オミクロン変異株による「第7波」がこれまで経験したことのない感染爆発の様相を呈してきている。そんな中、目下の主流株とされる「BA.5」と同じく、「BA.2」から派生したと考えられるオミクロン株亜種の「BA.2.75」、通称「ケンタウロス」と呼ばれる新変異株の存在が、早くも新たな脅威として浮上してきている。

 このケンタウロス株がインドで初確認されたのは、今年5月。その後、アメリカ、オーストラリアカナダドイツイギリス、韓国などでの確認が相次ぐ中、7月19日には日本(大阪府)でも2人の感染者が特定されるに至っている。

 ケンタウロスは、ギリシャ神話に登場する半人半獣の種族。これまでのオミクロン変異株とは明らかに異質であるという意味を込めて、ケンタウロス株と呼ばれている。

 中でも国内外の少なからぬ専門家らが重大な関心を寄せているのが、ケンタウロス株の持つ強力な感染力である。ウイルス感染症に詳しい専門家も、

「アメリカのアーカンソー州立大学の研究によれば、ケンタウロス株の感染力は実に、BA.5株の3.24倍にも達する、とされているのです」

 こう指摘した上で、次のように警鐘を鳴らすのだ。

「この数字を実効再生産数(1人の感染者が何人の感染者を発生させるかの指標)に置き換えれば、目前に迫りつつある新たな危機の実相が、一段と鮮明に浮かび上がってきます。例えば、最初の武漢株の実効再生産数は3.3でした。対して、現在のBA.5株のそれは、武漢株の5倍強にあたる18.6と推定されています。そして問題のケンタウロス株の感染力はBA.5株の3.24倍とされているわけですから、その実効再生産数は実に60.26という途方もない水準に達してしまう計算になるのです。1人の感染者から60人を超える感染者が発生していく状況は、まさに今までとは次元の違う脅威と言っていいでしょう」

 今のところ、ケンタウロス株の毒性については不明とされているが、第7波の趨勢も含めて、新変異株の動向には要注意である。

(森省歩)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。

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