん(31)。新卒で入社した会社で、いまも営業社員として働き続けて9年目を迎える。離職率の高い業界であるだけに、会社にとってはこの採用は成功だったといえるだろう。

学生に「白紙」を求める企業には有効か

経営者側にも「なんでもやります!」戦法に好感を抱く人がいるようだ。広告代理店を運営するベンチャー企業社長(34)も、営業職の新卒・中途採用面接では、こだわりのないチャレンジ精神を重視すると話す。

「我々のような中小企業は、言ってみれば自分のコピーとなって動いてくれる社員が欲しいわけです。『なんでもやります』という人の方が変な癖がついていない分、飲み込みも早い。こだわりの強さは、マイナス評価になりかねませんよ」

こうした考え方は、大企業でも根強い。神戸大学大学院経営学研究科の伊達洋駆氏は、学生に自社のやり方に染まって欲しい企業は「大学と企業は"非連続"であって欲しい」と望み、学生に「白紙になること」を求めていると指摘する。

つまり、これまで身に付けてきた知識やスキル、経験をどれだけ示せるかという"連続性"をアピールする学生とのギャップは大きくなる。「自分はこれができます」というより「何でもやらせて」という学生が歓迎されるゆえんだ。

ただ、こうした意見に異論を唱える人もいる。デジタルメディア事業・ログミーCEOである川原崎晋裕氏は、「『なんでもやります!』という人は採用しないほうがいい」と主張し、そうした人は雇わないことに決めているという。

「なぜかというと、『なんでもやります! すべてを捧げます!』と言う人は、その会社に入ることがゴールになってしまうからです」
成長中のベンチャーは「やりたいこと」重視

川原崎氏は、入社することやその職業に就くことがゴールになると、そこで満足して成長が止まってしまう傾向にあると見ている。したがって採用にあたっては、入社した「その先を見ているかどうか」「その人自身が会社と一緒に成長し続けて」いけるかどうかを重視しているのだ。

日経ビジネスオンラインに掲載された「ぶっちゃけ人事トーク」でも、ベンチャー企業の採用担当者2人が「『何でもやります』という人は、あまりほしくない」という意見で一致している。

「本人の中に目的意識がない仕事をいくら頑張ってもらっても、芽が出ないように思うんです」(ネットプロテクションズ・秋山 瞬氏)
「やりたいことのイメージがない人は、ちょっと使いにくいなと思いますね」(Sansan・角川素久氏)

実際にこの2社を取材し、新卒社員にインタビューしたオバタカズユキ氏も、「(この会社の社員は)明るくて真面目なのだけど、我が強い。大企業だと弾かれちゃったり、行き詰ったりしそうな人が多めに感じました」と明かしている。

ただ、どのような人材が欲しいかどうかは、会社の規模や成長段階などによっても変わってくるものだ。一律に「なんでもやります!」という人材を歓迎する社長や人事担当者を、ほめそやしたり貶したりする必要もない。

一方、就活生としては、企業側がどんな学生を求めているのか、つまり「これができます」か「なんでもやります」なのかを見極める必要がありそうだ。

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