シンガポールに本部を置く調査会社カナリスがこのほど公表した最新リポートによると、2022年4~6月の世界スマートフォン出荷台数は前年同期比9%減少した。

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iPhoneの世界シェア3ポイント増の17%

 地政学的不確実性や経済状況の悪化などで、メーカー各社はサプライチェーン(供給網)と物流の停滞や、需要低迷といった問題に直面している。だが、米アップルのスマホ「iPhone」は引き続き好調だという。

 22年4~6月のアップルの市場シェアは17%で、1年前の14%から3ポイント上昇した。カナリスによると昨秋に発売した「iPhone 13」への需要が依然強く、アップルは世界市場で2位を維持した。

 同四半期の出荷台数が最も多かったのは韓国サムスン電子で、そのシェアは1年前から3ポイント上昇し21%となった。だが、サムスンの強みは主にiPhone 13よりも安価な中低価格帯「Aシリーズ」が好調だったことによるものだ、とカナリスは指摘する。

 アップルは先の決算発表で、自社製品に対する需要は依然高く、むしろ問題は供給制約だと述べていた。同社のルカ・マエストCFO(最高財務責任者)はこの時、「半導体などの供給制約によって22年4~6月期に最大80億ドル(約1兆1100億円)の売り上げ機会を逃す可能性がある」と説明した。

 米労働省が7月13日に発表した同年6月の消費者物価指数CPI)は前年同月と比べて9.1%上昇した。5月の8.6%から拡大し、1981年11月(9.6%)以来、およそ40年半ぶりの高い伸びとなった。こうした中、高価格端末であるiPhoneの販売が落ち込む可能性があると指摘されている。

インフレ懸念が個人消費を抑制

 これに先立ち米調査会社のIDCが公表していた22年1~3月期の世界スマホ出荷台数は3億1410万台で、前年同期から8.9%減少した。

 スマホ世界出荷台数の前年割れはこの時点で3四半期連続。IDCもその要因として、サプライチェーンや物流の停滞といった問題を挙げた。また、IDCのナビラ・ポーパル調査ディレクターは「インフレと経済の不安定性に対する深刻な懸念が個人消費を抑制している」とし、とりわけ中国で消費者心理が悪化している、と指摘した。

 今回のカナリスのリポートを見ると、22年4~6月における世界出荷台数の3位以降は、中国・小米(シャオミ)、中国OPPOオッポ)、中国vivo(ビボ)の順。3社の出荷台数はいずれも2桁減少し、依然中国市場で苦戦しているという。小米の世界シェアは14%で、1年前から3ポイント低下。OPPOvivoのシェアはそれぞれ10%と9%で、いずれも1ポイント低下した。

中国スマホ市場回復か、6月出荷9.1%増

 一方、中国政府系シンクタンク「中国情報通信研究院(CAICT)」によると、22年6月の中国スマホ出荷台数は前年同月比9.1%増の2750万台だった。前月からは約33%増加している。

 前年同月比で増加となるのは21年12月以降初めて。上海などで実施されたロックダウン都市封鎖)の影響で同国スマホ市場は低迷していたが、ここに来て回復の兆しが見え始めたとロイター通信は報じている。

 (参考・関連記事)「インフレがアップルの業績に及ぼす影響 | JDIR

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中国 北京のAppleStore(写真:ロイター/アフロ)