余暇を意味する「バカンス」はイタリア語で「Vacanza(ヴァカンツァ)」。語源はラテン語で「からっぽ」の意味だそうです。仕事を忘れ、とにかく何もしないということを実践するイタリアのヴァカンツァ・シーズンがいよいよ本番を迎える時期がやってきました。今月のニュースレターでは、そんなイタリアでこの時期催されるイベントや、見どころについてご紹介します。
1.マルケ州内の珠玉の街々で開催される夏のイベント各種
Beautiful Cities in Marche and their Summer Events
イタリア中東部、アドリア海に面するマルケ州は、イタリア・ルネサンス時に花開いた芸術文化遺産や、海と山の幸に恵まれた豊かな食文化など、見どころ満載の州です。今回は州内の魅惑的な街で開催される夏のイベントと、それぞれの街のみどころをご紹介します。
- ウルビーノ Urbino
そんな古都、ウルビーノでは毎年夏の時期、7月には古代音楽祭(Festival di musica antica)、8月は名君の公爵を祝うお祭りフェスタ・デル・ドゥーカ(Festa del Duca)が開催されます。16世紀当時の衣装を纏った人々が行列して街中を練り歩き、音楽コンサートや美術展示会なども同時開催、そして9月は凧祭り(Festa dell’Aquilone)と、毎月魅力的なイベントが開催されます。
街の一番のみどころといえるのが、ウルビーノ公国の君主に即位したフェデリコ・ダ・モンテフェルトロ公が1444年に建設を命じたドゥカーレ宮殿。外観の美しさや保存状態の良さだけでなく、細部に至るまで美しい装飾が施されている内観も見逃せない観光スポットです。ドゥカーレ宮殿は国立マルケ美術館としても運営されていて、ウルビーノ出身の巨匠ラファエロの作品「黙っている女」をはじめ、ルネッサンス絵画の輝かしいコレクションが保管されています。
- マチェラータMacerata
マチェラータには、ルネッサンスおよびバロック時代の建造物をはじめ、価値あるモニュメント、教会、宮殿が数多く残っています。後にパオロ三世となるアレッサンドロ・ファルネーゼ教皇特使の命により16世紀初頭、建築家カッシアーノ・ダ・ファブリアーノとマッテオ・サバティーニにより建てられた、リベルタ広場の「メルカンティの開廊」をはじめ、1774年に貴族のための劇場として建造されたラウロ・ロッシ劇場(ラウロ・ロッシは、マチェラータ出身の音楽家)や、ベルタ広場の時計の塔はその一例にすぎません。高さ65メートルを誇るベルタ広場の時計の塔は、当時マチェラータが誇っていた権力と富の象徴とされ、1663年に建てられました。
訪れる価値のある博物館も揃っており、年代物自動車博物館市民博物館、市立美術館、20世紀のイタリア美術のコレクションが収蔵されている、リッチ宮殿は特にお勧めのスポットです。- アスコリ・ピチェーノAscoli Piceno
そんなアスコリ・ピチェーノでは、毎年8月の第1日曜日、中世騎士時代のシーンを再現する、文化イベント、ジオストラ・デラ・クインターナが開催されています。メインイベントは中世時代の自治区分である「セスティエーレ」毎に競う馬上競技レースで、当時の騎士のコスチュームを纏った走者が、八の字型に設定されたコースを馬に乗って疾走しながら、「クインターナ」と呼ばれる的の人形を槍いて回転させると獲得できるポイントで勝敗を争うというものです。レースの前には、15世紀当時の貴族女性や騎士の艶やかな衣装に身を包んだ約1,200人が、旧市街の街を練り歩く歴史的なパレードも開催されます。
街の中心部に残る歴史的建造物ほぼ全て、大理石の一種であるトラバーチンで建てられており、その芸術的かつ建築的な価値は高く評価されています。また、街の中には当時の大鐘楼が数多く残っており、「百の塔の街」と評されることもしばしばです。
観光の拠点となるのは2つの広場で、中心部にあるのがルネッサンス様式のポポロ広場。13世紀に建造されたカピターニ宮殿やサンフランチェスコ教会などの歴史的な建造物が集まっています。もうひとつがカテドラーレと市役所に面する、街で最も歴史深い広場、アッリンゴ広場となります。カテドラーレの地下礼拝堂では、11世紀中ごろに作成されたとされる美しいモザイク画を鑑賞いただけます。
- フェルモFermo
そんなフェルモで年間を通じてもっとも重要なイベントが、毎年8月15日に開催される、「聖マリア・アスンタの饗宴」というイベントです。午前中は住民が聖ミサの祭典に出席し、午後は当時の貴族や騎士の衣装を纏った人々によるパレード、さらには競馬祭「パリオ」も開催されます。夜には街中に大きなテーブルが用意され、賑やかな食事会が催されます。
フェルモにも数多くの歴史深い観光スポットがあり、マルケ州内で18世紀に建造された絢爛豪華なアクイラ劇場、1227年に作られたとされるロマネスク・ゴシック様式のファサードが見事に残されているフェルモ大聖堂、ジュリアーノ・ダ・リミニによるフレスコ画が残っているサン・フランチェスコ教会などは見逃せません。
マルケ州の観光ウェブサイト(英語)
https://www.turismo.marche.it/en-us/
2.ヴァッレ・ダオスタ州で夏の「ワーケーションのすすめ」
Smart-Working in Valle d’Aosta
