あなたの周りには、意見がコロコロ変わる人いませんか。コロコロ変わる人を相手にする側は、その意見に振り回されて疲れ果ててしまいます。どう対処していけばいいのでしょうか。産業医の井上智介氏が著書『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。
言った言わないを防ぐためにメールに残す
■こんな時どうしたらいい? シーン別対処法
▶言っていることがコロコロ変わる
営業職の人などは、こうした取引先に振り回されるというシチュエーションに直面することも多いのではないでしょうか。
この間ほしいと言っていた資料を作って持っていったのに見向きもせず、今度は全く違うことを言いだす……。
そんな取引先には辟易してしまいますね。
こうした相手には、基本的には「責任転嫁してくる人」と同じように対応するといいでしょう。
相手が顧客である以上、「言った」「言っていない」という話になればあなたが不利になるため、きちんとメールに残しておくことが大切です。
自分のためのメモとして残しているだけでは、周囲を味方につける材料としては不十分なので、アポの後にお礼メールと称して依頼内容を確認したり、途中経過の報告で相手にメールを送っておきましょう。
その時点で、「そんなこと言っていない」と返信がきたら、もう一度確認してストップすればいいですし、特に何も返事がないなら進めてもいいということですから安心ですね。
電話で話した内容でも、改めてメールで送っておくことで、内容に相違がないかどうかの確認もできます。
このような対策を打ってもまだ意見をコロコロ変える取引先には、こちらもジャブを打って対抗しましょう。
「この間このようにおっしゃっていたかと思いますが、方針が変わったということで間違いありませんか」
など、はっきり確認することで「何を言っても黙っている人ではない」ことをアピールするのです。
また、できれば1人で対応しないことも大事です。
事前に上司やチームに状況を共有しておき、担当者と1対1ではなく、メールを送る時には双方の上司をCCに入れるなどで巻き込んで、複数で情報を共有しておくようにすれば、大きな問題は防げます。
うやむやにすると毎回同じことをされ、あなた個人だけではなく会社全体の損失につながることもあります。
勇気を持って、具体的に行動してみましょう。
「仕事と無関係の指摘」に対処する2つの方法
▶仕事とは無関係のどうでもいい指摘が多い
1度や2度ならまだしも、何度も仕事と関係ないことを言われたら腹が立ちますよね。
いくら指摘された部分を改善しても、次から次へと指摘される部分が出てくる場合は、おそらくそのクライアントはあなたの仕事ぶりに不満があるのではなく、あなた自身をよく思っていなかったり、サービス自体、もしくは会社全体に不満があるのかもしれません。
指摘されていること自体は、一理あることだったとしても、全ての要望には対応できませんよね。
こんな人に対して、私が提案する対処法は2つです。
1つは、「ありがとうございます」と言って、適当に相手に合わせる方法。
気持ちは全然込もっていなくてOKです。受け流すということですね。
そしてもう1つは、単刀直入に聞いてみる方法です。
相手から不満をぶつけられたら、「私(もしくは私たちの会社)のことをあまりよく思っていらっしゃらないのでしょうか?」と質問してみましょう。
相手がびっくりして聞き返してきたら、このように伝えてみてください。
「ご指摘は大変有り難いのですが、本業やサービス内容から離れたご指摘が多く、私たちのことを根本的によく思っておられるのかと思いまして……」
こうしたタイプの人たちは、ネガティブな発言を繰り返す人と同じように、自分の言動が周りの雰囲気を壊していることに気づいていないケースがほとんどです。
はっきり意志を伝えなければ、延々と小言を聞かされ続けることになります。
「ご指摘は大変有り難いのですが、業務と直接的にかかわりがないことについては、対応いたしかねます」
など、ハッキリこちらのスタンスを伝えましょう。
厳しいようですが、こうした人たちにはしっかり言葉で伝えなければ通じません。嫌そうな態度くらいでは気づかないのです。
不快感を与えない断り方の3ステップ
▶どうでもいいことにこだわる
仕事についての要望ならいざ知らず、本筋とは無関係などうでもいいことにこだわられるのは避けたいですよね。
1つひとつの要望は大したことがなかったとしても、積み重なると大きな時間や手間がかかることになります。
この場合の目標は、「相手の要望を断る」ことですが、その際に気を付けていただきたいのは、杓子定規に断らないということです。
「会社の規定でできません」
と、言い切ってしまうのではなく、まずは相手に共感する姿勢を見せましょう。
「相手に不快感を与えない断り方」は、テンプレートのようなものなので、どんなシーンでも応用可能です。
この3ステップをしっかり頭に入れて対応してみてください。
①感謝する ②理由をつけて断る ③「次こそは」を匂わせる
「会社の規定で」という理由は正論ですが、言われたほうは、頭では相手の言い分が正しいと分かっていても、自分が無下に扱われたように感じてしまいがちです。
たとえば、オンラインMTGや電話で済む要件を、どうしても対面で話したいという取引先には、彼らなりの理由があるはずです。まずはそれを聞いて、
「おっしゃる通りです。対面を希望していただきありがとうございます。お気持ちは分かりました」
と、共感を見せたうえで、
「ただ、大変申し訳ございませんが、今このようなご時世なので……また落ちついた時にはよろしくお願いします」
と言えば、同じ断るにしても、かなりマイルドになります。
マズローの欲求5段階説でも触れたように、人間の5つの欲求のうちのどれを重視するかは、人それぞれ違います。
上司が挨拶を返してくれないということが、精神的にまいってしまうきっかけになることがあるように、あなたにとっては些細に思えることでも、それが原因で人間関係がギクシャクしてしまうことはよくあることです。
そのことを頭の片隅に置いて、相手を尊重しながら良好な関係を保っていきましょう。
井上 智介 産業医 精神科医 健診医
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