芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」がスタート! ただし、ここで扱うゴミたちは架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

★【捨てるもの第3回】石仮面ジョジョの奇妙な冒険
ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)に登場する、メキシコのアステカ遺跡で発掘された、いわくつきの仮面。ジョースター卿ロンドンの美術商から購入。血がつくと骨針が飛び出し、装着した人の脳に突き刺さる仕組み。だが死ぬことはなく、未知なるパワーが覚醒し吸血鬼となってしまう極めて危険な仮面。

これは単純に「石仮面」の素材から判断させてもらうと、石はゴミ収集車で回収できません。たまに漬物石とかがゴミとして出されていることがあるんですけど、「回収できません」ってシールを貼って、そのまま置いていくことになります。

一般的な「燃えないゴミ」や「粗大ゴミ」は、我々が回収したあとにゴミ処理場の巨大なローラーで細かく砕くんです。このローラーはかなり頑丈で、ガラスはもちろん自転車くらいなら粉々にしちゃうパワーがあるんですけど、石だとローラーの刃が砕けちゃう。だから回収できないんですね。小さいサイズの石なら袋に入れて出しちゃえ!って思うかもしれないですけど、それでゴミ処理場のローラーが壊れたら大損害。修理に使われるのは、結局我々の税金ですから。

ちなみに、お風呂とかで使う軽石もダメです、あとレンガガーデニング用に買ったものがいらなくなることもあると思いますが、同じ理由でダメなんです。

ガーデニングつながりで土を捨てたい場合があるかもしれませんが、土も回収できません。では、こういったものはどうしたらいいか? 専門の業者がいますので回収を頼みましょう。土なんかだと、引き取ってくれるホームセンターもあるみたいです。

話を「石仮面」に戻しましょう。これ、仮面に血がついたら「骨針」というものがシャキーンと出ちゃうんですよね? 

たまに大量の竹串が捨てられていることがあるんですが、ゴミ袋から串の先端が飛び出していて、それで怪我をすることもあります。先の尖ったものは、我々清掃員にとってはすごく危険です! この前、回収していて感心したのが、竹串をティッシュの箱に入れて出してくれた方がいたことです。優しい心遣いに感激しました。尖ったものが燃えないゴミの場合は、リサイクルができない容器(胡麻油の空きボトルとか)に入れて出してもらえると助かりますね。

ちなみにこの石仮面の場合のように、血が付着したものを捨てて大丈夫か迷われるかもしれないですが、気にしないで大丈夫です。そんなゴミを見つけると「何かあったのかな?」って恐ろしくなることはありますけど、きちんと分別されていれば普通に回収できます

この石仮面って古代から伝わる貴重な美術品だと思うんですが、たまに集積場に「すごい高価なんだろうな」って物が捨てられている時があるんです。「ディープ・パープル」の初版レコードとか。中古屋に売ったら結構なお金になる!と思うんですけど、僕ら清掃員が個人的に持ち帰ったのがバレたら、一発でクビです

清掃員でなくても、ゴミ処理券が貼られて捨ててあるなら、持って帰るのは違法です。誰かが持って帰って使ったほうが、ゴミが増えずに済むんですけど......。でも、出した人がゴミだといったら、ちゃんと回収しなきゃいけない。まだ食べられそうなメロンとかスイカとか高級ゼリーとか、お中元が箱のままの状態で捨てられていたりするのを見ると、心が痛みますね。

結論ですが、針はともかく石の部分だけはどうにもならないので、専門業者に回収を依頼しましょう

そして、石仮面を処分しようとしているそこのあなたにひとこと言いたい! 美術品でもなんでも、捨てるようなものは初めから手に入れないこと! 興味本位で買ったのかもしれないですけど、どうしても仮面が欲しいなら木か鉄で作られた仮面にしてください!

木なら燃えるゴミで処分できますし、鉄なら燃えないゴミで出してもちゃんとリサイクルができます。買う前にリサイクルできる素材が確認する、それが今流行りのSDGsですよ! って、誰に言ってるんですかね(笑)


滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

イラスト/北村ヂン

JOJOの奇妙な冒険「石仮面」の捨て方をレクチャー