フランスおよびスイスと国境を接する、北西イタリアにあるヴァッレ・ダオスタ州ではこのたび、「スマートワーク(情報通信(IT)技術を活用した、場所や時間に縛られない柔軟な働き方)」を実践するのに適した旅行地としてのプロモーションを開始しました。風光明媚な自然に囲まれながら、高速インターネット接続環境も整っている同州では、「スマートワーク」に相応しい滞在地などをリストアップしたウェブサイトを開設し、世界中からの「デジタルノマド(IT技術を活用し国内外を旅しながら働く人々)」や「スマートワーカー」の集客を図ります。このウェブサイトからは直接滞在先の予約することも出来るようになっています。
モンテ・ビアンコ(モンブラン)、モンテ・チェルヴィーノ(マッターホルン)、モンテ・ローザ、グラン・パラディーゾなど、ヨーロッパが誇る4千メートル級の名峰に囲まれるヴァッレ・ダオスタ州は、イタリア国内で最も小さな州です。クールマイユールやチェルヴィニアなどの世界的に有名なスキー場も揃っており、冬はスキーに、夏は登山やハイキングにと、日本をはじめ世界中から毎年数多くの観光客が訪れます。州の歴史は古代ローマ帝国時代に遡り、初代皇帝アウグストゥスによって作られた州都アオスタには、現在でも数多くのローマ遺跡が残されています。
ウェブサイトに掲載されている滞在先の中には近代的なホテルのみならず、緑に囲まれたコテージのような宿泊施設などもあり、仕事を効率的にこなしながら、美しい自然景観や地元の住民との交流を楽しんでいただけます。
「スマートワーク」を実践いただくのにユニークなロケーションとしては、山岳リゾート拠点のクールマユール最新式回転ロープウェイ「スカイウェイ・モンテ・ビアンコ」ケーブルカーの駅もおすすめです。特に、中間駅である「パヴィヨン(Pavillon、標高2,173メートル)」と頂上駅の「プンタ・エルブロンネル(Punta Helbronner、標高3,466メートル)」は、人間と自然の関係性を高めるように設計されていて、モンブランの圧巻の景観を慈しみながら仕事や勉強をするためのスペースを、事前に予約することも可能です。
ヴァッレ・ダオスタ州「スマートワーク」のウェブサイト(英語、イタリア語、フランス語表記): https://bookingvalledaosta.it/smartworking/
3.スルモーナの馬上競技レース「ジオストラ・カヴァッレレスカ」が2年ぶりに開催
The “Giostra Cavalleresca” of Sulmona
イタリア中部に位置するアブルッツォ州にある町、スルモーナでは毎年7月から8月にかけ、中世ヨーロッパの騎士物語の1シーンを再現したような伝統的なイベント、ジオストラ・カヴァッレレスカが開催されています。新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大で、2020年から開催が見送られてきましたが、本年は2年ぶりの開催が決定し、イベントの中核をなすパレードと馬上競技レースが7月30日(土)と31日(日)に開催されます。
レースの前には、盛期ルネッサンス時代(1450年~1520年)の貴族や軍人の衣装に身を包んだ約700名が街中を練り歩く壮麗なパレートが開催されます。色鮮やかな旗を運ぶ人、ドラムや中世の管楽器「キアリン」の奏者などがパレードに彩りを加え、華やかな中世時代にタイムスリップしたような光景が繰り広げられます。イベント両日ともに、パレードは午後4時から午後5時半まで、レースは午後5時半から午後8時まで開催される予定です。
また、ジオストラ・カヴァッレレスカの関連イベントは7月上旬からスタートしており、美術展など様々な文化イベントが開催されています。ユニークなところでは8月5日マナレスカ地区にて、開催される中世の雰囲気たっぷりの晩餐会「パナルダ」。スパゲッティーなどを使った郷土料理や、地元の産物からなる伝統料理の晩餐が準備されるほか、アルベリ・ソノーリ楽団の演奏、ストリート・アーティストやミュージシャン、旗手によるパフォーマンスなどが街の広場で繰り広げられます。
スルモーナの教会や歴史的モニュメントは、何世紀にも渡り北イタリア地方の建築様式の影響を受けており、同じく夏の時期に開催される馬上競技レース(パリオ)で有名なことから、「アブルッツォ州のシエナ」(シエナはトスカーナ州)と表現されることもあります。中世の面影を残す街並みや建造物が印象的なスルモーナには、紀元前1~2世紀に作られたとされる「アリアンナの家」や、紀元前4世紀に建造された「エルコール・キュリーノの聖域」など、考古学的遺跡も数多く残っています。
また、スルモーナは、イタリアの結婚式や卒業式などお祝いの席で配られるアーモンドを砂糖でコーティングしたお菓子、「コンフェッティ」でも大変有名で、街のいたるところに「コンフェッティ」専門店が軒を並べるほか、プチ・ミュージアムもあり、イタリア中から結婚前の多くのカップルも訪れます。
ジオストラ・カヴァッレレスカの公式ウェブサイト(イタリア語表記): https://www.giostrasulmona.it
配信元企業:イタリア政府観光局
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