今夏にリヴァプールからドイツの絶対的王者・バイエルンに加入した30歳のFWサディオ・マネは、新天地で背番号「17」を背負う。果たしてセネガル代表のストライカーは、守備的プレーヤーの印象があるバイエルンの「17番」のイメージを変えることができるのだろうか。

 移籍金3200万ユーロ(約58億円)で加入したマネは、これまで背番号「10」を愛用してきた。過去に所属していたオーストリアザルツブルクでも途中から「10番」を託され、プレミアリーグ初挑戦となったサウサンプトンでも「10番」を着用。2016年に引き抜かれたリヴァプールでは、フィリペ・コウチーニョがエースナンバーを背負っていたため加入当初こそ「19番」に甘んじたが、2018-19シーズンから4年間も「10番」を背負ってチャンピオンズリーグ優勝やプレミアリーグ制覇に貢献した。セネガル代表でも長いこと「10番」を着用している。

 そのため、バイエルンでも「10番」が欲しかったはずだが、同クラブではレロイ・サネが「10番」を背負っているため空いていなかった。そこでマネは“仕方なく”他の番号を選択。「17番」を選んだ理由を聞かれた際にも「バイエルンで空いている番号の中から17を選んだ」と明かしている。

 実は、バイエルン背番号が固定化されてから、前線の選手が「17番」を着けるのは初めてのことになる。それでは“守備的”なイメージのあるバイエルンの「17番」の系譜を見てみよう。

[写真]=Getty Images

◆■ミケール・キュイザンス(MF/2021-22年)


 昨シーズン、バイエルンで「17番」を着けていたのは元U-20フランス代表のMFキュイザンス(22歳)だ。若手セントラルミッドフィルダーは、17歳で母国フランスを離れてボルシアMGに加入すると、2019年に移籍金1000万ユーロ(約15億円)でバイエルンに移籍。背番号「11」を託されるも、1年目はブンデスリーガで9試合の出場に留まり、2年目はローン移籍に出された。3年目となった2021-22シーズンは「17番」を着用したが、リーグ戦での出場はわずか1試合だけ。今年1月にイタリアヴェネツィアに移籍した。

◆■ジェローム・ボアテング(DF/2011-2021年)


 近年のバイエルンで「17番」と言えば、この選手だろう。ドイツ代表76キャップを誇る名センターバックは、2011年にマンチェスター・Cからバイエルンに加入すると、それまでハンブルガーSVやマンチェスター・Cでも着用していた「17番」に袖を通し、退団する2021年まで輝かしい実績を残した。

 バイエルンでは最終ラインの要として在籍10年間で通算362試合に出場。リーグ9連覇や2度のチャンピオンズリーグ制覇など合計25個のタイトル獲得に貢献し、2度もブンデスリーガのベストイレブンに選出された。2009年に初出場したドイツ代表でも華々しいキャリアを送り、76試合に出場して2014FIFAワールドカップブラジルでは頂点に上り詰めた。

 2014年W杯以降は、ドイツ代表でもお気に入りの「17番」を着けてプレーするようになり、ドイツの「17番」と言えば、近年はやはりボアテングの顔が思い浮かぶ。現在はフランスリヨンで「27番」を着けているボアテングだが、マネのバイエルンでの背番号が発表された後には「会えて良かった。サディオ、ミュンヘンでの活躍を祈っている。17番を大事にしてくれ!」とツイートしていた。

◆■マルク・ファン・ボメル(MF/2006-2011年)


 オランダの往年の名ミッドフィルダーもバイエルンでは「17番」を背負っていた。ファン・ボメルはPSVで活躍した後、バルセロナを経て2006年にバイエルンに加入。ミヒャエル・バラックやゼ・ロベルトが抜けたバイエルンの中盤に加入1年目から君臨すると、チームがブンデスリーガで4位に甘んじるなか、背番号「17」はいきなりクラブ年間最優秀選手に選ばれる活躍を見せた。

 2008年には、引退したGKオリヴァーカーンの後継者としてキャプテンを任されることに。100年以上の歴史を誇るバイエルンで、ドイツ人以外の選手がクラブのキャプテンを務めるのは史上初めてのことだった。そのファン・ボメルは、2011年1月にミランへ移籍するまでバイエルンで180試合以上に出場して2度のリーグ制覇に貢献した。現在は、ベルギーのアントワープで監督を務めている。

◆■トルステン・フィンク(MF/1997-2004年)


 2019年から1年ほどヴィッセル神戸を率いたことでも知られるフィンクも、現役時代はバイエルンで「17番」を着用した。1997年カールスルーエからバイエルンに加入した守備的ミッドフィルダーは、引退するまでバイエルンで230試合以上に出場し、4度のリーグ優勝と1度のチャンピオンズリーグ制覇に貢献した。

 引退後は、ドイツオーストリアで監督を務めたほか、前述通りJリーグでもチームを指揮。第99回の天皇杯では、決勝戦で鹿島アントラーズを退けて、ヴィッセル神戸にクラブ史上初のタイトルをもたらした。現在はUAEのアル・ナスルで監督を務めている。

◆■クリスティアン・ツィーゲ(DF、MF/1995-1997年


 ブンデスリーガでは1994-95シーズンまで背番号が固定されておらず、試合毎に変更となっていた。1995年に番号固定制が導入された後、バイエルンで「17番」を託されたのはドイツ代表の左ウィングバック、ツィーゲだった。1990年からクラブに在籍していたツィーゲは、バイエルンで2度のリーグ優勝と1度のUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)制覇に貢献した。

 その後、ミランでスクデットを獲得すると、1999年からはイングランドプレミアリーグに挑戦。ミドルズブラ、リヴァプールトッテナムで5シーズンに渡って活躍した。ちょうどマネがリヴァプールトロフィーをもたらしたように、ツィーゲも2000-01シーズンにリヴァプールの“カップ3冠(FAカップ、リーグカップ、UEFAカップ)”に貢献した。ちなみに、その時は背番号「3」を着用していた。

 さて、バイエルンの新戦力は「17番」を背負ってどんな活躍を見せてくれるのだろうか。新シーズンのマネに注目したい。

(記事/Footmedia)

バイエルンで「17番」を背負ってきた選手たち [写真]=Icon Sport,Getty Images