本部長マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

7月13日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「与党・自民党圧勝の“参議院選挙”と“経済政策”への影響」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆円安が加速している理由

浜崎:宗さま、今回は「与党・自民党圧勝の“参議院選挙”と“経済政策”への影響」についてお話しいただけるということですが。

やしろ:選挙後の株式市場は堅調に推移しているようですが、これはマーケットが参院選の与党圧勝をポジティブなものとして捉えているということなんでしょうか?

宗正:そう捉えていいと思いますね。今回の参議院選挙の与党の勝利、しかも大差をつけた勝利をマーケットはほぼ織り込んでいました。もっと言えば、その後の岸田政権長期化の可能性まで織り込んでいました。

ただ、そうは言っても、海外から見た政治の安定による安心感からでしょうね。選挙翌日の日経平均株価は、前週末の金曜日の終値より295円も高く引けました。

ただその後は、ちょうど今夜(7月13日)ですね、アメリカの6月の消費者物価指数の発表があります。結果次第では、アメリカ金利は更に上向くことになる。アメリカの株式市場は、この微妙なタイミングもあって、短期間で上がったり下がったりし始めた。これに連動する形で日本の株式市場も動揺しています。そういう意味では、通常の日本の株式市場の動きに既に戻ったと言えますね。

やしろ:ただ一方では、ますます進む円安ですが、何よりも物価が上がり続けています。円安が加速している理由には、いろいろあると思いますが……。

宗正:日本の金利は相変わらず低水準で横ばい状態、これが今後も続きそうだという見方です。その一方で、アメリカの金利は引き上げの可能性も高い。つまり円を売ってドルを買う動きですね。参院選の翌日の7月11日(月)に、日本円は1ドル137円台の前半をつけました。実に1998年9月以来、およそ24年ぶりの水準です。

この日、日銀の黒田総裁は「必要があれば躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と発言しました。ということは、海外から見ても「日本は金利を引き上げる気はまだまだないんだな」と映りますよね。

そして、その前の週に発表されたアメリカの6月の雇用統計。これが事前の予想を上回っていました。雇用情勢が良いということは景気が上向き、金利を引き上げる可能性はさらに高まるということですから、これがまた円安の動きにさらに拍車をかけました。

やしろ:金利の上がり方によっては、1ドル140円台という可能性もあるということですか?

宗正:為替市場は、弾みがつけば短期間で大きな幅で動きます。今はその状況がほぼ揃っています。その可能性もありますね。

◆岸田内閣に引き継がれる「アベノミクス

やしろ:そして「アベノミクス」ですが、当時の円高を是正するところからそもそも始まったと記憶していますが?

宗正:そうなんです。今も続く「金融緩和」は、アベノミクスの三本の矢の内の第一の矢「大胆な金融政策」の主な具体策です。

とにかく円高もデフレも進み続けた当時は、何とか円安にシフトさせなきゃいけないという状況でした。背景には、円安で日本の株価全体を上げたいという思惑もありました。輸出関連企業のウェイトが日本の株式市場は高いですから、まずは円安に動かそうと。

そして第二の矢は「機動的な財政政策」、第三の矢が「民間投資を喚起する成長戦略」。よくアベノミクスは、安倍政権下だけの政策だと思っている人が多いのですが、その後の菅政権、今の岸田政権にも、その路線は引き継がれています。

今の円安による物価高で、金融緩和によるダメージばかりが強調されがちですが、輸出関連企業をはじめとして、メリットを受けている企業も実はまだまだ多い。進む円安で、今年度も過去最高益の業績を見込んでいる企業が多いのも確かです。

◆岸田政権が最も意識すべきこととは?

やしろ:先ほどもお話に出ましたが、岸田政権が「アベノミクス」の路線を継承する上で、ここから先のポイントをお願いします。

宗正:来年の2023年4月には、今の黒田日銀総裁が任期満了を迎えます。その後の金融政策は新総裁に引き継がれますが、最有力候補と言われる2人は今の日銀執行部です。ということは、そう簡単に今の金融政策を大きく転換することは難しいですよね。

昨年まで執行部に入って今の政策を進めていたのに、「どうして新しい総裁に選ばれた途端に方向転換するんだ?」ってなりますよね。ということは、今の金利水準がしばらく続く可能性が高いと見るのが普通です。実はこういう時の大胆な人事政策も、安倍元総理が自ら手を下していたんですよね。

これからは、その役割を岸田総理が担うことになります。それからアベノミクスの第二の矢「機動的な財政」も、すぐには抑えられません。少子高齢化が進む日本で、財政支出を大幅に削減することは景気の悪化に直結しますからね。

残る第三の矢「成長戦略」については、安倍政権下でもそうでしたが、菅政権、岸田政権下でも道半ばと言わざるをえない状況です。第2次安倍政権が始まったのが、2012年12月、今から約10年前、そこからずっと続いています。

やしろ:そんなに前ですか!

宗正:第2次安倍政権発足当時の完全失業率は4.3%でしたが、今年の7月には2.6%にまで低下しました。完全失業率が低下したということは、改善したっていうことですね。同じ期間の有効求人倍率も0.83倍から1.24倍にまで上昇しました。

有効求人倍率というのは、1倍で“職を求めている人の数と求人件数がちょうど同じ”ということなので、ここ数年がコロナ禍であったことを踏まえると、かなりの改善度合いですよね。

では、何が問題なのかと言うと「日本の平均賃金が上がらない」ことに尽きます。ここを何とかしなければいけない。特に政治には、企業が賃金を上げやすい仕組みや制度を整えることが求められます。コロナ禍ウクライナ情勢の長期化ということもあって、不測の事態に備えて内部留保を厚くしておきたい経営者の心理も分かります

やしろ:なるほど! 岸田政権が意識すべきところは、他にもありますか?

宗正:平均賃金の水準を上げることに加えて、お金をより使う層に手厚く分配するということですね。最終的には個人消費が活性化しない限り、この国の景気は良くならないですから。

岸田政権は、衆参両院の圧倒的な議席数と、その気になれば今後3年間は国政選挙をしなくても済む時間の優位性を確保しました。アベノミクスの成長戦略の基本路線に次ぐ、次世代に向けた新たな成長戦略を構築して実現すること、これこそが岸田政権が今後最も意識すべきことだと思いますね。

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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ本部長マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「与党・自民党圧勝の“参議院選挙”と“経済政策”への影響」を解説